双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

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第九章 他国訪問〔グラシア王国〕

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「「グラシア王国?」」

    ある日。国王夫妻に呼び出された双子は、耳にした言葉を首を傾げながら口にした。

「……隣国の名前だぞ?サラの故郷をまさか知らなかった……なんて言わないよな、二人とも?」

    にっこりと笑うレンドルの目は笑っていない。

「「…………」」

    双子はそっと視線を合わせないようにずらした。

「レーオー?エーレー?」

「いや、うん。もちろん、知ってるよ!サラ姉様のいた国だもん。ね?」

「そうだよ。隣国の名前ぐらいは覚えてるよ!ね?」

    レンドルの声に双子はそう答えて、互いの顔を見合わせて頷き合う。

「…そうだろうとも♪例えお前達が勉強を嫌がって、討伐に逃げていたとしても、この程度・・・・は知っているはずだ……」

    レンドルはテーブルの上に肘をついた手に顎を乗せてニヤリと笑った。

「グラシアの国王陛下はサラの伯父に当たる方だが、名前ぐらいはちゃあんと・・・・・言えるだろ?言ってごらん、二人とも♪」

    あ。これ、バレてるやつだ…………。

 「「ごめんなさいっ!分かりません!!」」

    双子は素直に謝った。

「はぁ…。お前達は本当に…」

    溜息をついたレンドルは、後ろに控えていたハンニバルを手招いた。

「バル。出発までに双子に国名と最低限の王族を教えこんでくれ…」

「畏まりました……」

    深々と頭を下げるハンニバルに対し、双子ー特にレオノーラは無言で首を左右に振った。

「……レオ。諦めて一緒に覚えようね……」

    エレオノールに肩を叩かれて、レオノーラはガックリと大きく肩を落としたのだったーーーー。



※※※※※※※※※※

    『干渉世界』は正確な大きさが不明とされる世界であった。
    住む種族はで多々あれど、人族領と魔族領に分かれていて、人族領には主に人族が暮らし、無数の国家を作っていた。
    対して魔族領にはそれ以外の種族が集まり、もっとも魔力が強く、寿命の長い者が魔王として選ばれ、魔族領を治めていた。ここ数百年は純粋な魔族から王が選ばれている。

「………詐欺だ………。隣国だけ覚えろって言ってたのに、存在してる国が全部隣国だなんて……」

     渡された地図を見ながら、エレオノールは頭を抱えた。

「あー、今すぐ結婚したい……。結婚して魔族領逃げ込みたい……」

    レオノーラの婚約者は魔族領の王太子のガディルだ。魔族は一方が人族領と繋がっている以外は、周りは【果てはての霧】に囲まれている。
   【果ての霧】は『干渉世界』を包み込むように存在していて、そこへ入ってもすぐに元の場所に戻される。それ以上、進むことなく、何度繰り返しても何度も戻されるために【果ての・・・霧】と呼ばれるようになったらしい。
    現在、双子の住む国はヒューゲル王国だ。人族領の国は全て、王族の家名がそのまま国名となっている。
    ヒューゲル王国は魔族領と隣接している唯一の人族領であり、人族領の中でも最大の国であった。そのため、他国はヒューゲル王国と隣接しつつ、互いに重なり合う国境以外は、魔族領同様に【果ての霧】に囲まれている。

「……魔族領行っても、王族に嫁ぐんだから、結局覚える羽目になるんじゃね?」

「はうっ!」
 
    アルテの指摘にレオノーラは呻いて胸を押さえた。

「あっ!でも、すぐに魔王になるわけじゃ「魔王様、お前らが結婚したら早々に引退して、悠々自適な旅に出るとか言ってたぞ?」」

「陛下ぁぁぁぁっ!!」

   頭を抱えて絶叫する姉を横目に、

   そう言えばお茶目な魔王様でレンドルと気が合いそうだったって言ってたなぁ……。

   などと、エレオノールも現実から逃避をしていたのであったーーーー。







    
    
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