62 / 154
第八章 波乱ばかりの婚姻式
兄妹団欒
しおりを挟む
「……くっ。気に入らないけど、認めざるを得ない…」
ラスティンは拳を握りしめ、打ちひしがれていた。
「…これは、うん。文句の付けようがない見事さだね。アリスの良さが引き立つというか…。アリスを知り尽くした上でのデザインだね…」
カインベルは苦笑しながら、首を巡らせた。
室内には8着のドレスが並べられていた。
「…この一部屋に国家予算数年分のドレス………」
それらを身に纏わねばならぬアリスティリアと言えば、虚ろな目でブツブツ呟いている。
「…お嬢様、戻ってきてください。怖くないですよぉ…」
アリスティリア付きの侍女であるステリナは、隣で何とか正気に戻そうと声をかけている。
「お嬢様達へのドレスのお披露目は済みましたから。こちらのお品はブランディアと侯爵家にそれぞれ運ばれますからねー」
「それって、2着はブランディアに運ぶけど、残り6着は侯爵家ってことよね?」
涙目でステリナを見るアリスティリアに、彼女はにっこりと笑った。
「そうですよぉ。別邸に運び込まれますから、盗難の心配はないですよ。あちらの別邸、大神殿よりも侵入者対策されてますから♪」
「詳しいんだな、ステリナ」
ラスティンの言葉にステリナが頭を下げる。
「侯爵家は、両親が勤めておりますので♪」
「「「は?」」」
三人の視線がステリナに集まる。
「侯爵家の若様とは、幼馴染になります。兄は若様の側におりますわ」
「待て待て待て……。それって、カルステッド?カルステッドじゃないよね?」
ラスティンの言葉にステリナは、静かに微笑んだ。
「うわぁ…、カルステッドの妹なんだ…」
カインベルの視線が遠くを見る。
「?カルステッド様の妹だと、何かありますの?」
首を傾げるアリスティリアに、兄達の視線が向いた。
「アリス。『護衛メイド』に二つ名持ちっているよね?」
ラスティンの言葉にアリスティリアが頷く。
「カルステッドの妹は、二つ名持ちの『護衛メイド』って、聞いたことがあるんだよ…」
カインベルの言葉に、アリスティリアは目を瞬かせた。
「……ちなみに二つ名は?」
「「……《鮮血》……」」
苦虫を噛み潰したような顔で告げる兄達からステリナに顔を向ける。
「私の二つ名なんて、大したことないんですよ?母なんて《閃光》ですし、相方は《赤爪》です。『護衛メイド』の上位でない私なんてまだまだ…」
謙遜するステリナに、アリスティリアの顔色は悪い。
「「アリス?」」
「こ、侯爵家の『護衛メイド』って、ラフィンさんと、フェリテさんじゃないですかーっ!!わたし、そんな伝説級の先輩方にあんな……」
疲労困憊の乱れた姿で湯浴みから、着替えからと手伝ってもらったことを思い出す。
「……部屋で休みます……」
「畏まりました。ドレスは運ぶように手配いたしますね♪」
フラフラと部屋を出ていくアリスティリアに、明るく声をかけるステリナ。その姿を兄達はひたすら無言で見守っていた。
そして、数日後。
婚姻式の為に、ブランディアへ向かおうとしていた伯爵家に、とんでもない報せが届いたのであったーーーー。
ラスティンは拳を握りしめ、打ちひしがれていた。
「…これは、うん。文句の付けようがない見事さだね。アリスの良さが引き立つというか…。アリスを知り尽くした上でのデザインだね…」
カインベルは苦笑しながら、首を巡らせた。
室内には8着のドレスが並べられていた。
「…この一部屋に国家予算数年分のドレス………」
それらを身に纏わねばならぬアリスティリアと言えば、虚ろな目でブツブツ呟いている。
「…お嬢様、戻ってきてください。怖くないですよぉ…」
アリスティリア付きの侍女であるステリナは、隣で何とか正気に戻そうと声をかけている。
「お嬢様達へのドレスのお披露目は済みましたから。こちらのお品はブランディアと侯爵家にそれぞれ運ばれますからねー」
「それって、2着はブランディアに運ぶけど、残り6着は侯爵家ってことよね?」
涙目でステリナを見るアリスティリアに、彼女はにっこりと笑った。
「そうですよぉ。別邸に運び込まれますから、盗難の心配はないですよ。あちらの別邸、大神殿よりも侵入者対策されてますから♪」
「詳しいんだな、ステリナ」
ラスティンの言葉にステリナが頭を下げる。
「侯爵家は、両親が勤めておりますので♪」
「「「は?」」」
三人の視線がステリナに集まる。
「侯爵家の若様とは、幼馴染になります。兄は若様の側におりますわ」
「待て待て待て……。それって、カルステッド?カルステッドじゃないよね?」
ラスティンの言葉にステリナは、静かに微笑んだ。
「うわぁ…、カルステッドの妹なんだ…」
カインベルの視線が遠くを見る。
