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第六章 五十歩百歩
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[エレオノール視点]
「元の場所に戻して来なさい…」
「ポイして来い!ポイ!!」
「…何でそんなモンに懐かれた……」
討伐中の中休み。ちょっと散歩してくると出かけたレオが拾ってきた物を見るなり、みんながそう言った。
みんなの口調が、ちっちゃい子に言い聞かせてるみたいなんだけど…。
しかも、犬猫拾ってきた子供と反対する大人的構図である。
「えー。こんなに可愛いのにぃ…」
『可愛い……?』
みんなの視線が、レオの腕の中にいるそれに集まる。
拾ってきたのが子犬や子猫など、小動物なら理解出来る。
だが、レオが拾ってきたのは、見たことの無い黄金色の生き物で、オリクスの《鑑定》でも何なのか分からないという。
猟犬サイズで金色のトカゲのような姿をしていて、顔の周りにトゲのようなものがうねうねと生えている。
「《鑑定》で分かったのは、【個体名】『きんちゃん』って事なんだ……」
オリクスもなんとも言えない顔だ。
「だーい丈夫だってば…。この子、大人しいし、こっちの言うこと理解してるもん。ね?」
レオが声をかけると、ブンブンとシッポが振られる。
「いやいや。魔物かもしんねえだろうがっ!」
「大丈夫だって。この子、さっき打撃蝶、パクパク丸呑みしてたし♪」
『はああぁっ!?』
みんな一斉にその生き物を見た。お腹ら辺が黒いのは、食べた魔物がいるからなのだろうか……。
そもそも魔物を食べる魔物なんか聞いたこともないし。
「【個体名】って事は、君の名前は『きんちゃん』でいいんだよね?」
レオがそう尋ねた時だった。
「クパァ♪」
『……………』
返事をするようにその生き物が発した鳴き声の余りの可愛らしさに、私もみんなも開いた口が塞がらなかった。
え?何、今の?鳴き声?鳴き声なの!?
「うっわぁ。可愛い声で泣くんだね、きんちゃん♪」
「クーパァ♪」
「アハハ。どっかのアニメみたい♪」
抱きしめて喜びながら、レオはあちらの世界の言葉を発している。
「っ!クパッ!!」
突然、体色が濃くなり、レオの腕から飛び出たと思った瞬間だった。
「クーパーアーーッ!!」
頭上から舞い降りてきた暗黒鴉の群れに向かい、パカリと大口を開けた瞬間、ヒュッとその中に吸い込んだ。
「……クパ…」
『………………』
満足そうにしているが、私達はどうすればいいのか分からない。
数十匹はいたであろう、それらを一呑みされてしまったのだ。
「……ね。問題ないでしょ?」
レオの言葉に反論出来る者は現れなかったーーーー。
※※※※※※※※※※
一方、その頃の神界では、御影が慌てて戻ってきていた。
「いなくなった……」
担当世界から戻るなり、この世の終わりのような顔でそう言う御影に、三人は首を傾げた。
「いなくなったって……。誰が?」
「え?あそこから出れたの?何で!?」
「ちょ、ヤバくね?」
ふと思い当たる内容に、三人の顔色が変わった。
「…何処にもいないの……。誰かに連れてかれたのかな?あんなに可愛いんだもん……」
「「「んん?」」」
続く御影の言葉に三人は何がいなくなったのかを把握した。把握した瞬間、血の気が引いた気がした。
「え、まさか全部?全部いなくなったとか言わないよね?」
「いやいやいやいや…。それ、ダメなやつっしょ!」
「御影。どれがいなくなったんだ?」
三人の不安げな視線が御影に集まる。
「…ちゃんが……。ゴールデンのきんちゃんがいなくなってるーっ!!」
切実な声で訴える御影に三人の視線は生温い。
「よりにもよって、そいつか…」
「きんちゃん。一番愛嬌あるからねぇ…」
「下手に知恵付いてるから、めんどいんだよなぁ……」
「みんな、うちの子にひどいぃっ!」
普段は落ち着いている御影だが、己の神獣としている存在に関しては、残念仕様となる。
「「「腐っても神獣……」」」
「腐ってないわよ!腐ってないんだからね!!」
「いや。何だかんだ言っても、神獣なんだから、どっかで無事なんじゃないかなぁ?」
「まあ。あいつ、無駄に賢いしな……」
「どっかの世界にでも落ちてたりしてな♪」
最後のチュンタの発言に、全員が静かになる。
「……余計なフラグを…」
「お前、回収係な!」
「…チュンタァ……?」
殺気の籠った視線が集まる。
「えーと。最近、降臨しやすくなってる世界から確認して行きまーす…」
