84 / 110
第九章 他国訪問〔グラシア王国〕
1
しおりを挟む
「「グラシア王国?」」
ある日。国王夫妻に呼び出された双子は、耳にした言葉を首を傾げながら口にした。
「……隣国の名前だぞ?サラの故郷をまさか知らなかった……なんて言わないよな、二人とも?」
にっこりと笑うレンドルの目は笑っていない。
「「…………」」
双子はそっと視線を合わせないようにずらした。
「レーオー?エーレー?」
「いや、うん。もちろん、知ってるよ!サラ姉様のいた国だもん。ね?」
「そうだよ。隣国の名前ぐらいは覚えてるよ!ね?」
レンドルの声に双子はそう答えて、互いの顔を見合わせて頷き合う。
「…そうだろうとも♪例えお前達が勉強を嫌がって、討伐に逃げていたとしても、この程度は知っているはずだ……」
レンドルはテーブルの上に肘をついた手に顎を乗せてニヤリと笑った。
「グラシアの国王陛下はサラの伯父に当たる方だが、名前ぐらいはちゃあんと言えるだろ?言ってごらん、二人とも♪」
あ。これ、バレてるやつだ…………。
「「ごめんなさいっ!分かりません!!」」
双子は素直に謝った。
「はぁ…。お前達は本当に…」
溜息をついたレンドルは、後ろに控えていたハンニバルを手招いた。
「バル。出発までに双子に国名と最低限の王族を教えこんでくれ…」
「畏まりました……」
深々と頭を下げるハンニバルに対し、双子ー特にレオノーラは無言で首を左右に振った。
「……レオ。諦めて一緒に覚えようね……」
エレオノールに肩を叩かれて、レオノーラはガックリと大きく肩を落としたのだったーーーー。
※※※※※※※※※※
『干渉世界』は正確な大きさが不明とされる世界であった。
住む種族はで多々あれど、人族領と魔族領に分かれていて、人族領には主に人族が暮らし、無数の国家を作っていた。
対して魔族領にはそれ以外の種族が集まり、もっとも魔力が強く、寿命の長い者が魔王として選ばれ、魔族領を治めていた。ここ数百年は純粋な魔族から王が選ばれている。
「………詐欺だ………。隣国だけ覚えろって言ってたのに、存在してる国が全部隣国だなんて……」
渡された地図を見ながら、エレオノールは頭を抱えた。
「あー、今すぐ結婚したい……。結婚して魔族領逃げ込みたい……」
レオノーラの婚約者は魔族領の王太子のガディルだ。魔族は一方が人族領と繋がっている以外は、周りは【果ての霧】に囲まれている。
【果ての霧】は『干渉世界』を包み込むように存在していて、そこへ入ってもすぐに元の場所に戻される。それ以上、進むことなく、何度繰り返しても何度も戻されるために【果ての霧】と呼ばれるようになったらしい。
現在、双子の住む国はヒューゲル王国だ。人族領の国は全て、王族の家名がそのまま国名となっている。
ヒューゲル王国は魔族領と隣接している唯一の人族領であり、人族領の中でも最大の国であった。そのため、他国はヒューゲル王国と隣接しつつ、互いに重なり合う国境以外は、魔族領同様に【果ての霧】に囲まれている。
「……魔族領行っても、王族に嫁ぐんだから、結局覚える羽目になるんじゃね?」
「はうっ!」
アルテの指摘にレオノーラは呻いて胸を押さえた。
「あっ!でも、すぐに魔王になるわけじゃ「魔王様、お前らが結婚したら早々に引退して、悠々自適な旅に出るとか言ってたぞ?」」
「陛下ぁぁぁぁっ!!」
頭を抱えて絶叫する姉を横目に、
そう言えばお茶目な魔王様でレンドルと気が合いそうだったって言ってたなぁ……。
などと、エレオノールも現実から逃避をしていたのであったーーーー。
ある日。国王夫妻に呼び出された双子は、耳にした言葉を首を傾げながら口にした。
「……隣国の名前だぞ?サラの故郷をまさか知らなかった……なんて言わないよな、二人とも?」
