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第六章 五十歩百歩
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[エレオノール視点]
「エレ。今日もよろしくクパッ」
昨日から寝る時には、私の所に現れる神獣きんちゃんは、今夜もやって来ました。
何故レオでなく私の所かと尋ねると、
「レオは王子が一緒に寝たがってるクパッ。武士の情けなんだクパ…」
武士の情け…。何となく意味が分かるので、あちらの世界の言葉でしょう。
いや、それよりも。婚姻前なのに、一緒に寝たがってるってダメですよ!
ところがそれは人族のお話で、魔族は、婚姻前でも婚約してたら問題ないとか。寧ろ、相性が早めに分かって良いそうです。
いやでも、レオは人族なんですけど!あと、何の相性なのっ!?
「ですが、既にレオ様は殿下のお手つきな上、番になられたようですので…」
「番って何ですか?」
ラムダスさんの言葉に質問すると、飛んでもない話が返ってきました。
魔族の番とは、互いの体液交換を行い、同調できた場合のみ成立するという、滅多に成功例がない契約なのだそうです。
しかも両者の同意がなければ、子供も出来ないとか。
お揃いで体のどこかに番としての印も浮かぶのだとか。
「……レオからそんな話は聞いてないんですけど…」
「変ですね?世話をしている侍女からは、印があったと報告を受けておりましたが…」
「…それ。レオに見えない場所にあんじゃね?」
話を聞いていたアルテの言葉に納得しました。
レオ。お風呂も侍女さん達が乱入するって、涙目でしたもんね……。
「ん?お揃いでってことは、殿下にもあるって事だよね?つまり、レオと同じ場所に殿下にもあると…」
『………』
私達は顔を見合わせるなり、ニヤリと笑いました。
「ちょうど近くに温泉がございます。エレ様と殿下で入られては?案内致しますよ?」
「あ。護衛はオレが行きましょう♪」
こうして、無理やりレオから引き離し、私達は殿下を連れて温泉へと向かったわけでーー。
「……義兄上は、立派な体をされてますね……」
ラムダスさんが上手く誘導して、温泉に来ました。
入るのは私と殿下の二人。後の二人は護衛として温泉の周囲を見張っています。
色白の細長い私と違って、褐色肌の殿下の体つきは、男から見ても憧れてしまうほど引き締まっており、腹筋に至っては…………。うん。私はまだ間に合う…。間に合うから、大丈夫……なハズ……。
「…エレは細身だが、剣も使えるのではないか?」
鬱々と考え込んでいると、そう声をかけられました。
「あ、はい。レオほどではありませんが、私も多少は使えますね…」
《強化》魔法使っても、レオには勝てないけど……。まあ、《魔力操作》は私の方が上だし……。
いいんだ。私はしょせん『聖女』なんだから…。
「エレは普段から《強化》魔法を使っているのだろう?訓練の時は使わない方が筋力は付きやすいぞ?」
「え?」
「え?」
「「……」」
気まずさに顔を背ける。そして、言われて思い出した。『聖女』として性別をごまかすために、筋力を余りつけないようにしていたことを……。
「ま、まあ、あれだ!エレはまだ成長中なんだ。これから、筋力を付ければ大丈夫だろ!!……多分」
最後の方で何か言われた気がしたけれど、まだ間に合うと言われホッとした。
「さて。逆上せる前にそろそろ上がるか…」
そう言って、私の目の前に背を向けて歩く殿下の姿が……。
「っ!!」
湯から上がる殿下の腰に巻かれたタオル。その少し上に黒い蝶の模様が、はっきりとありました。
つまり、レオはもう殿下とそういう関係で間違いないと…………。
同じ日に婚約したはずなのに、自分は婚約者とキス止まり。一方の姉は既に婚約者の手中の珠。
確か、レオのいた世界ではこんな言葉がありましたよね。
五十歩百歩……。私と姉の差はそれくらいなのでしょう……。
後日、レオの前でその言葉を口にすると、
「え?それ、似たりよったりって意味だよ?『五十歩逃げても百歩逃げても同じだろ』って感じで……。差が開いてるって言うのなら、『月とスッポン』とか『天地の差』とか言ってたかな?」
レオの世界の言葉は難しすぎますっ!!
