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第五章 誘拐からの救出監禁
招かれたのは別邸という名の檻でした
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「………えーと、エヴァン様?」
駆けつけた獣王国の兵士にネイゼルの身柄を任せ、後を引き受けたカフィルに任せ、エヴァンとアリスティリアは、グランラディアに戻ってきた。
エヴァンのマントに包まれ、エヴァンに横抱きにされて運ばれるアリスティリアは、恐らく全身が真っ赤になっているだろう。
「殿下にはカルステッドを通じて、貴女を保護したと知らせてあります。とりあえず私の邸が近いの で、そこで身形を整えましょう…」
かけられる声はとても低く、幼い頃とは変わっていてもその優しさは変わっていなかった。
「……ヴァン……?」
乗せられた馬車の中でも、エヴァンはアリスティリアを膝の上に座らせていた。
アリスティリアは我慢の限界で、思わずそう口にしていた。
「……なぜ、私が分かったんですか?」
困ったような嬉しいような目で、アリスティリアを見つめるエヴァン。
「…だって、さっきリアって呼んでたし…」
「すみません。慌てていたので、つい…」
「それは…別に嬉しかったので…」
「……はい」
恥ずかしさに俯いたアリスティリアの髪を、エヴァンは優しく撫で付けた。
「…大好きなヴァンの紫の瞳の色を忘れるわけないもの……」
「…はい、リア…。わたしも君の髪の色は忘れた事がありませんでしたよ…」
そこで、ふとエヴァンの手の動きが止まった。
「そう言えば、髪の色が変わってますね。魔導具を付けてるようではないので、魔術でしょうか?魔術なら、そろそろ元に戻りますね…」
そう言って再び手を動かすと、馬車が止まった。
門のすぐ側にある小さめの邸に、アリスティリアは抱き上げられたまま運び込まれた。
「「若様っ!!」」
ホールには二人のメイドがいた。
「ラフィン。フェリテ。ただいま戻りました。リアが着替えてる間に、何か軽い物を用意してください」
「「畏まりました」」
エヴァンの言葉に、二人は直ぐに歩き去った。
「こちらの部屋のタンスの中から好きな服を選んで下さい。全部、貴女のものですから…」
エヴァンはベッドにアリスティリアを下ろし、額に口付けると、部屋から出ていった。
「…好きな服?」
首を傾げながら、タンスを開けたアリスティリアは、目を点にした。
「……え?は?製作者にエヴァン様の名前付いてくるんだけど、え??」
タンスの中身はエヴァンがアリスティリアにと自身が手縫いしたドレス達であることを彼女はまだ知らないーーーー。
※※※※※※※※
「「この度はうちの若様が申し訳ございません!」」
ドレスを選んでいると、軽食を乗せたワゴンを押して、先程のメイド達が現れるなり、アリスティリアに頭を下げた。
「あの…何が?」
首を傾げるアリスティリアに、ラフィンが代表で口を開いた。
「こちらの邸は、グランディバルカス家の別邸でございます。この邸は若様ーエヴァン様のために建てられた邸でして……」
「はあ…」
「とりあえず、先にお着替えを致しましょうか」
苦笑する二人に首を傾げつつ、アリスティリアは紫色のワンピースを選んだ。
アメジスト色の飾り気のないそれは、襟元に淡いピンクのレースが飾られていて、自分とエヴァンの色だなあと選んでしまったからだ。
「それ、最新作なんですよ…」
アリスティリアの着替えを手伝いながら、猫獣人のメイドが笑った。
「あの、これ全部。製作者にエヴァン様の名前が出るんですけど…」
「はい…。全て若様の手作りでございます…」
「……手作り?」
「手作りです…」
髪を緩めのハーフアップにしてもらいながらの会話だったのだが、そこから先に進めて良いか両サイドで悩んでしまった。
「…改めて仕切り直させていただきます。私はラフィン。こちらはフェリテと申します。どちらもグランディバルカス家に仕える『護衛メイド』でございます」
「今後もお見知り置きくださいませ」
「っ!こちらこそ、若輩者ですがよろしくお願いします!!」
『護衛メイド』の先輩に対して、アリスティリアは慌てて立ち上がり頭を下げた。
「アリスティリア様には先程も謝罪させていただきましたが、改めて現状と謝罪の理由を説明させていただきます」
「はい!お願いします!!」
「まず一つ目。こちらの別邸に入れる使用人は私、フェリテ、魔導具師の三人のみとなっております」
「?」
「そして二つ目。こちらが謝罪の理由となります。この別邸は建物自体が魔導具となっており、ある特定の人物が邸に入った場合、その人物は部屋から出ることはエヴァン様の許可なくできなくなっております…」
「特定の人物……?」
「はい。特定の人物です。ちなみに寝室への立ち入りは、お二人がベッドにおられる間は、ドアの開閉は不可能となっております」
「つまり、わたしってことでしょうか?」
「「若様をお止めできず、誠に申し訳ございません!」」