にっこりと笑うレンドルの目は笑っていない。
「「…………」」
双子はそっと視線を合わせないようにずらした。
「レーオー?エーレー?」
「いや、うん。もちろん、知ってるよ!サラ姉様のいた国だもん。ね?」
「そうだよ。隣国の名前ぐらいは覚えてるよ!ね?」
レンドルの声に双子はそう答えて、互いの顔を見合わせて頷き合う。
「…そうだろうとも♪例えお前達が勉強を嫌がって、討伐に逃げていたとしても、この程度は知っているはずだ……」
レンドルはテーブルの上に肘をついた手に顎を乗せてニヤリと笑った。
「グラシアの国王陛下はサラの伯父に当たる方だが、名前ぐらいはちゃあんと言えるだろ?言ってごらん、二人とも♪」
あ。これ、バレてるやつだ…………。
「「ごめんなさいっ!分かりません!!」」
双子は素直に謝った。
「はぁ…。お前達は本当に…」
溜息をついたレンドルは、後ろに控えていたハンニバルを手招いた。
「バル。出発までに双子に国名と最低限の王族を教えこんでくれ…」
「畏まりました……」
深々と頭を下げるハンニバルに対し、双子ー特にレオノーラは無言で首を左右に振った。
「……レオ。諦めて一緒に覚えようね……」
エレオノールに肩を叩かれて、レオノーラはガックリと大きく肩を落としたのだったーーーー。
※※※※※※※※※※
『干渉世界』は正確な大きさが不明とされる世界であった。
住む種族はで多々あれど、人族領と魔族領に分かれていて、人族領には主に人族が暮らし、無数の国家を作っていた。
対して魔族領にはそれ以外の種族が集まり、もっとも魔力が強く、寿命の長い者が魔王として選ばれ、魔族領を治めていた。ここ数百年は純粋な魔族から王が選ばれている。
「………詐欺だ………。隣国だけ覚えろって言ってたのに、存在してる国が全部隣国だなんて……」
渡された地図を見ながら、エレオノールは頭を抱えた。
「あー、今すぐ結婚したい……。結婚して魔族領逃げ込みたい……」
レオノーラの婚約者は魔族領の王太子のガディルだ。魔族は一方が人族領と繋がっている以外は、周りは【果ての霧】に囲まれている。
【果ての霧】は『干渉世界』を包み込むように存在していて、そこへ入ってもすぐに元の場所に戻される。それ以上、進むことなく、何度繰り返しても何度も戻されるために【果ての霧】と呼ばれるようになったらしい。
現在、双子の住む国はヒューゲル王国だ。人族領の国は全て、王族の家名がそのまま国名となっている。
ヒューゲル王国は魔族領と隣接している唯一の人族領であり、人族領の中でも最大の国であった。そのため、他国はヒューゲル王国と隣接しつつ、互いに重なり合う国境以外は、魔族領同様に【果ての霧】に囲まれている。
「……魔族領行っても、王族に嫁ぐんだから、結局覚える羽目になるんじゃね?」
「はうっ!」
アルテの指摘にレオノーラは呻いて胸を押さえた。
「あっ!でも、すぐに魔王になるわけじゃ「魔王様、お前らが結婚したら早々に引退して、悠々自適な旅に出るとか言ってたぞ?」」
「陛下ぁぁぁぁっ!!」
頭を抱えて絶叫する姉を横目に、
そう言えばお茶目な魔王様でレンドルと気が合いそうだったって言ってたなぁ……。
などと、エレオノールも現実から逃避をしていたのであったーーーー。
10
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

聖女の娘に転生したのに、色々とハードな人生です。
みちこ
ファンタジー
乙女ゲームのヒロインの娘に転生した主人公、ヒロインの娘なら幸せな暮らしが待ってると思ったけど、実際は親から放置されて孤独な生活が待っていた。

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる