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第三章 そして、少年は運命に出会った

アリスティリアの初恋

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[アリスティリア視点]

物心ついた時には、母親が二人と父親が二人。兄が二人いた。
両親と異父兄の父親、義兄と義母。それがわたしの家族だった。
父親は私が生まれた翌日に事故で亡くなっており、わたしが2歳。兄が7歳になるまで、母が女手一つで育ててくれていた。
母親と同じ目の色の私と違って、兄の目の色はとてもキレイな紅色だった。
病気になった母のための薬代と、わたしのためのパン代を稼ぐために行ったエイデル商会。
兄はそこで自分が伯爵家の血を引く子供だと知った。
それから、わたし達家族は伯爵家に引き取られ、兄と私は伯爵家の養子になって、名前も変わった。
『ティリア・フィム』だったわたしの名前は、その日から『アリスティリア・リン・エべリウム』になった。
優しい父様と母様。可愛がってくれるカイン兄様。
血の繋がらないわたしを、家族ばかりか屋敷のみんなも可愛がってくれた。
そんな中、私が3歳になった時には、実の母親は病気で亡くなってしまった。

実の子のわたし達兄妹より、母様の方がたくさん泣いてたのは、幼かったけどちゃんと覚えている。
母のお墓は、父のお墓の横に作られ、しばらくはいつでもそこに行けるようにと、別荘を買って滞在してくれた。
兄達が勉強をしている間、一人幼かった私は、いつも両親のお墓の前にいた。
何となく両親がいるような気がしてたからだ。

ある日、そこに黒い髪に紫色の瞳の、ラスティ兄様くらいの男の子が現れた。

ちゃんと『ティリア』と名乗れないわたしに気長に付き合ってくれ、互いに愛称で呼び合い、日々を過ごしたーー。

しばらく会えない日々を過ごし、また会うという日々を三回繰り返した頃。
両親の墓が移されることになった。
周りが火事で荒れてしまったためらしく、新しく移された場所は伯爵家の屋敷の近くだった。
そのため、それからは大好きだったヴァンに会うことが出来なくなってしまったのだ。

落ち込んだわたしを、二人の兄は色んなことで慰めてくれた。
忙しい勉強の合間に、一緒におやつを食べたり、絵本を読んでくれたり。
そうして日々を過ごした。

ヴァンとのことは、社交界デビューを果たした15の時に、それが自分の初恋だったのだと自覚した。
幼くとも大事な初恋の思い出。

『ヴァンのお嫁さんになるのー!』

伯爵家の養女となっても、わたしは元々平民の出だ。
だけど、わたしを大事にしてくれている家族に恥をかかせたくなかった。
そして、いつかヴァンに会えた時、

『貴方は私の初恋でした』

そう言って、笑って伝えれるように。

わたしは伯爵令嬢としての自分を磨き上げていくと決めたのだーーーー。
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