騎士団長はスキル《ストーカー》を極めたい！

閑話 ９

その頃、神殿は…

「ラフーーッ！？ちょ、ラフ。どこ行ったー！？」

神殿から突如として、アリスティリアと、ラフィンの姿が消えてしまい、カフィルの絶叫が響き渡った。

「…リア？」

エヴァンは茫然となりつつも、胸を押えた。

「おい、エヴァン！アリスに何があったんだよ！」

ラスティンが親族席から駆け寄ってきた。

「分からない。いきなり光が降ってきたと思ったら突然…」

エヴァンは恐る恐る周りを見渡した。

「先程のは神界の光じゃの」

老人姿の神獣が、ポツリと口にした。

「まさか《神託オラクル》を得たのか？」

聖王の言葉に注目が集まる。

「《神託オラクル》が発動すると、金色の光に包まれると聞いたことがある…。だが、二人同時で得たばかりか姿が消えるなど…」

「銀亀ぎんきよ、お主なら分かるのではないかえ？」

白龍の言葉に、銀亀と呼ばれた老人は白いヒゲを撫で始めた。

「ふむ。大事な話なのやもしれん…。心配せずともあちらの用が済めば戻されるじゃろ。無事を信じて待つがよい」

「ああっ？待つだけなんざ退屈だろうがっ！おう、白いの。お前、ライリーナんとこのに、付与してやがったな？」

「お主は相も変わらず喧しいのぉ、黒獅子。妾の鱗が余っておった故、使っただけじゃ…」

「ふん。おう、坊主！こいつが付与してねえのはまだ残ってるか？」

「は？はい。まだ７枚ほどありますが…」

黒獅子に声をかけられ、エヴァンは驚きながらも答えた。

「なんじゃ、まだそんなにあったのかえ？ならば、一人２枚でどうじゃ？公平であろう？」

白龍の言葉に、他の三人が集まってくる。

「あたくしもそれでよい」

「ふむ。儂も良いのかの？」

「おう、魔王！久しぶりじゃねえかっ！ちょうどいいや。てめえんとこのチビの祝いだ！さっさと案内しやがれ！」

「黒獅子殿は変わらんなぁ……」

バシンとバスティンの背中を叩き、神獣達はアリスティリアの残りのドレスへ付与に向かう。

「……ちょっと聖王…。今の方々、全員が幻とか伝説とか言われてる面々じゃ…」

「…言うな。考えたら負けだ…」

カフィルが聖王に近寄り、二人でコソコソと話す。

「…ねえ、兄上。これ、アリスが帰ってきたら、泣くんじゃないですかね？」

「そうだね。ラス……。確実にアリスは泣くだろうね。国宝級ドレスが８枚になっちゃうから…」

エベリウム兄弟は、最愛の妹が再びドレスの着用を拒むであろう姿を思い浮かべ、頭を抱えるのであったーーーー。