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第七章 世界を回すは女達
『エイデル商会の先読み姫』
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商業国家マーケディアに於いて、唯一『人材』を使っての商売を成功している者と言えば、答えは『エイデル商会』の一択である。
創業者であるゲーテ・エイデルは、孤児やスラムの子供達を集め、教育の場を与えることにより、優れた人材の育成、獲得を行った人物である。
彼により救われた者達は、自らを『ゲーテの子』と言う意味で、自分達の名の後に『ゲーテ』と付けるようになった。
よって、『ゲーテ』を名乗る者は大半がエイデル商会で教育を受けた人材達である。
そんなエイデル商会にある年、一人の少女が誕生した。
マリアステラと名付けられ、蝶よ花よと育てられた少女であったが、5歳の誕生日。【祝福の日】の《鑑定》により、既に《大商人》と言うスキルを持っていると判明したのだ。
そのスキルを伸ばすためと、父親から様々な商談に連れていかれたマリアステラは、7歳の時には投資話にまで興味を示し、次から次へと商会に利益を産む行動を始めた。
10歳の時、商談に訪れた父に連れられ、聖王国グランラディアにて、マリアステラは【王家の影】と呼ばれる情報機関をエベリウム伯爵家が取り仕切っていると耳にし、当時の伯爵に自らを売り込みに行った。
『お初にお目にかかります、エベリウム伯爵。私はエイデルのマリアステラと申します。今日は双方の為になるお話をしに参りました』
そう口上を述べ、艶やかに微笑んだマリアステラを伯爵は一目で気に入った。
エイデルの各国の情報網の活用、エベリウムの上級社会での情報網。両者を合わせることにより発生する、多種多様な情報の量と正確さ。
それを幼いマリアステラが提案したのだ。
伯爵家には既に次男までが結婚しており、三男も婚約したばかり、四男のアベルはマリアステラより二つ上の12歳。
伯爵は直ぐにアベルを婿養子に出すことを決め、翌日には婚約が成立したのである。
そんなわけでアベルは、エイデル商会へ社会勉強としてちょくちょく訪れては、マリアステラとの絆を深めた。
アベルは《閃き》という珍しいスキルを持っており、このスキルがマリアステラを助けていったのだ。
マリアステラがどれほど、人の流れ、商品の流行り、金の動きに聡くとも、急な天災などにはとうてい適わなかった。
しかし、アベルの意味のなさそうな発言を聞き入れるようになると、運が良かったと言うような出来事は増えだしたのだ。
マリアステラはこの事に歓喜した。手放しでアベルを讃え、賞賛した。
結婚まであと少しという時。
帰路につこうとしたアベルが、日をずらした方がいい気がすると、一日伸ばしたのだ。
そして翌日。
グランラディアからの急使により、自分以外の家族がスタンピードで亡くなったことを知った彼は、跡を継がなければならなくなった。
四男であったアベルには、【王家の影】をまとめあげる力はなく、また必要なスキルも持っていなかった。
ここで、マリアステラが国王に交渉をしたのだ。
『エイデル商会の先読み姫』である自分が請け負うことを。
亡き伯爵から、マリアステラの高い情報管理能力を聞かされていた国王は、マリアステラとの婚姻でのみ、爵位の継承を認めると宣言し、二人はエベリウム伯爵家を継いだのである。
※※※※※※※※
「うちの可愛い娘に悪さをしようだなんて、いけない人達ね……」
アリスティリア誘拐の一報を聞くなり、マリアステラはエイデル商会経由でマーケディア全土にこう述べた。
エイデル商会は、『エベリウムの宝玉』を盗んだ咎人に対し、全ての事業を放棄するものとする!!
