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「…という事ですのでぇ、この事は陛下とわたしの二人だけの秘密ですわよぉ?守らなかったら、お分かりですわよねぇ?」
お茶会から数日後。
三人の妻達とのお茶会で、妻に対する扱いやら、子供に対する扱い。果ては紅茶の淹れ方まで散々に叩き込まれたマクスウェルは、グレイスの処分も終え、グレインの今後の再確認を報告がてら、最愛の王妃エリザベスの寝室へと向かう途中。二妃エリアナに捕縛され、グレイスの今後を聞かされた。
「……待て、娼館?え?本当に娼館?」
二妃が働き先を斡旋したとしか聞いていなかったマクスウェルは、場所を聞かされてドン引いた。
「あらぁ?他にあの方が務められそうなお仕事がございまして?」
ニコニコ笑いながら言ってるが、彼女の背後から流れ出る気配が語っている。
文句があるなら言ってみやがれ!…と。
そして、彼自身も納得してしまった。報告書にあった姦通相手の数の多さを思い出して。
だから文句を言いようもないと、納得するしかないのだ。
確かに脳筋の三妃に話せば、娼館ではなく鉱山で働かせろと言いかねないし、王妃に話せば、修道院送りにしようとするだろう。
普段の毅然とした態度から、冷たいと思われがちな王妃だが、三人の妻の中で、最も愛情深いのは王妃なのだから。
「……了解した。そっちに全部任せる…」
そう任せるしかないのだ。二妃は彼と王妃の代わりに汚れ仕事をするために、嫁いでくれているのだから。
そして、そんな二妃と同じ血を引いている、とある令嬢を思い出す。
「…なあ、ちょっと聞きたいんだが…」
「何ですの?」
頬に手を当て、コテンと首を傾げるのは、彼女達の一族の特徴なのだろうかと思いつつ、マクスウェルは口を開いた。
「…今回の件。もしかしてアディエル嬢から、事前に連絡もらってた?」
マクスウェルの言葉に、一瞬キョトンとしたものの、すぐに悪戯を思いついたような笑みを浮かべ、口調も本来の自分の話し方に戻した。
「アディはわたしの可愛い自慢の姪っ子ですわ。カイエン様は陛下と違って、ツメの甘い所もございませんし、人材にも恵まれていますでしょう?」
「うぐ…」
二妃は国王に対して容赦がない。そして、事実なので反論できない辛さが悲しい。優柔不断な自分の代わりに、決断するのは王妃だし、人心を一つに纏めるのは三妃が上手い。
「…陛下は王妃にとベスを望まれましたけど、表向きは毅然と執務をこなしても、ベスは愛情深い人ですもの。いつかは心を病んでしまうかもしれませんでしょう?だからこそのわたし達なのです。陛下も分かっているから、わたし達を受け入れられましたでしょ?」
そう言って浮かべた笑みは、純粋なものだった。
「…つまり。あの二人は二人だけで問題ないという事だな…」
「それもありますけれども。何よりあの二人と並べる令嬢がおりまして?アディはわたしに似ておりますけど、わたしよりも情は深いですわよ?」
それ、自分で言っちゃうのか…。と、マクスウェルは思ったが口にはしなかった。
命、大事!
「その証拠に、グレインくんへの対応は、全てアディの采配ですのよ?カイエン様とエイデン様は、ずっとグレインくんの将来を気にかけてましたし、血が繋がっていないと知ってさらに心配されてましたもの…」
聞かされた言葉に、マクスウェルは反省した。
血が繋がっていないと分かる前ですら、自分はグレインに関わろうとしていなかったのに、子供達と妻達は、グレインのせいではないからと、常に平等にしていたのだと。
確かに王籍から外れることが決まっていても、必要な事以外は、グレインは他の子供達と同じように扱われていた。
寧ろ、露骨に差別した者達は、容赦なく排除されていた。主に三妃に。
「……本当に俺は、お前達には頭が上がらない…」
肩を落としてそう言えば、呆れた顔が返された。
「……マクス。貴方、わたしやベラ相手に頭が上げれるなどと思っていましたの?」
次いで掛けられた言葉に、ひんやりとした冷たさを感じ、マクスウェルはやらかしたと判断した。
「いや、その…」
「ねぇ、マクス。誰のおかげで、貴方はベスを王妃に出来たのだった?」
「……エリーとベラのおかげです…」
彼女達がエリザベスを推したからこそ、文句無しに王妃に出来たのだと、マクスウェルも分かっている。
自分の我儘だけでは無理だった。
いつの間にか、彼はエリアナの前に正座していた。
「グレイスとやらかしたと報告した時、落ち込んだベスを宥めて、貴方と過ごすように説得したのは誰だったかしら?」
「…エリアナのおかげです、はい…」
寝室どころか自室にも入れてもらえなくなったマクスウェル。入れてもらえるようになったのは、エリアナがエリザベス王妃に、事実確認をして、耐性のない媚薬を使われていたようだと言ってくれたからだ。
最も、当時はエリアナの情報にも『クォーツ』という香辛料の詳細は分かっていなかったために、グレイスが側妃となってしまったのだが……。
「わたし達が不在の社交界で、貴方にまとわりつく女性が減ったのは?」
「…ベラの睨みのおかげです…」
人前では女性らしく、しかしキツめの発言をするイザベラ。その発言に上乗せしての殺気のこもった視線。
どこの令嬢が、それらを乗り越えて自分に来れるだろうか。国王である自分ばかりか、周囲に控える近衛騎士すら怯えるのに……。
「今後もよぉく覚えておいてくださいねぇ♪」