「エレ。今日もよろしくクパッ」
昨日から寝る時には、私の所に現れる神獣きんちゃんは、今夜もやって来ました。
何故レオでなく私の所かと尋ねると、
「レオは王子が一緒に寝たがってるクパッ。武士の情けなんだクパ…」
武士の情け…。何となく意味が分かるので、あちらの世界の言葉でしょう。
いや、それよりも。婚姻前なのに、一緒に寝たがってるってダメですよ!
ところがそれは人族のお話で、魔族は、婚姻前でも婚約してたら問題ないとか。寧ろ、相性が早めに分かって良いそうです。
いやでも、レオは人族なんですけど!あと、何の相性なのっ!?
「ですが、既にレオ様は殿下のお手つきな上、番になられたようですので…」
「番って何ですか?」
ラムダスさんの言葉に質問すると、飛んでもない話が返ってきました。
魔族の番とは、互いの体液交換を行い、同調できた場合のみ成立するという、滅多に成功例がない契約なのだそうです。
しかも両者の同意がなければ、子供も出来ないとか。
お揃いで体のどこかに番としての印も浮かぶのだとか。
「……レオからそんな話は聞いてないんですけど…」
「変ですね?世話をしている侍女からは、印があったと報告を受けておりましたが…」
「…それ。レオに見えない場所にあんじゃね?」
話を聞いていたアルテの言葉に納得しました。
レオ。お風呂も侍女さん達が乱入するって、涙目でしたもんね……。
「ん?お揃いでってことは、殿下にもあるって事だよね?つまり、レオと同じ場所に殿下にもあると…」
『………』
私達は顔を見合わせるなり、ニヤリと笑いました。
「ちょうど近くに温泉がございます。エレ様と殿下で入られては?案内致しますよ?」
「あ。護衛はオレが行きましょう♪」
こうして、無理やりレオから引き離し、私達は殿下を連れて温泉へと向かったわけでーー。
「……義兄上は、立派な体をされてますね……」
ラムダスさんが上手く誘導して、温泉に来ました。
入るのは私と殿下の二人。後の二人は護衛として温泉の周囲を見張っています。
色白の細長い私と違って、褐色肌の殿下の体つきは、男から見ても憧れてしまうほど引き締まっており、腹筋に至っては…………。うん。私はまだ間に合う…。間に合うから、大丈夫……なハズ……。
「…エレは細身だが、剣も使えるのではないか?」
鬱々と考え込んでいると、そう声をかけられました。
「あ、はい。レオほどではありませんが、私も多少は使えますね…」
《強化》魔法使っても、レオには勝てないけど……。まあ、《魔力操作》は私の方が上だし……。
いいんだ。私はしょせん『聖女』なんだから…。
「エレは普段から《強化》魔法を使っているのだろう?訓練の時は使わない方が筋力は付きやすいぞ?」
「え?」
「え?」
「「……」」
気まずさに顔を背ける。そして、言われて思い出した。『聖女』として性別をごまかすために、筋力を余りつけないようにしていたことを……。
「ま、まあ、あれだ!エレはまだ成長中なんだ。これから、筋力を付ければ大丈夫だろ!!……多分」
最後の方で何か言われた気がしたけれど、まだ間に合うと言われホッとした。
「さて。逆上せる前にそろそろ上がるか…」
そう言って、私の目の前に背を向けて歩く殿下の姿が……。
「っ!!」
湯から上がる殿下の腰に巻かれたタオル。その少し上に黒い蝶の模様が、はっきりとありました。
つまり、レオはもう殿下とそういう関係で間違いないと…………。
同じ日に婚約したはずなのに、自分は婚約者とキス止まり。一方の姉は既に婚約者の手中の珠。
確か、レオのいた世界ではこんな言葉がありましたよね。
五十歩百歩……。私と姉の差はそれくらいなのでしょう……。
後日、レオの前でその言葉を口にすると、
「え?それ、似たりよったりって意味だよ?『五十歩逃げても百歩逃げても同じだろ』って感じで……。差が開いてるって言うのなら、『月とスッポン』とか『天地の差』とか言ってたかな?」
レオの世界の言葉は難しすぎますっ!!
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