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第九章 他国訪問〔グラシア王国〕

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[レオノーラ視点]

「少しよろしいかな?」

   【王国会議】が終わって、エレと絡んでくるガディルを交わしながら話してると、グラシア王にそう声をかけられた。
    淡い金髪に王様らしい髭を生やし、サラ姉様と同じ青い瞳が私達を見てた。

「グラシア王。いかがされました?」

    一応、魔族領の王太子であるガディルが前に出て、庇うように私を背後に隠して対応していく。

    いや。隠さなくても、私の方が強いし……。

「…レオは女性なんだから、こういう時は庇われることにも慣れようね……」

    思ったことが顔に出ていたらしい。呆れ顔でエレにそう言われた。解せぬ……。

「うむ。実はレンドル殿にも手紙で前もって頼んではいたのだが、少々、我が国の問題解決に手を借りたいのだ…」

    そうして、表向きには・・・・・グラシア王国の兵では倒せない魔物の討伐依頼を引き受けることになった。
    表向きには、だ。
    エレと一旦部屋に戻された後、私だけが呼び戻された。

    やっぱり、こっちが本命の相談かな?

    さっきのメンバーから、エレだけがいないのは、多分、腹芸が出来ないからだろうと推測した。エレの代わりにサラ姉様がいるので、王妃様関係かなと思われる。

「レオ。伯父上を手伝ってもらいたいの…」

   そうして、私が引き受けたのは、

『王妃とその子供達を王族から外すこと』

    グラシア王には王妃以外にも伯爵家出身の側妃様がいて、王妃には第三王女と第一王子。側妃様には既に嫁がれた第一王女と、第二王女。第二王子と第三王子がいるらしい。
    もうこの時点で、王様がどっちを大事にしてるか丸分かり。
    聞けば王妃としての仕事はほとんど側妃様がこなしていて、都合のいいとこだけ王妃様が出しゃばっているらしく、国民からの評判は最悪らしい。
    王妃様の父親である侯爵様とその跡継ぎであるお兄さんも、仕事の出来ない王妃様と、身分を笠に着て好き放題する第三王女。王子でありながら、余りにも頼りない第一王子に、このままでは自分達の侯爵家ばかりか、国の存続も危ぶまれるかもしれないと、他の人達より率先して王様に賛同したらしい。

    どんだけヤバいの、その人達……。

「しかし、第一王子を外すのはどうかと思うのだが……」

   ガディルが首を傾げながらそう言うと、

「…あれは、本当に気が弱くてな。王妃や妹に怒鳴られたら、ハイハイと言いなりになってしまう。あれを王家に残してしまえば、二人を外す意味がなくなってしまう……」

    あ、うん。それは仕方ないか……。

「ですが、王妃様から側妃様の身分とかで文句言われません?」

   そんな人なら、自分より地位の低い人が後釜に座るの騒ぎそう……。

「ああ。そちらも問題ないのだよ。何しろ王妃の父である侯爵が側妃を養女にしてもよいと言っているのでな」

「は?側妃なのに、養子縁組できるの?」

    グラシア王国は、側妃は愛人扱いなので、養子縁組に問題は無いらしい。ちなみに王族の子供は、庶子という言葉が使われることは無いらしい。よく分からん!

「とりあえず、どうやって王妃達を外すかだな……。一番手っ取り早いのは、誰もが許すわけにはならん事をさせることなんだが…」

「そんなの簡単だよ♪」

   レン兄様の言葉に、にんまり笑ってそう言った。

「『勇者』と『聖女エレ』が、討伐依頼を断るような態度を取るように誘導すればいいんだよ♪」

「ふむ。追い討ちとして魔族領の王太子である俺も、『レオ』に対する無礼として断ることが出来るな……」

   私の提案に、ニヤリと笑ってガディルが続く。

「…確かにそれならば貴族ばかりか国民からの反感も買うだろうな。そうだな。いっそ誓言してみるか?」

    レン兄様がノリノリです。まあ聞いてた限り、サラ姉様に対する嫌がらせと、自分へのしつこいアプローチにキレてたようなので、当然かもしれない……。突っ込んだら危険。

「夜会でエレに目立ってもらって、煽りに煽って失言させればいいだろう。ガディル殿とエレが着飾って並んでいれば、夢中になってまともに話も聞いてないだろうからな……」

    そうして呆気に取られるグラシア王を置き去りに、ノリに乗りまくって三人で作戦を立て、サラ姉様にたまに止められながらも決まった作戦。

    先ずは予定通りに『勇者』と『聖女エレ』の誓言は済ませた。血相かえてやってくる王妃様にちらりと視線を向ける。

    二匹目、いらっしゃーい♪


   
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