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第六章 五十歩百歩
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[エレオノール視点]
「……あれ?レオがいない?」
起きて食事の席に付くと、レオがまだ来ていなかった。
アルテ達を見ると、彼らも知らないと首を振る。
朝から豪勢な食事が並べられ、それでもレオは現れなくて、呼びに行こうと立ち上がった。
「如何されました?」
昨日、レオを案内していた侍女さんに声をかけられた。
「あ…。いえ、姉を食事に呼ばないとと思いまして…」
私の言葉に、侍女さんも周りの給仕の皆さんもにっこりと笑った。
「レオノーラ様は、殿下と共に食べられますので、エレオノール様は皆様方とこちらでお召し上がりくださいませ」
「……あ。はい……」
笑顔で押し切られ、その迫力に引くしか無かった。
魔族領の侍女、怖い……。
食後の打ち合わせで判明した全員の感想がこれである。
明日からの討伐の確認や装備の話をしていると、レオがやって来たのは夕方だった。
「あ、レオ「エレーッ!!」」
突然、抱きつかれて混乱する。が、それ以上に周りも混乱していた。
「……どうしたの、その格好……」
いつもの討伐の時に着ている騎士服ではなく、女性用のドレスを着ている。
しかも胸元は強調され、背中もかなり際どいとこまで開いていて、まあそれは流したまんまの髪で大半隠れていたけれど、何と言うか色気出しまくりなドレスに見えた。
白のドレスに金と銀の刺繍が入っていて、重そうだなぁ…なんて見てしまった。
「今日は討伐がないんだからって、侍女さん達に着せられた……」
「《空間収納》に他の着替え入れてなかったっけ?」
「……着替えようとしたんだけど、侍女さん達が不手際があったって死んでお詫びするとか言うんだもん……」
「そ、それは無理だよね……」
「それで…。明日からの予定は?」
何の討伐もしてないのに、完全に疲れているらしいもレオが尋ねてくる。
いや、そもそもレオは討伐でそうそう疲れたことなんかないわけで。それを考えるとーー。
やっぱり魔族領の侍女怖い……。
「とりあえず、近場の方から片付け「遠くから行こう!遠くからこっちに戻るようにして、さっさと帰ろう!!」」
オリクスの言葉に食い気味でレオがそう言うと、皆は何とも言えない顔になった。
レオ……。そんなに魔王城にいたくないんだ…。そうか、そんなに怖いんだ、侍女さん達が……。
鬼気迫るレオの様子に、急遽予定を変更し、遠方からを私達が。
こちらからを殿下達が討伐して行くことになった。
「それじゃあ、明日の朝は早いから、今日はエレの『お迎えに上がりました、レオノーラ様!』」
打ち合わせが終わると同時に、侍女さん達が現れた。
「……っ……」
レオは涙目になって、私達を見ている。
「さあ、レオノーラ様。しばらく野営になるのでしたら、肌と髪のお手入れをしっかりとしておきませんと♪」
「そうですわ、レオノーラ様。明日からは大変でしょうから、本日はしっかりとお休みになりませんと♪」
笑っているのに物凄い圧力をかけながら、侍女さん達がレオを囲んでいく。
「あ~。なんだ…。お休み、レオ。また明日な……」
アルテの視線を逸らしながら発した言葉に、皆が次々と続いていく。
「エレッ!」
「……うん。お休み、レオ。明日から頑張ろうね…」
「…は、薄情者ーーーっ!!」
「皆様、お休みなさいませ♪」
「さあ、参りますわよ、レオノーラ様!」
「腕がなりますわぁ♪」
イヤイヤと首を振りながらも、がっちりと両脇を押さえ込まれ、周りを囲まれたレオは連れていかれた。
ごめんね、レオ。
僕達も侍女さん達は怖いから……。
レオはいずれ、魔王城に住むんだから、早く慣れないと行けないからさ……。
「……あれ?レオがいない?」
起きて食事の席に付くと、レオがまだ来ていなかった。
アルテ達を見ると、彼らも知らないと首を振る。
朝から豪勢な食事が並べられ、それでもレオは現れなくて、呼びに行こうと立ち上がった。
「如何されました?」
昨日、レオを案内していた侍女さんに声をかけられた。
「あ…。いえ、姉を食事に呼ばないとと思いまして…」
私の言葉に、侍女さんも周りの給仕の皆さんもにっこりと笑った。
「レオノーラ様は、殿下と共に食べられますので、エレオノール様は皆様方とこちらでお召し上がりくださいませ」
「……あ。はい……」
笑顔で押し切られ、その迫力に引くしか無かった。
魔族領の侍女、怖い……。
食後の打ち合わせで判明した全員の感想がこれである。
明日からの討伐の確認や装備の話をしていると、レオがやって来たのは夕方だった。
「あ、レオ「エレーッ!!」」
突然、抱きつかれて混乱する。が、それ以上に周りも混乱していた。
「……どうしたの、その格好……」
いつもの討伐の時に着ている騎士服ではなく、女性用のドレスを着ている。
しかも胸元は強調され、背中もかなり際どいとこまで開いていて、まあそれは流したまんまの髪で大半隠れていたけれど、何と言うか色気出しまくりなドレスに見えた。
白のドレスに金と銀の刺繍が入っていて、重そうだなぁ…なんて見てしまった。
「今日は討伐がないんだからって、侍女さん達に着せられた……」
「《空間収納》に他の着替え入れてなかったっけ?」
「……着替えようとしたんだけど、侍女さん達が不手際があったって死んでお詫びするとか言うんだもん……」
「そ、それは無理だよね……」
「それで…。明日からの予定は?」
何の討伐もしてないのに、完全に疲れているらしいもレオが尋ねてくる。
いや、そもそもレオは討伐でそうそう疲れたことなんかないわけで。それを考えるとーー。
やっぱり魔族領の侍女怖い……。
「とりあえず、近場の方から片付け「遠くから行こう!遠くからこっちに戻るようにして、さっさと帰ろう!!」」
オリクスの言葉に食い気味でレオがそう言うと、皆は何とも言えない顔になった。
レオ……。そんなに魔王城にいたくないんだ…。そうか、そんなに怖いんだ、侍女さん達が……。
鬼気迫るレオの様子に、急遽予定を変更し、遠方からを私達が。
こちらからを殿下達が討伐して行くことになった。
「それじゃあ、明日の朝は早いから、今日はエレの『お迎えに上がりました、レオノーラ様!』」
打ち合わせが終わると同時に、侍女さん達が現れた。
「……っ……」
レオは涙目になって、私達を見ている。
「さあ、レオノーラ様。しばらく野営になるのでしたら、肌と髪のお手入れをしっかりとしておきませんと♪」
「そうですわ、レオノーラ様。明日からは大変でしょうから、本日はしっかりとお休みになりませんと♪」
笑っているのに物凄い圧力をかけながら、侍女さん達がレオを囲んでいく。
「あ~。なんだ…。お休み、レオ。また明日な……」
アルテの視線を逸らしながら発した言葉に、皆が次々と続いていく。
「エレッ!」
「……うん。お休み、レオ。明日から頑張ろうね…」
「…は、薄情者ーーーっ!!」
「皆様、お休みなさいませ♪」
「さあ、参りますわよ、レオノーラ様!」
「腕がなりますわぁ♪」
イヤイヤと首を振りながらも、がっちりと両脇を押さえ込まれ、周りを囲まれたレオは連れていかれた。
ごめんね、レオ。
僕達も侍女さん達は怖いから……。
レオはいずれ、魔王城に住むんだから、早く慣れないと行けないからさ……。
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