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第十章 他国訪問〔ユーディアナ〕
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[エレオノール視点]
「……すまん、エレ。お前とオレ達の身を守るため、今夜はここに居させてくれ……」
寝ようとしたら、アルテと数人の騎士達が部屋に来ました。
「え?部屋は各自で用意されてたよね?」
確かアルテは個室で、他は二人部屋を貰っていたと記憶している。
「その部屋が安全でない可能性が高いから、集まって寝ることにしたんだよ…」
「?」
首を傾げる私に、アルテは自身の母親から聞いた話を教えてくれた。
うん。明日からすぐに討伐行くって予定の意味がよく分かった。ついでに皆が持たされまくってた魔導具の意味も理解しました。
さらには、やはり国の状況に馴染めない方はいるわけで、その人からアルテが得た情報がまたすごかったです。
「今代の王は女王なんだが、あの方。同性婚も認められてるとかで…」
因みに第二王子が、私を狙ってるんだとかで、自分達と私の身の安全の確保で集まったんだとか……。
「ここにいない人達は?」
「そっちはいくつか集まって、《障壁》使える奴らと交代で対応予定だな…」
そんな訳で、私の部屋もベッドの周辺に、《障壁》を展開し、ベッドの周りを皆が囲むように座り込んでいました。
カタン。シュー…。
物音と共に部屋には次第に煙が充満して行きましたが、皆の表情はものすごーく嫌そうです。
「さあて。男といえど『聖女』となれば、楽しめそうだな♪」
などとご機嫌に部屋に入ってきたのは、情報通り第二王子でした。
ないわ…………。
性別を誤魔化していた時より、今のが有り得ません。
天蓋越しに冷めた目で彼を見ている私。残念な生き物を見るかのような皆の視線。
ニヤついていた第二王子は、ベッドの周りにいるアルテ達に驚き、顎が外れそうなくらい口を開けて固まりました。
「これはこれは第二王子殿ではありませんか。このような時間に我が国の『聖女』に何の御用でしょうか?」
分かっているのに、敢えてアルテが訪ねます。
「…あ、いや。護衛騎士のあなた方は、何故こちらに?」
「それはもちろん、護衛のためですよ?我々、護衛騎士ですから♪」
「我が国の『聖女』は『聖女』といえど、男の身。なれど、なぜか『聖女』という言葉に惑わされる方々が多く、念の為にと毎夜護衛が付いているのですよ♪」
ニコニコ笑ってますけど、目が全然笑ってないからね、皆……。第二王子も、口の端がヒクヒクと引きつってます。
「ところで、第二王子殿はどうされました?」
分かってて聞いてますからね。バレてんだから、諦めてさっさと帰ってください。
そんな思いは伝わらなかったようです。
「こ、今宵は滅多にない月夜ですので、エレオノール殿と月見でもどうかと思いまして…」
いや、私が寝てるかもしれないとこに、いきなり無断で押し入ってその言い分が通るわけないですよね?しかも、入ってくる前に、薬か何か使ってましたよね?
