双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

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第四章 思惑は絡み合って成立する

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「…………で?」

    にっこり笑って御影は、ティーカップに注がれていたミントティーを口にした。

「僕の撒いた種ですが、対応間違いたくないので、御協力をお願いします!!」

    チラリと向けた視線の先には、見事な土下座を披露しているディアルの姿があった。

「…どっちが神なのか怪しくなってきてんな……」

「言うな、チュンタ……。ハリセン食らうぞ……」

    部屋の片隅では男二人が、こそこそと話していた。
    そんな二人を横目に見ながら、干渉世界マニュアルなる物を読んでいた夢乃は、余裕あるなぁ…と呆れていた。
    ディアルが御影に泣きついているのである。
    そこからもたらされる事態は、緊急事態・・・・になるということを、彼らは忘れているのか、気付かないふりをしようとしているのか。とにかく、夢乃は呼び出された時点で御影に頼まれているのだ。

『あれは絶対に転生者関係でやらかしてるハズだから…』

   そう予想した御影は、夢乃に神界こちらから干渉世界あちらにどんな接触方法が決められているかの確認を頼んだのだ。

「それにしても、これ……。干渉世界って言うより、介入世界って言うんじゃないかなぁ…。まあ、そんなに意味変わんないけど…」

    創造された世界の名前が『干渉世界』。
    世界ができた頃、事ある毎にディアルが召喚、降臨は当たり前だったらしく、創造神を崇めている宗教は『ディマ教』一択らしい。 

「名前違うのが笑えるけど、容姿はディー君で間違いないし…。召喚条件も降臨条件もガバガバだから、対応はしやすいかなぁ…」

    チラリと御影達を見れば、そろそろ終わりそうな気配である。
    一息入れたら丁度頃合かと、席を立った。

「はあ!?創造神が間違いを起こしたりするはずないと言い張って、間違いは正さなけらばならないからって、偽物扱いして殺す気ですってぇ!?」

    御影の怒鳴り声とその内容に、三人はそちらを向いた。

「えー…。ディーのやつ、間違いだらけじゃんね……」

「それが神の教えだっつーなら、間違いなくディーの事じゃねえだろ……」
   
   男二人がウンウンと頷く中、夢乃は御影の側に立った。

「ナナちゃん。召喚条件も降臨条件もガバガバ設定だから、どんな対応もできるみたいだよ?」

「……ガバガバ………」

   夢乃の台詞に、御影は半目でディアルを見た。

「…………」

    その視線から逃げるように視線を反らせるディアル。

「最初の頃に比べると、ほとんど手ぇ出てないからね。ナナちゃんが出張っても大丈夫だよ♪」

「いや、何で私が出張るの?創造神はディーだからね!?」

「いや、眷属代表で行っちゃっていいんじゃね?」

「そもそも人の生死がかかってんだろう?ンなとこに、ディーが現れてのほほんと話して説得聴いてもらえんのか?」

「……人が殺されかけてるとこに行って、落ち着いて話す自信はないです!」

「「「「………」」」」

    きっぱりと胸を張って言い切ったディアルに、眷属達の視線は生暖かいものだったーーーー。




    

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