これにより、マーケディアばかりでなく、各国は情報を急ぎ収集、確認した後、全ての国がエスタルディアとの取引を放棄したのである。
慌てたのはエスタルディアの国民達である。
退去する前に聞かされた話の確認に、王宮に民が殺到する自体に、問題となった『風の大精霊』の血筋であるエスタール侯爵を呼び出せば、侯爵も息子のしでかした事は寝耳に水であったために、非常に慌てていた。
急ぎ息子に連絡を付け、アリスティリアは精霊の血筋ではないと伝えても、そんなはずは無いと言い張り、音信不通となった。
宰相へと連絡を取り、マリアステラへとの面会を求めても、
「お話は娘を返してくだされば、いくらでもお聞きさせていただきますわ」
と、息子達経由での返答のみ。
その息子達も、妹を溺愛していると有名なのだ。
時に遠回しに、時には直接ハッキリと文句を聞かされた。
王家に頼もうにも、王妃と王太子夫妻のお気に入りのアリスティリアを拐ったので、取り次いでもらえることもなく、宰相は日に日に顔色を悪くしていたのであったーーーー。
創業者であるゲーテ・エイデルは、孤児やスラムの子供達を集め、教育の場を与えることにより、優れた人材の育成、獲得を行った人物である。
彼により救われた者達は、自らを『ゲーテの子』と言う意味で、自分達の名の後に『ゲーテ』と付けるようになった。
よって、『ゲーテ』を名乗る者は大半がエイデル商会で教育を受けた人材達である。
そんなエイデル商会にある年、一人の少女が誕生した。
マリアステラと名付けられ、蝶よ花よと育てられた少女であったが、5歳の誕生日。【祝福の日】の《鑑定》により、既に《大商人》と言うスキルを持っていると判明したのだ。
そのスキルを伸ばすためと、父親から様々な商談に連れていかれたマリアステラは、7歳の時には投資話にまで興味を示し、次から次へと商会に利益を産む行動を始めた。
10歳の時、商談に訪れた父に連れられ、聖王国グランラディアにて、マリアステラは【王家の影】と呼ばれる情報機関をエベリウム伯爵家が取り仕切っていると耳にし、当時の伯爵に自らを売り込みに行った。
『お初にお目にかかります、エベリウム伯爵。私はエイデルのマリアステラと申します。今日は双方の為になるお話をしに参りました』
そう口上を述べ、艶やかに微笑んだマリアステラを伯爵は一目で気に入った。
エイデルの各国の情報網の活用、エベリウムの上級社会での情報網。両者を合わせることにより発生する、多種多様な情報の量と正確さ。
それを幼いマリアステラが提案したのだ。
伯爵家には既に次男までが結婚しており、三男も婚約したばかり、四男のアベルはマリアステラより二つ上の12歳。
伯爵は直ぐにアベルを婿養子に出すことを決め、翌日には婚約が成立したのである。
そんなわけでアベルは、エイデル商会へ社会勉強としてちょくちょく訪れては、マリアステラとの絆を深めた。
アベルは《閃き》という珍しいスキルを持っており、このスキルがマリアステラを助けていったのだ。
マリアステラがどれほど、人の流れ、商品の流行り、金の動きに聡くとも、急な天災などにはとうてい適わなかった。
しかし、アベルの意味のなさそうな発言を聞き入れるようになると、運が良かったと言うような出来事は増えだしたのだ。
マリアステラはこの事に歓喜した。手放しでアベルを讃え、賞賛した。
結婚まであと少しという時。
帰路につこうとしたアベルが、日をずらした方がいい気がすると、一日伸ばしたのだ。
そして翌日。
グランラディアからの急使により、自分以外の家族がスタンピードで亡くなったことを知った彼は、跡を継がなければならなくなった。
四男であったアベルには、【王家の影】をまとめあげる力はなく、また必要なスキルも持っていなかった。
ここで、マリアステラが国王に交渉をしたのだ。
『エイデル商会の先読み姫』である自分が請け負うことを。
亡き伯爵から、マリアステラの高い情報管理能力を聞かされていた国王は、マリアステラとの婚姻でのみ、爵位の継承を認めると宣言し、二人はエベリウム伯爵家を継いだのである。
※※※※※※※※
「うちの可愛い娘に悪さをしようだなんて、いけない人達ね……」
アリスティリア誘拐の一報を聞くなり、マリアステラはエイデル商会経由でマーケディア全土にこう述べた。
エイデル商会は、『エベリウムの宝玉』を盗んだ咎人に対し、全ての事業を放棄するものとする!!
これにより、マーケディアばかりでなく、各国は情報を急ぎ収集、確認した後、全ての国がエスタルディアとの取引を放棄したのである。
慌てたのはエスタルディアの国民達である。
退去する前に聞かされた話の確認に、王宮に民が殺到する自体に、問題となった『風の大精霊』の血筋であるエスタール侯爵を呼び出せば、侯爵も息子のしでかした事は寝耳に水であったために、非常に慌てていた。
急ぎ息子に連絡を付け、アリスティリアは精霊の血筋ではないと伝えても、そんなはずは無いと言い張り、音信不通となった。
宰相へと連絡を取り、マリアステラへとの面会を求めても、
「お話は娘を返してくだされば、いくらでもお聞きさせていただきますわ」
と、息子達経由での返答のみ。
その息子達も、妹を溺愛していると有名なのだ。
時に遠回しに、時には直接ハッキリと文句を聞かされた。
王家に頼もうにも、王妃と王太子夫妻のお気に入りのアリスティリアを拐ったので、取り次いでもらえることもなく、宰相は日に日に顔色を悪くしていたのであったーーーー。
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