部屋から出れなくなっていることを知らされ、アリスティリアは余りの事実に目を回すのであったーーーー。
駆けつけた獣王国の兵士にネイゼルの身柄を任せ、後を引き受けたカフィルに任せ、エヴァンとアリスティリアは、グランラディアに戻ってきた。
エヴァンのマントに包まれ、エヴァンに横抱きにされて運ばれるアリスティリアは、恐らく全身が真っ赤になっているだろう。
「殿下にはカルステッドを通じて、貴女を保護したと知らせてあります。とりあえず私の邸が近いの で、そこで身形を整えましょう…」
かけられる声はとても低く、幼い頃とは変わっていてもその優しさは変わっていなかった。
「……ヴァン……?」
乗せられた馬車の中でも、エヴァンはアリスティリアを膝の上に座らせていた。
アリスティリアは我慢の限界で、思わずそう口にしていた。
「……なぜ、私が分かったんですか?」
困ったような嬉しいような目で、アリスティリアを見つめるエヴァン。
「…だって、さっきリアって呼んでたし…」
「すみません。慌てていたので、つい…」
「それは…別に嬉しかったので…」
「……はい」
恥ずかしさに俯いたアリスティリアの髪を、エヴァンは優しく撫で付けた。
「…大好きなヴァンの紫の瞳の色を忘れるわけないもの……」
「…はい、リア…。わたしも君の髪の色は忘れた事がありませんでしたよ…」
そこで、ふとエヴァンの手の動きが止まった。
「そう言えば、髪の色が変わってますね。魔導具を付けてるようではないので、魔術でしょうか?魔術なら、そろそろ元に戻りますね…」
そう言って再び手を動かすと、馬車が止まった。
門のすぐ側にある小さめの邸に、アリスティリアは抱き上げられたまま運び込まれた。
「「若様っ!!」」
ホールには二人のメイドがいた。
「ラフィン。フェリテ。ただいま戻りました。リアが着替えてる間に、何か軽い物を用意してください」
「「畏まりました」」
エヴァンの言葉に、二人は直ぐに歩き去った。
「こちらの部屋のタンスの中から好きな服を選んで下さい。全部、貴女のものですから…」
エヴァンはベッドにアリスティリアを下ろし、額に口付けると、部屋から出ていった。
「…好きな服?」
首を傾げながら、タンスを開けたアリスティリアは、目を点にした。
「……え?は?製作者にエヴァン様の名前付いてくるんだけど、え??」
タンスの中身はエヴァンがアリスティリアにと自身が手縫いしたドレス達であることを彼女はまだ知らないーーーー。
※※※※※※※※
「「この度はうちの若様が申し訳ございません!」」
ドレスを選んでいると、軽食を乗せたワゴンを押して、先程のメイド達が現れるなり、アリスティリアに頭を下げた。
「あの…何が?」
首を傾げるアリスティリアに、ラフィンが代表で口を開いた。
「こちらの邸は、グランディバルカス家の別邸でございます。この邸は若様ーエヴァン様のために建てられた邸でして……」
「はあ…」
「とりあえず、先にお着替えを致しましょうか」
苦笑する二人に首を傾げつつ、アリスティリアは紫色のワンピースを選んだ。
アメジスト色の飾り気のないそれは、襟元に淡いピンクのレースが飾られていて、自分とエヴァンの色だなあと選んでしまったからだ。
「それ、最新作なんですよ…」
アリスティリアの着替えを手伝いながら、猫獣人のメイドが笑った。
「あの、これ全部。製作者にエヴァン様の名前が出るんですけど…」
「はい…。全て若様の手作りでございます…」
「……手作り?」
「手作りです…」
髪を緩めのハーフアップにしてもらいながらの会話だったのだが、そこから先に進めて良いか両サイドで悩んでしまった。
「…改めて仕切り直させていただきます。私はラフィン。こちらはフェリテと申します。どちらもグランディバルカス家に仕える『護衛メイド』でございます」
「今後もお見知り置きくださいませ」
「っ!こちらこそ、若輩者ですがよろしくお願いします!!」
『護衛メイド』の先輩に対して、アリスティリアは慌てて立ち上がり頭を下げた。
「アリスティリア様には先程も謝罪させていただきましたが、改めて現状と謝罪の理由を説明させていただきます」
「はい!お願いします!!」
「まず一つ目。こちらの別邸に入れる使用人は私、フェリテ、魔導具師の三人のみとなっております」
「?」
「そして二つ目。こちらが謝罪の理由となります。この別邸は建物自体が魔導具となっており、ある特定の人物が邸に入った場合、その人物は部屋から出ることはエヴァン様の許可なくできなくなっております…」
「特定の人物……?」
「はい。特定の人物です。ちなみに寝室への立ち入りは、お二人がベッドにおられる間は、ドアの開閉は不可能となっております」
「つまり、わたしってことでしょうか?」
「「若様をお止めできず、誠に申し訳ございません!」」
部屋から出れなくなっていることを知らされ、アリスティリアは余りの事実に目を回すのであったーーーー。
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