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第五章 そして新たな神話が生まれた

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[レオノーラ視点]

「この場は預からせていただきましょう……」

   頭上から女の人の声が聞こえたと思ったら、ふわりと目の前に降りてきた。

    そう文字通り降りて・・・きたのだ。

『…………』

    女の人から溢れ出る気配と力に、誰もが自然と膝を付いていく中、私とエレだけが立っていた。

「……私は創造神ディアル・マディルに仕える神の一人。名はミカナ・ゲオナ……」

    長い黒髪に銀の混じった不思議な青い瞳をしたその人は、向こうの世界でギリシア神話の神様が着てるような衣装を身につけていた。

「…ディアル・マディル?創造神様の名前は、ディマ様では……?」

    大神官様が首を傾げていると、女神様はそちらを向いた。

「それは長い歴史の中で、正しく伝わっていなかったようですね。ですが、かの神はご自身も間違うことがあるが故に、その事にお怒りになる事はありません……」

  「…神ご自身も間違うことがある…。そう申されるのですか?」

    恐れ敬いながらも会話をする大神官様。そして、最高位であるはずの大神殿長は、水揚げされた魚のように口をパクパクさせてるだけだった。

「そうです。そちらの『聖女』を正しく理解していれば分かるはずです…」

    女神様の手が、エレへと差し伸べられました。

「エレオノール。かの神は己が間違いのせいで、貴方に多大な迷惑をかけたことを申し訳なく思われていらっしゃいます。ですが、『聖女』から『聖者』への変更は叶いません。それは世界の断りに歪みを産むからです…」

    女神様の言葉に、誰もが耳を傾けている。

「ですので、せめてもの詫びとして、装備品は『聖者』や『神官』関係の物を使えるようにさせて下さい」

    女神様がパチンと指を鳴らすと、エレの頭上から金色の光の粉が降り注いだ。

「これは…?」

「これからは【修道女の服】を着なくとも大丈夫ですよ」

    にっこり笑う女神様の言葉に、エレは跪きました。

「あ、ありがとうございます!」

    頭を下げて感謝を述べたエレに、女神様は頷き、次に大神殿長達に視線を向けました。

「…ところでかの神が定めた『勇者』と『聖女』が、神に仇なす者とはどういうことでしょうか?」

「ひいっ!お、お許しください!!」

    偽物『聖女』様は、涙で化粧が崩れて凄いことになってんだけど…。

「……これは何かの間違いだ…。そもそも創造神様の名前も違う!創造神様に仕える神がいるなど、どこにも記されていない!!貴様、神を名乗る不届き者かっ!?」

    これだけ溢れている気配と力を前に、そんなことを言うなど信じられません。

「…不届き者はお前でしょう?【聖杖】と『聖女』の偽物を用意して……。ああ、そうそう。とてつもない祝福を誰が誰から受けるのか、教えてもらいたいのだけど?」

 「なっ!何故、そのことを……」

「……何が不思議なの?今代はかの神が直々に選んだ『勇者』と『聖女』なのです。彼らに神の名を使い、害を及ぼそうとして我等に分からぬとでも思っていましたか?神殿での会話は全て知っていますよ…」

   口元に笑みを浮かべていますが、目が笑ってません。怖……。

「さて。かの神から今回の件に関わっていた不届き者達には職業の〖剥奪〗を命じられております。なので…〖剥奪〗!」

    女神様が掌を頭上に掲げると、そこから無数の光が飛び出し、偽物『聖女』やエレに倒された神官達の中に消えてった。

「『無職』となり、一からやり直しなさい!そして、大神殿長……」

    カツンと足音を立てて、大神殿長の前に立つ女神様。

「大神殿長でありながら神の名を騙り、随分と好き勝手していたようですね……」

    にっこりと笑いながらも、目は笑ってないばかりか気温がかなり下がった気がして、マジで怖い…。

「貴方には「くそぉっ!このようなこと、認めぬわあっ!!」」

    大神殿長が凄い形相で、女神様に飛びかかりました。

「なっ!」

   慌てて手を伸ばしたけど、間に合いそうにありません。

「喧しいわっ!」

   その言葉とともに、バシコーン!と小気味よい音が続きました。

「ごふっ」

    大神殿長は床に転がり、女神様の手には前の世界の人間なら、たいてい知っているだろうそれ・・が握られていました。

    ……何で、ハリセン出てきた?


    
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