天蓋のこちら側から呆れて見てると、ジリジリと第二王子がこちらに近寄ろうとしてくるのを感じました。
「………《睡眠》」
「…ほえ?」
バタンという音と共に、天蓋が開かれました。
「…エレ。眠らせやがったな…?」
呆れ顔のアルテに肩を竦めます。
「近くの庭先にでも寝かせておいて、誰かに知らせればいいんじゃないかな?」
「あ、ついでに細工しとこうぜ♪」
口の周りと、服の袖や襟元を、少しのお酒で湿らせました。
「ほい。酔っ払っいの偽装出来上がり♪」
半分は護衛で残り、残りの皆が忌々しげに第二王子を運んで行きます。
「…何か運んでった方の皆、機嫌悪くなかった?」
「…あれはな。お前に来る夜這いが女にかけてた連中だろ……」
それからは自分の寝るベットにだけ《障壁》を使って寝ましたーーーー。
「……すまん、エレ。お前とオレ達の身を守るため、今夜はここに居させてくれ……」
寝ようとしたら、アルテと数人の騎士達が部屋に来ました。
「え?部屋は各自で用意されてたよね?」
確かアルテは個室で、他は二人部屋を貰っていたと記憶している。
「その部屋が安全でない可能性が高いから、集まって寝ることにしたんだよ…」
「?」
首を傾げる私に、アルテは自身の母親から聞いた話を教えてくれた。
うん。明日からすぐに討伐行くって予定の意味がよく分かった。ついでに皆が持たされまくってた魔導具の意味も理解しました。
さらには、やはり国の状況に馴染めない方はいるわけで、その人からアルテが得た情報がまたすごかったです。
「今代の王は女王なんだが、あの方。同性婚も認められてるとかで…」
因みに第二王子が、私を狙ってるんだとかで、自分達と私の身の安全の確保で集まったんだとか……。
「ここにいない人達は?」
「そっちはいくつか集まって、《障壁》使える奴らと交代で対応予定だな…」
そんな訳で、私の部屋もベッドの周辺に、《障壁》を展開し、ベッドの周りを皆が囲むように座り込んでいました。
カタン。シュー…。
物音と共に部屋には次第に煙が充満して行きましたが、皆の表情はものすごーく嫌そうです。
「さあて。男といえど『聖女』となれば、楽しめそうだな♪」
などとご機嫌に部屋に入ってきたのは、情報通り第二王子でした。
ないわ…………。
性別を誤魔化していた時より、今のが有り得ません。
天蓋越しに冷めた目で彼を見ている私。残念な生き物を見るかのような皆の視線。
ニヤついていた第二王子は、ベッドの周りにいるアルテ達に驚き、顎が外れそうなくらい口を開けて固まりました。
「これはこれは第二王子殿ではありませんか。このような時間に我が国の『聖女』に何の御用でしょうか?」
分かっているのに、敢えてアルテが訪ねます。
「…あ、いや。護衛騎士のあなた方は、何故こちらに?」
「それはもちろん、護衛のためですよ?我々、護衛騎士ですから♪」
「我が国の『聖女』は『聖女』といえど、男の身。なれど、なぜか『聖女』という言葉に惑わされる方々が多く、念の為にと毎夜護衛が付いているのですよ♪」
ニコニコ笑ってますけど、目が全然笑ってないからね、皆……。第二王子も、口の端がヒクヒクと引きつってます。
「ところで、第二王子殿はどうされました?」
分かってて聞いてますからね。バレてんだから、諦めてさっさと帰ってください。
そんな思いは伝わらなかったようです。
「こ、今宵は滅多にない月夜ですので、エレオノール殿と月見でもどうかと思いまして…」
いや、私が寝てるかもしれないとこに、いきなり無断で押し入ってその言い分が通るわけないですよね?しかも、入ってくる前に、薬か何か使ってましたよね?
天蓋のこちら側から呆れて見てると、ジリジリと第二王子がこちらに近寄ろうとしてくるのを感じました。
「………《睡眠》」
「…ほえ?」
バタンという音と共に、天蓋が開かれました。
「…エレ。眠らせやがったな…?」
呆れ顔のアルテに肩を竦めます。
「近くの庭先にでも寝かせておいて、誰かに知らせればいいんじゃないかな?」
「あ、ついでに細工しとこうぜ♪」
口の周りと、服の袖や襟元を、少しのお酒で湿らせました。
「ほい。酔っ払っいの偽装出来上がり♪」
半分は護衛で残り、残りの皆が忌々しげに第二王子を運んで行きます。
「…何か運んでった方の皆、機嫌悪くなかった?」
「…あれはな。お前に来る夜這いが女にかけてた連中だろ……」
それからは自分の寝るベットにだけ《障壁》を使って寝ましたーーーー。
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