「?カルステッド様の妹だと、何かありますの?」
首を傾げるアリスティリアに、兄達の視線が向いた。
「アリス。『護衛メイド』に二つ名持ちっているよね?」
ラスティンの言葉にアリスティリアが頷く。
「カルステッドの妹は、二つ名持ちの『護衛メイド』って、聞いたことがあるんだよ…」
カインベルの言葉に、アリスティリアは目を瞬かせた。
「……ちなみに二つ名は?」
「「……《鮮血》……」」
苦虫を噛み潰したような顔で告げる兄達からステリナに顔を向ける。
「私の二つ名なんて、大したことないんですよ?母なんて《閃光》ですし、相方は《赤爪》です。『護衛メイド』の上位でない私なんてまだまだ…」
謙遜するステリナに、アリスティリアの顔色は悪い。
「「アリス?」」
「こ、侯爵家の『護衛メイド』って、ラフィンさんと、フェリテさんじゃないですかーっ!!わたし、そんな伝説級の先輩方にあんな……」
疲労困憊の乱れた姿で湯浴みから、着替えからと手伝ってもらったことを思い出す。
「……部屋で休みます……」
「畏まりました。ドレスは運ぶように手配いたしますね♪」
フラフラと部屋を出ていくアリスティリアに、明るく声をかけるステリナ。その姿を兄達はひたすら無言で見守っていた。
そして、数日後。
婚姻式の為に、ブランディアへ向かおうとしていた伯爵家に、とんでもない報せが届いたのであったーーーー。
0
お気に入りに追加
128
あなたにおすすめの小説
【R18】幼馴染な陛下は、わたくしのおっぱいお好きですか?💕
月極まろん
恋愛
幼なじみの陛下に告白したら、両思いだと分かったので、甘々な毎日になりました。
でも陛下、本当にわたくしに御不満はございませんか?
王女、騎士と結婚させられイかされまくる
ぺこ
恋愛
髪の色と出自から差別されてきた騎士さまにベタ惚れされて愛されまくる王女のお話。
性描写激しめですが、甘々の溺愛です。
※原文(♡乱舞淫語まみれバージョン)はpixivの方で見られます。
悪役令嬢は王太子の妻~毎日溺愛と狂愛の狭間で~
一ノ瀬 彩音
恋愛
悪役令嬢は王太子の妻になると毎日溺愛と狂愛を捧げられ、
快楽漬けの日々を過ごすことになる!
そしてその快感が忘れられなくなった彼女は自ら夫を求めるようになり……!?
※この物語はフィクションです。
R18作品ですので性描写など苦手なお方や未成年のお方はご遠慮下さい。
【完結】お義父様と義弟の溺愛が凄すぎる件
百合蝶
恋愛
お母様の再婚でロバーニ・サクチュアリ伯爵の義娘になったアリサ(8歳)。
そこには2歳年下のアレク(6歳)がいた。
いつもツンツンしていて、愛想が悪いが(実話・・・アリサをーーー。)
それに引き替え、ロバーニ義父様はとても、いや異常にアリサに構いたがる!
いいんだけど触りすぎ。
お母様も呆れからの憎しみも・・・
溺愛義父様とツンツンアレクに愛されるアリサ。
デビュタントからアリサを気になる、アイザック殿下が現れーーーーー。
アリサはの気持ちは・・・。
【R18】助けてもらった虎獣人にマーキングされちゃう話
象の居る
恋愛
異世界転移したとたん、魔獣に狙われたユキを助けてくれたムキムキ虎獣人のアラン。襲われた恐怖でアランに縋り、家においてもらったあともズルズル関係している。このまま一緒にいたいけどアランはどう思ってる? セフレなのか悩みつつも関係が壊れるのが怖くて聞けない。飽きられたときのために一人暮らしの住宅事情を調べてたらアランの様子がおかしくなって……。
ベッドの上ではちょっと意地悪なのに肝心なとこはヘタレな虎獣人と、普段はハッキリ言うのに怖がりな人間がお互いの気持ちを確かめ合って結ばれる話です。
ムーンライトノベルズさんにも掲載しています。
5人の旦那様と365日の蜜日【完結】
Lynx🐈⬛
恋愛
気が付いたら、前と後に入ってる!
そんな夢を見た日、それが現実になってしまった、メリッサ。
ゲーデル国の田舎町の商人の娘として育てられたメリッサは12歳になった。しかし、ゲーデル国の軍人により、メリッサは夢を見た日連れ去られてしまった。連れて来られて入った部屋には、自分そっくりな少女の肖像画。そして、その肖像画の大人になった女性は、ゲーデル国の女王、メリベルその人だった。
対面して初めて気付くメリッサ。「この人は母だ」と………。
※♡が付く話はHシーンです
クソつよ性欲隠して結婚したら草食系旦那が巨根で絶倫だった
山吹花月
恋愛
『穢れを知らぬ清廉な乙女』と『王子系聖人君子』
色欲とは無縁と思われている夫婦は互いに欲望を隠していた。
◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる