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第十一章 家族は家族

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[ガディル視点]

「……さて。どうしたものか………」

レンドル陛下から、全然忍んでもない密書が送られてきたため、その内容を知って今回同行したーラムダスに話すと、殺されそうな視線を向けられたが、事情が事情だけに渋々認められたーわけだが……。

『いいですか!レオ様達のご両親といえど、あちらは平民です!王族と一切接触のない平民。片や貴方は魔族の王太子。王族でも慌てるでしょうに魔族です、ま、ぞ、く!どんな態度を取られても、ひたすら耐えてくださいよ!!』

出発直前まで、何度も念押しされた。
言い返そうとしたら、

『…初対面の時のレオ様達にお取りになった態度を思い出してごらんなさい…』

ぐうの音も出なかった。

今思い返しても、あの時の自分の態度の傲慢さに蹲りたくなる。

傲慢まっしぐら。上から目線の発言と態度。

そりゃ、レオ達も不愉快だったろうから、帰ろうとするはずだ。
さすがにあの後すぐに発生したスタンピードが原因で、帰らなかったけれど。

しかも、スタンピードなのに、ほとんどレオが一人で片付けたし、後始末もレオ達で済ませて、魔族側こっちの出番なかったし…………。

あれ?俺、本当にダメダメだったのでは?

しかも、両想いだと分かってからの暴走っぷりは、落ち着いた今では、もはや黒歴史に近い。

寝ぼけたレオに盛った挙句、無許可で番契約を交わし、尚且つ説明しないまま。

ボッコボコに締められたのは、まだ骨身に染みている。

さすがに無言で、声も上げずに泣き出した時は、どうしたらいいか分からずに、慌てて部屋を飛び出し、控えていた侍女長が対応してくれなかったら、どうなっていたのやら……。

以前の世界で、家族との縁のなかったレオが、こちらで手に入れた家族。
手探りながらも、エレと共に馴染んだ家族から、説明無しの問答無用で、番契約したがために変化した寿命。

姿の変わらぬ自分が、家族に置いていかれる恐怖。

俺がいるのだからなどと、それで済まされることではなかったのに。レオが泣くまでその事に気づかなかったのだ。

「……よく見放されなかったな、俺……」

侍女長経由で父上達にも話が伝わり、

「バッカもーーーん!!」

と、父上にはぶっ飛ばされ、

「魔族と人族との違いを学び直されましょうかね?」

と、目の笑ってない笑顔の宰相に、再び教育・・される羽目にもなった。

俺は自分がレオに置いていかれる恐怖だけに目を向け、レオがレオの家族に置いていかれる恐怖のことに思い当たらなかったのだ。

『いいですか!とにかく誠意を見せて、ひたすら詫びるんですよ!!』

ラムダス、宰相、侍女長に囲まれ、散々そう言われたが……。

「そもそもどうやって誠意を見せればいいんだ……」

生まれてこの方、唯一の直系の第一王子であり、多分、真剣に謝ったのはレオ達が最初だったのだ。

慣れてると言っていたから、あれ・・で許されたのだとしたら……。

悩めば悩むほど、対応が分からなくなってくる。

「………あのぅ、ガディル殿下?」

恐る恐るかけられた声に、視線を向ければレオ達の護衛の二人が心配そうに俺を見ていた。

「……人族のことは人族に聞けば良いか…」

「「っ!?」」

笑みを浮かべた俺に、二人は後ずさったが、間近にいる俺以上にレオを知る連中だ。
さぞかし良案を思いついてくれるだろうーー。


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