90 / 110
第九章 他国訪問〔グラシア王国〕
7
しおりを挟む
[レオノーラ視点]
「少しよろしいかな?」
【王国会議】が終わって、エレと絡んでくるガディルを交わしながら話してると、グラシア王にそう声をかけられた。
淡い金髪に王様らしい髭を生やし、サラ姉様と同じ青い瞳が私達を見てた。
「グラシア王。いかがされました?」
一応、魔族領の王太子であるガディルが前に出て、庇うように私を背後に隠して対応していく。
いや。隠さなくても、私の方が強いし……。
「…レオは女性なんだから、こういう時は庇われることにも慣れようね……」
思ったことが顔に出ていたらしい。呆れ顔でエレにそう言われた。解せぬ……。
「うむ。実はレンドル殿にも手紙で前もって頼んではいたのだが、少々、我が国の問題解決に手を借りたいのだ…」
そうして、表向きにはグラシア王国の兵では倒せない魔物の討伐依頼を引き受けることになった。
表向きには、だ。
エレと一旦部屋に戻された後、私だけが呼び戻された。
やっぱり、こっちが本命の相談かな?
さっきのメンバーから、エレだけがいないのは、多分、腹芸が出来ないからだろうと推測した。エレの代わりにサラ姉様がいるので、王妃様関係かなと思われる。
「レオ。伯父上を手伝ってもらいたいの…」
そうして、私が引き受けたのは、
『王妃とその子供達を王族から外すこと』
グラシア王には王妃以外にも伯爵家出身の側妃様がいて、王妃には第三王女と第一王子。側妃様には既に嫁がれた第一王女と、第二王女。第二王子と第三王子がいるらしい。
もうこの時点で、王様がどっちを大事にしてるか丸分かり。
聞けば王妃としての仕事はほとんど側妃様がこなしていて、都合のいいとこだけ王妃様が出しゃばっているらしく、国民からの評判は最悪らしい。
王妃様の父親である侯爵様とその跡継ぎであるお兄さんも、仕事の出来ない王妃様と、身分を笠に着て好き放題する第三王女。王子でありながら、余りにも頼りない第一王子に、このままでは自分達の侯爵家ばかりか、国の存続も危ぶまれるかもしれないと、他の人達より率先して王様に賛同したらしい。
どんだけヤバいの、その人達……。
「しかし、第一王子を外すのはどうかと思うのだが……」
ガディルが首を傾げながらそう言うと、
「…あれは、本当に気が弱くてな。王妃や妹に怒鳴られたら、ハイハイと言いなりになってしまう。あれを王家に残してしまえば、二人を外す意味がなくなってしまう……」
あ、うん。それは仕方ないか……。
「ですが、王妃様から側妃様の身分とかで文句言われません?」
そんな人なら、自分より地位の低い人が後釜に座るの騒ぎそう……。
「ああ。そちらも問題ないのだよ。何しろ王妃の父である侯爵が側妃を養女にしてもよいと言っているのでな」
「は?側妃なのに、養子縁組できるの?」
グラシア王国は、側妃は愛人扱いなので、養子縁組に問題は無いらしい。ちなみに王族の子供は、庶子という言葉が使われることは無いらしい。よく分からん!
「とりあえず、どうやって王妃達を外すかだな……。一番手っ取り早いのは、誰もが許すわけにはならん事をさせることなんだが…」
「そんなの簡単だよ♪」
レン兄様の言葉に、にんまり笑ってそう言った。
「『勇者』と『聖女』が、討伐依頼を断るような態度を取るように誘導すればいいんだよ♪」
「ふむ。追い討ちとして魔族領の王太子である俺も、『番』に対する無礼として断ることが出来るな……」
私の提案に、ニヤリと笑ってガディルが続く。
「…確かにそれならば貴族ばかりか国民からの反感も買うだろうな。そうだな。いっそ誓言してみるか?」
レン兄様がノリノリです。まあ聞いてた限り、サラ姉様に対する嫌がらせと、自分へのしつこいアプローチにキレてたようなので、当然かもしれない……。突っ込んだら危険。
「夜会でエレに目立ってもらって、煽りに煽って失言させればいいだろう。ガディル殿とエレが着飾って並んでいれば、夢中になってまともに話も聞いてないだろうからな……」
そうして呆気に取られるグラシア王を置き去りに、ノリに乗りまくって三人で作戦を立て、サラ姉様にたまに止められながらも決まった作戦。
先ずは予定通りに『勇者』と『聖女』の誓言は済ませた。血相かえてやってくる王妃様にちらりと視線を向ける。
二匹目、いらっしゃーい♪
「少しよろしいかな?」
【王国会議】が終わって、エレと絡んでくるガディルを交わしながら話してると、グラシア王にそう声をかけられた。
淡い金髪に王様らしい髭を生やし、サラ姉様と同じ青い瞳が私達を見てた。
「グラシア王。いかがされました?」
一応、魔族領の王太子であるガディルが前に出て、庇うように私を背後に隠して対応していく。
いや。隠さなくても、私の方が強いし……。
「…レオは女性なんだから、こういう時は庇われることにも慣れようね……」
思ったことが顔に出ていたらしい。呆れ顔でエレにそう言われた。解せぬ……。
「うむ。実はレンドル殿にも手紙で前もって頼んではいたのだが、少々、我が国の問題解決に手を借りたいのだ…」
そうして、表向きにはグラシア王国の兵では倒せない魔物の討伐依頼を引き受けることになった。
表向きには、だ。
エレと一旦部屋に戻された後、私だけが呼び戻された。
やっぱり、こっちが本命の相談かな?