この確認作業を始めて数分後。件の神獣は発見され、全員が頭を抱えることになるーーーー。
「元の場所に戻して来なさい…」
「ポイして来い!ポイ!!」
「…何でそんなモンに懐かれた……」
討伐中の中休み。ちょっと散歩してくると出かけたレオが拾ってきた物を見るなり、みんながそう言った。
みんなの口調が、ちっちゃい子に言い聞かせてるみたいなんだけど…。
しかも、犬猫拾ってきた子供と反対する大人的構図である。
「えー。こんなに可愛いのにぃ…」
『可愛い……?』
みんなの視線が、レオの腕の中にいるそれに集まる。
拾ってきたのが子犬や子猫など、小動物なら理解出来る。
だが、レオが拾ってきたのは、見たことの無い黄金色の生き物で、オリクスの《鑑定》でも何なのか分からないという。
猟犬サイズで金色のトカゲのような姿をしていて、顔の周りにトゲのようなものがうねうねと生えている。
「《鑑定》で分かったのは、【個体名】『きんちゃん』って事なんだ……」
オリクスもなんとも言えない顔だ。
「だーい丈夫だってば…。この子、大人しいし、こっちの言うこと理解してるもん。ね?」
レオが声をかけると、ブンブンとシッポが振られる。
「いやいや。魔物かもしんねえだろうがっ!」
「大丈夫だって。この子、さっき打撃蝶、パクパク丸呑みしてたし♪」
『はああぁっ!?』
みんな一斉にその生き物を見た。お腹ら辺が黒いのは、食べた魔物がいるからなのだろうか……。
そもそも魔物を食べる魔物なんか聞いたこともないし。
「【個体名】って事は、君の名前は『きんちゃん』でいいんだよね?」
レオがそう尋ねた時だった。
「クパァ♪」
『……………』
返事をするようにその生き物が発した鳴き声の余りの可愛らしさに、私もみんなも開いた口が塞がらなかった。
え?何、今の?鳴き声?鳴き声なの!?
「うっわぁ。可愛い声で泣くんだね、きんちゃん♪」
「クーパァ♪」
「アハハ。どっかのアニメみたい♪」
抱きしめて喜びながら、レオはあちらの世界の言葉を発している。
「っ!クパッ!!」
突然、体色が濃くなり、レオの腕から飛び出たと思った瞬間だった。
「クーパーアーーッ!!」
頭上から舞い降りてきた暗黒鴉の群れに向かい、パカリと大口を開けた瞬間、ヒュッとその中に吸い込んだ。
「……クパ…」
『………………』
満足そうにしているが、私達はどうすればいいのか分からない。
数十匹はいたであろう、それらを一呑みされてしまったのだ。
「……ね。問題ないでしょ?」
レオの言葉に反論出来る者は現れなかったーーーー。
※※※※※※※※※※
一方、その頃の神界では、御影が慌てて戻ってきていた。
「いなくなった……」
担当世界から戻るなり、この世の終わりのような顔でそう言う御影に、三人は首を傾げた。
「いなくなったって……。誰が?」
「え?あそこから出れたの?何で!?」
「ちょ、ヤバくね?」
ふと思い当たる内容に、三人の顔色が変わった。
「…何処にもいないの……。誰かに連れてかれたのかな?あんなに可愛いんだもん……」
「「「んん?」」」
続く御影の言葉に三人は何がいなくなったのかを把握した。把握した瞬間、血の気が引いた気がした。
「え、まさか全部?全部いなくなったとか言わないよね?」
「いやいやいやいや…。それ、ダメなやつっしょ!」
「御影。どれがいなくなったんだ?」
三人の不安げな視線が御影に集まる。
「…ちゃんが……。ゴールデンのきんちゃんがいなくなってるーっ!!」
切実な声で訴える御影に三人の視線は生温い。
「よりにもよって、そいつか…」
「きんちゃん。一番愛嬌あるからねぇ…」
「下手に知恵付いてるから、めんどいんだよなぁ……」
「みんな、うちの子にひどいぃっ!」
普段は落ち着いている御影だが、己の神獣としている存在に関しては、残念仕様となる。
「「「腐っても神獣……」」」
「腐ってないわよ!腐ってないんだからね!!」
「いや。何だかんだ言っても、神獣なんだから、どっかで無事なんじゃないかなぁ?」
「まあ。あいつ、無駄に賢いしな……」
「どっかの世界にでも落ちてたりしてな♪」
最後のチュンタの発言に、全員が静かになる。
「……余計なフラグを…」
「お前、回収係な!」
「…チュンタァ……?」
殺気の籠った視線が集まる。
「えーと。最近、降臨しやすくなってる世界から確認して行きまーす…」
この確認作業を始めて数分後。件の神獣は発見され、全員が頭を抱えることになるーーーー。
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