上 下
49 / 110
第五章 そして新たな神話が生まれた

しおりを挟む
[エレオノール視点]

   とりあえず、眠ってしまったエマは、サラ姉様とグイードに部屋に連れて行かれ、一人がけのソファに移動した女神様の右側のソファに私と新大神殿長。左側のソファにレオとガディル殿下。そして、女神様の正面にレン兄様が座ることになった。

「………誰か、変わってくれ……」

   ボソリと呟くレン兄様の声は、男三人聞こえないふりをした。

「そこが嫌なら、私が変わ「いや、ここでいいぞぉ!ここがいい!!」」

    レオの発言に被せるように答えるのは、真横よりは、離れている正面の方がいいと判断したんだろう。

    でも、正面は丸見えなんだけどね……。

「さてと。本題に入ろうか?」

    女神様の言葉に、全員が顔を上げて女神様を見た。

「とりあえず何か質問あるなら、答えますけど?」

    大広間で見た時の神々しさが消えて、ものすごく話しかけやすい普通の女の人・・・・・・みたいな感じになっている。

「…その構いませぬでしょうか?」

    新大神殿長が恐る恐る手を挙げた。

「構いませんよ。あと、楽に話してくれて大丈夫です」

    にっこり笑ってそう言われても、女神様相手に楽に話すって出来る訳もなく……。

「その…。レオノーラとは面識がおありでしたか?」

    その言葉に二人は顔を見合わせると、新大神殿長の方を向いた。

「ないですよ」
「無いよ」

   二人同時にそう言った後、レオが続けた。

「私は生まれ変わる前に創造神に会っただけ・・・・・で、それからは声も聞いてないもん!」

「「「…生まれ変わる前?」」」

    私以外の三人が反応する。
    そういえば、レオが『転生者』って知ってるの私だけだっけ?いや、レン兄様も知ってるよね?昔、皆で話聞いたよね?

    ジッと見てたら、その事を思い出したらしく、気まずそうに視線を逸らされた。

「いや、お前……。創造神様に会ったなどと、そんな簡単に……」

「自殺考えてた時に『新しい人生を自分で決めてみませんか?』って、声かけられたんだよねぇ……」

『はあっ!?』

    そこにいた全員ー女神様も含むーが驚いてレオを見た。

「えっと……。まさかとは思うんだけど……」

「あ。自殺考えてただけで、死ぬ前に拉致られたんで大丈夫ですよ?」

    女神様の問いに、あっけらかんと答えるレオ。

「……聞いてない……」

    ポツリと呟く女神様から一瞬、冷たい気配が満ちて消える。

「良かったら、向こうの私がどんな扱いになったのかだけ、確認しといてもらえますか?」

「…分かったわ。すぐに確認してくれると思う…。えーっと、何だっけ?私とは面識はないんだけど、創造神とは面識があるってことで良かったのかしら?」

「はい。つまり、レオは生まれた時から既に『勇者』と決まっていたということでよろしいでしょうか?」

「決まっていたんじゃなくて、決めさせてもらったよ?『聖女』は嫌だって言って、変えてもらったの」

「「は?」」

    新大神殿長とガディル殿下が、レオを見てる。そうだよね、私達しか知らない話だった。新大神殿長にも話してなかったもんね。

   そこからレオの説明で、本来は私が『勇者』だったこと。レオと入れ替えた際に、『聖女』を『聖者』に変更し忘れたことを女神様の補足を入れながら説明された。

「……それは正しく、神とて間違うということでございますな……」

「…お前、本当は『聖女』だったのか……」

   納得した新大神殿長と、呆れているガディル殿下。そこで、レン兄様が口を開いた。

「レオと貴女様は面識が無かったと仰ったが……。その、知り合いのように見えたのですが…」

「「………」」

   女神様はレオと見つめ合うと、肩を竦めた。

「あー、私も元は彼女と同じ世界で同じ国の出だからねぇ……」

「そう、それ!何で神様になっちゃってるか、聞きたかったの!?」

    そこから女神様の他に、同じような仲間が三人いると聞かされ、創造神によって我々の世界とは別の世界を管理していると聞かされた。

「そもそも、ディーのせいで死んじゃったからねぇ、私ら……」

    サラリと言われても困る。  

「で、色々あって、ディーを手伝うために眷属として転生したのよね。………おかげで永久ブラック企業に就職したけど……」

    最後の微かな呟きの意味は分からなかったけど、レオがものすごく気の毒そうに見てたので、聞かなかったことにする。

「で?他にも用があるから、ここにいるんでしょ?」

    レオは動じることなく、淡々と質問する。レオの中では、女神様は女神様でなく、ただの同郷の女性なんだろうな……。

「そうそう。それが本題なの。ディーの名前が正しく伝わってないせいで、あのおバカさん達の不正に気づけなかったのよね。だから、本当は本人に降臨させようと思ったんだけど…」

   フッと空気が重くなった気がした。

「あんのヘタレ……。『人が殺されかけてるとこに行って、落ち着いて話す自信はないです!』って、言い張ってくれちゃってねぇ……。それで私が来ることになったわけなんだけど……」

    ハッと投げやりに笑われても困る。

「新大神殿長には申し訳ないのですが、正しく・・・彼の名前を伝え直していただきたいのです。何しろ、彼は色々…、残念なので……」

「あー。残念が過ぎるもんねぇ…」

    右手で顔を覆いながら話す女神様に、苦笑するレオ。

    残念な神様に創られた世界にいるんだ、私達…………。

「それは…宜しいのですが。ならば、しばらくは決まった時に〖神の奇跡〗をお願いしたいです……」

「…ああ。確かにそれは効果的ですね。正しく・・・神の名であるからこそ、神に言葉が届く証明になりそうですね…。分かりました。神殿で神像に祈る時に、創造神の名を呼んで呼びかけてください。《神託オラクル》で話せるようにしておきますから」

   そうして、翌日から新大神殿長は、最も忙しい人となったーーーー。



********
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
作者、体が老化現象により、予定通りに更新進んでないのをお詫びします。

若いうちのツケは、歳とってから全部来るって本当だったと、後悔している日々です。

ですが、頑張りますので、このおばさん、仕方ねえなぁと気長にお待ちくださいますよう、お願いします。


  
しおりを挟む
感想 10

あなたにおすすめの小説

お嬢様はお亡くなりになりました。

豆狸
恋愛
「お嬢様は……十日前にお亡くなりになりました」 「な……なにを言っている?」

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました

さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。 私との約束なんかなかったかのように… それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。 そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね… 分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!

暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい! 政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。

恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。 キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。 けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。 セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。 キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。 『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』 キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。   そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。 ※ゆるふわ設定 ※ご都合主義 ※一話の長さがバラバラになりがち。 ※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。 ※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。

絶対に間違えないから

mahiro
恋愛
あれは事故だった。 けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。 だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。 何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。 どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。 私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

処理中です...