さっきのメンバーから、エレだけがいないのは、多分、腹芸が出来ないからだろうと推測した。エレの代わりにサラ姉様がいるので、王妃様関係かなと思われる。
「レオ。伯父上を手伝ってもらいたいの…」
そうして、私が引き受けたのは、
『王妃とその子供達を王族から外すこと』
グラシア王には王妃以外にも伯爵家出身の側妃様がいて、王妃には第三王女と第一王子。側妃様には既に嫁がれた第一王女と、第二王女。第二王子と第三王子がいるらしい。
もうこの時点で、王様がどっちを大事にしてるか丸分かり。
聞けば王妃としての仕事はほとんど側妃様がこなしていて、都合のいいとこだけ王妃様が出しゃばっているらしく、国民からの評判は最悪らしい。
王妃様の父親である侯爵様とその跡継ぎであるお兄さんも、仕事の出来ない王妃様と、身分を笠に着て好き放題する第三王女。王子でありながら、余りにも頼りない第一王子に、このままでは自分達の侯爵家ばかりか、国の存続も危ぶまれるかもしれないと、他の人達より率先して王様に賛同したらしい。
どんだけヤバいの、その人達……。
「しかし、第一王子を外すのはどうかと思うのだが……」
ガディルが首を傾げながらそう言うと、
「…あれは、本当に気が弱くてな。王妃や妹に怒鳴られたら、ハイハイと言いなりになってしまう。あれを王家に残してしまえば、二人を外す意味がなくなってしまう……」
あ、うん。それは仕方ないか……。
「ですが、王妃様から側妃様の身分とかで文句言われません?」
そんな人なら、自分より地位の低い人が後釜に座るの騒ぎそう……。
「ああ。そちらも問題ないのだよ。何しろ王妃の父である侯爵が側妃を養女にしてもよいと言っているのでな」
「は?側妃なのに、養子縁組できるの?」
グラシア王国は、側妃は愛人扱いなので、養子縁組に問題は無いらしい。ちなみに王族の子供は、庶子という言葉が使われることは無いらしい。よく分からん!
「とりあえず、どうやって王妃達を外すかだな……。一番手っ取り早いのは、誰もが許すわけにはならん事をさせることなんだが…」
「そんなの簡単だよ♪」
レン兄様の言葉に、にんまり笑ってそう言った。
「『勇者』と『聖女』が、討伐依頼を断るような態度を取るように誘導すればいいんだよ♪」
「ふむ。追い討ちとして魔族領の王太子である俺も、『番』に対する無礼として断ることが出来るな……」
私の提案に、ニヤリと笑ってガディルが続く。
「…確かにそれならば貴族ばかりか国民からの反感も買うだろうな。そうだな。いっそ誓言してみるか?」
レン兄様がノリノリです。まあ聞いてた限り、サラ姉様に対する嫌がらせと、自分へのしつこいアプローチにキレてたようなので、当然かもしれない……。突っ込んだら危険。
「夜会でエレに目立ってもらって、煽りに煽って失言させればいいだろう。ガディル殿とエレが着飾って並んでいれば、夢中になってまともに話も聞いてないだろうからな……」
そうして呆気に取られるグラシア王を置き去りに、ノリに乗りまくって三人で作戦を立て、サラ姉様にたまに止められながらも決まった作戦。
先ずは予定通りに『勇者』と『聖女』の誓言は済ませた。血相かえてやってくる王妃様にちらりと視線を向ける。
二匹目、いらっしゃーい♪
10
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる