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第十一章 家族は家族

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[アルテ視点]

「………や、やべぇ……」

    見習い騎士になってすぐに連れてかれた討伐先で、オレは初めて見た暴走状態のレオにそう呟いていた。
    いや、まあ正直。暴走状態のレオなんか、誰も見た事なかったわけだが。

「レオッ!レオ、落ち着いて!!父さん達なら無事だったから!」

    必死で叫んでいるエレの声も聞こえないのか、レオの周りはバチバチと雷が発生し、ドカン、ドカンと派手に辺りに落雷している。

    事の始まりは、『勇者』と『聖女』を手に入れて、自分の言いなりにしようとしたバカな伯爵のせいである。
    双子の両親を攫い、討伐先として来た自領の屋敷で、こっそりと隠し通路を使って、双子の元へ訪れたのだ。

『両親を助けたくば、私の元に来るのだっ!』

    伯爵の雇った荒くれ者が、双子の両親の首元に剣を押し当て、母親の首筋から流れた血を見た瞬間、レオが今の状態になったらしい。
    まだ十歳の子供だから、親を人質にすれば何とでもなると思ったらしいが、暴走した瞬間のレオにより、部屋の天井が吹き飛んだ。
    持っていた剣も電撃を帯びてしまったらしく、荒くれ者達はその手から剣を落としていた。

 「…………」

    レオは感情のない目を伯爵に向けたまま。屋敷ばかりか敷地内のあちこちに、雷が落ちていく。

    火事にならないのが不思議…。

「ひ……ひいぃぃ……」

    原因の伯爵はと言えば、腰を抜かして股間が残念なことになっている。まあ、自業自得なわけだが。

    止めるために近づこうにも、オレも親父達もレオの周りに発生した雷によって、近づくことも出来なかった。

「……きゃっ!」

    バチンと何かを弾くような音がして、女性の悲鳴が上がった。レオの母親が、レオに伸ばした手を弾かれたのだ。

「っ!」

    その瞬間、ピクリとレオの体が震えた。

「……もーっ!いい加減にしてよ、レオッ!!」

    振り向けば【聖杖】を構えたエレがいて、杖から雷がレオに向かって走った。

「つっ!」

   バチバチンと弾けるような音がし、小さく呻いたレオの体が傾いた。

「「っ!!」」
 
    床に倒れかけたレオの体は、飛びつくように走り寄った両親の腕の中に収まった。

    この事件により、双子の両親はレンドル様によって、誰にも分からぬ場所へと移された。

    そして、何処にでも似た輩は現れるものでーーーー。

「これより先は、殿下や陛下の許可のない方をお通しできませんっ!」

    それなりの年頃になってきた双子に、婚姻で繋がりを得ようとする連中が押しかけてきたのを、ダリヤ殿が断固拒否していた。
    その日はたまたま、レオの姿を見かけたせいで、無理やりに押し入ろうとして揉み合いになった。

「ええいっ!邪魔だ、どけっ!!」

「あぁっ!!」

    思いっきり突き飛ばされたダリヤ殿は、近くの柱に思いっきり頭を打ち付けた。

「……ダリヤ?」

    周りを取り囲まれたレオは、倒れているダリヤ殿を見つけた瞬間、囲んでいた連中はレオの周りに発生した雷に撃たれて倒れた。
    周囲に落ちまくる雷に、駆けつけたオレ達は慌ててエレを呼びに神殿へ走った。

「………」

    前回同様に、レオから表情は消えていたが、落雷は庭だけに収まっていた。

「ダリヤ……。ダリヤ、大丈夫?」

    駆けつけたエレは、周りを確認するとダリヤの治療をした。

「…エレ様。申し訳ありません…」

 意識の戻ったダリヤの言葉から、レオの周りに倒れているのが、不法侵入した連中だと分かった。

「あの連中は王家の命に従わなかった連中だ。治療しなくともよい…。とりあえず、レオを落ち着かせねばな…」

    レンドル様の言葉で、エレが魔法を使って気絶させようとした。だが、前回使えたエレの魔法は、レオの《耐性》スキルのせいで弾かれてしまった。

「マジか……。どうする、エレ?」

「……物理でいきます…」

    そう言って自らに《障壁バリア》を使うと、ツカツカとレオに近寄り、【聖杖】を掲げるなり振り下ろした。

    ガツン!

    殴られた瞬間、落雷は収まり、レオは倒れ込んだ。

    そして、三度目。魔族領では、ちゃんと意識を保ったままだった。

    恐らくレオにとって身内であることが、意識を飛ばして暴走する理由ではないかという結論になった。

    オレ達が傷ついたらどうなるかなど、恐ろしくて試す気にもならず。
    レオに深く関わっている連中は、鍛錬に励んでいるーーーー。





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