にっこり笑って仮面を被り直したエリアナに、マクスウェルは深々と土下座をしていたのであったーーーー。
お茶会から数日後。
三人の妻達とのお茶会で、妻に対する扱いやら、子供に対する扱い。果ては紅茶の淹れ方まで散々に叩き込まれたマクスウェルは、グレイスの処分も終え、グレインの今後の再確認を報告がてら、最愛の王妃エリザベスの寝室へと向かう途中。二妃エリアナに捕縛され、グレイスの今後を聞かされた。
「……待て、娼館?え?本当に娼館?」
二妃が働き先を斡旋したとしか聞いていなかったマクスウェルは、場所を聞かされてドン引いた。
「あらぁ?他にあの方が務められそうなお仕事がございまして?」
ニコニコ笑いながら言ってるが、彼女の背後から流れ出る気配が語っている。
文句があるなら言ってみやがれ!…と。
そして、彼自身も納得してしまった。報告書にあった姦通相手の数の多さを思い出して。
だから文句を言いようもないと、納得するしかないのだ。
確かに脳筋の三妃に話せば、娼館ではなく鉱山で働かせろと言いかねないし、王妃に話せば、修道院送りにしようとするだろう。
普段の毅然とした態度から、冷たいと思われがちな王妃だが、三人の妻の中で、最も愛情深いのは王妃なのだから。
「……了解した。そっちに全部任せる…」
そう任せるしかないのだ。二妃は彼と王妃の代わりに汚れ仕事をするために、嫁いでくれているのだから。
そして、そんな二妃と同じ血を引いている、とある令嬢を思い出す。
「…なあ、ちょっと聞きたいんだが…」
「何ですの?」
頬に手を当て、コテンと首を傾げるのは、彼女達の一族の特徴なのだろうかと思いつつ、マクスウェルは口を開いた。
「…今回の件。もしかしてアディエル嬢から、事前に連絡もらってた?」
マクスウェルの言葉に、一瞬キョトンとしたものの、すぐに悪戯を思いついたような笑みを浮かべ、口調も本来の自分の話し方に戻した。
「アディはわたしの可愛い自慢の姪っ子ですわ。カイエン様は陛下と違って、ツメの甘い所もございませんし、人材にも恵まれていますでしょう?」
「うぐ…」
二妃は国王に対して容赦がない。そして、事実なので反論できない辛さが悲しい。優柔不断な自分の代わりに、決断するのは王妃だし、人心を一つに纏めるのは三妃が上手い。
「…陛下は王妃にとベスを望まれましたけど、表向きは毅然と執務をこなしても、ベスは愛情深い人ですもの。いつかは心を病んでしまうかもしれませんでしょう?だからこそのわたし達なのです。陛下も分かっているから、わたし達を受け入れられましたでしょ?」
そう言って浮かべた笑みは、純粋なものだった。
「…つまり。あの二人は二人だけで問題ないという事だな…」
「それもありますけれども。何よりあの二人と並べる令嬢がおりまして?アディはわたしに似ておりますけど、わたしよりも情は深いですわよ?」
それ、自分で言っちゃうのか…。と、マクスウェルは思ったが口にはしなかった。
命、大事!
「その証拠に、グレインくんへの対応は、全てアディの采配ですのよ?カイエン様とエイデン様は、ずっとグレインくんの将来を気にかけてましたし、血が繋がっていないと知ってさらに心配されてましたもの…」
聞かされた言葉に、マクスウェルは反省した。
血が繋がっていないと分かる前ですら、自分はグレインに関わろうとしていなかったのに、子供達と妻達は、グレインのせいではないからと、常に平等にしていたのだと。
確かに王籍から外れることが決まっていても、必要な事以外は、グレインは他の子供達と同じように扱われていた。
寧ろ、露骨に差別した者達は、容赦なく排除されていた。主に三妃に。
「……本当に俺は、お前達には頭が上がらない…」
肩を落としてそう言えば、呆れた顔が返された。
「……マクス。貴方、わたしやベラ相手に頭が上げれるなどと思っていましたの?」
次いで掛けられた言葉に、ひんやりとした冷たさを感じ、マクスウェルはやらかしたと判断した。
「いや、その…」
「ねぇ、マクス。誰のおかげで、貴方はベスを王妃に出来たのだった?」
「……エリーとベラのおかげです…」
彼女達がエリザベスを推したからこそ、文句無しに王妃に出来たのだと、マクスウェルも分かっている。
自分の我儘だけでは無理だった。
いつの間にか、彼はエリアナの前に正座していた。
「グレイスとやらかしたと報告した時、落ち込んだベスを宥めて、貴方と過ごすように説得したのは誰だったかしら?」
「…エリアナのおかげです、はい…」
寝室どころか自室にも入れてもらえなくなったマクスウェル。入れてもらえるようになったのは、エリアナがエリザベス王妃に、事実確認をして、耐性のない媚薬を使われていたようだと言ってくれたからだ。
最も、当時はエリアナの情報にも『クォーツ』という香辛料の詳細は分かっていなかったために、グレイスが側妃となってしまったのだが……。
「わたし達が不在の社交界で、貴方にまとわりつく女性が減ったのは?」
「…ベラの睨みのおかげです…」
人前では女性らしく、しかしキツめの発言をするイザベラ。その発言に上乗せしての殺気のこもった視線。
どこの令嬢が、それらを乗り越えて自分に来れるだろうか。国王である自分ばかりか、周囲に控える近衛騎士すら怯えるのに……。
「今後もよぉく覚えておいてくださいねぇ♪」
にっこり笑って仮面を被り直したエリアナに、マクスウェルは深々と土下座をしていたのであったーーーー。
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