36 / 110
第四章 思惑は絡み合って成立する
5
しおりを挟む
「それでは例の品は予定通りに渡されたのだな?」
とある場所の一室に数人の老若男女が集まり、コソコソと話をしていた。
「もちろんでございます!これは成功させねばなりませんので、確実に儂が直接運びましたからな♪」
老人の言葉に男が頷く。
「あちらからの返答はどうなりましたの?」
女が男に訊ねる。
「全く問題ない。寧ろ、是非とも成功させて欲しいとのことだ……」
「それはようございました……」
年配の女がホッと息を漏らす。
「今から楽しみです♪」
少年がそう言うと、隣の少女は口を尖らせた。
「…いいなぁ。ワタシも慌てふためくところが見たかったなぁ…」
「それでは儂らと共に隠れて見ますかな?」
老人の言葉に、少女は顔を輝かせた。
「いいの?」
「もちろんでございます。仲間外れはよろしくございませんもの♪」
少女はキャーと歓声を上げて、年配の女に抱きついた。
「ですが、彼らの方はいかがですの?」
女の問いかけに、しんと室内が静まり返る。
「それは僕から…」
若い男が手を挙げる。
「表向きは問題ありませんが、裏ではやはり反対…というか、無かったことにしたいようですね。偽物だという方向で進めるようだと……」
「嘆かわしい。真実を捻じ曲げようなどと…」
女が首を振って、溜息をついた。
「ですが、あれだけ公に認められているのです。そちらはどうするつもりなのですか?」
少年の言葉に、若い男が頷いた。
「そちらの方も、偽物だったということにするつもりのようです。嘆かわしいことに複製品を用意しているそうですよ…」
「なるほど……」
男が苦笑する。
「だがあの子の話を聞く限り、有り得なくもないのだがな……」
「僕達もお話を伺うまでは信じられませんでしたが、実際存在してますからね。それを認められないからと、このような暴挙に出るなど…」
若い男がやれやれと首を振る。
「どうしますの?こちらは知らせます?」
女の言葉に全員の視線が男に集まる。
「……いや。知らせずとも問題ないだろう。寧ろ、どうなるか見てみたい♪」
ニヤリと笑う男に、全員が呆れて溜息をついたのだった。
※※※※※※※※
「例の品は滞りなく用意できたな?」
「もちろんでございます。扱える者も選出が済み、登録も終えてございます……」
でっぷりと肥太った男が、頭頂部が輝く男の言葉に満足気に頷いた。
「全く。あの様な存在が居るなど、冒涜以外の何者でもないと言うのに、誰も彼も情けのないことよ……」
「ええ。その通りでございます。選ばれた者も『正しき道に導く為に必要ならば、この身を捧げます』と申しております……」
「何と!それは素晴らしい!その者はとてつもない祝福を受けようぞ!!」
「はい、誠に……」
満足気に頷き合う男達は、自分達のその姿を見られていることにも気づかずに、話を続けるのであったーーーー。
**********
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
本日は夜にも、こちら更新予定です!
とある場所の一室に数人の老若男女が集まり、コソコソと話をしていた。
「もちろんでございます!これは成功させねばなりませんので、確実に儂が直接運びましたからな♪」
老人の言葉に男が頷く。
「あちらからの返答はどうなりましたの?」
女が男に訊ねる。
「全く問題ない。寧ろ、是非とも成功させて欲しいとのことだ……」
「それはようございました……」
年配の女がホッと息を漏らす。
「今から楽しみです♪」
少年がそう言うと、隣の少女は口を尖らせた。
「…いいなぁ。ワタシも慌てふためくところが見たかったなぁ…」
「それでは儂らと共に隠れて見ますかな?」
老人の言葉に、少女は顔を輝かせた。
「いいの?」
「もちろんでございます。仲間外れはよろしくございませんもの♪」
少女はキャーと歓声を上げて、年配の女に抱きついた。
「ですが、彼らの方はいかがですの?」
女の問いかけに、しんと室内が静まり返る。
「それは僕から…」
若い男が手を挙げる。
「表向きは問題ありませんが、裏ではやはり反対…というか、無かったことにしたいようですね。偽物だという方向で進めるようだと……」
「嘆かわしい。真実を捻じ曲げようなどと…」
女が首を振って、溜息をついた。
「ですが、あれだけ公に認められているのです。そちらはどうするつもりなのですか?」
少年の言葉に、若い男が頷いた。
「そちらの方も、偽物だったということにするつもりのようです。嘆かわしいことに複製品を用意しているそうですよ…」
「なるほど……」
男が苦笑する。
「だがあの子の話を聞く限り、有り得なくもないのだがな……」
「僕達もお話を伺うまでは信じられませんでしたが、実際存在してますからね。それを認められないからと、このような暴挙に出るなど…」
若い男がやれやれと首を振る。
「どうしますの?こちらは知らせます?」
女の言葉に全員の視線が男に集まる。
「……いや。知らせずとも問題ないだろう。寧ろ、どうなるか見てみたい♪」
ニヤリと笑う男に、全員が呆れて溜息をついたのだった。
※※※※※※※※
「例の品は滞りなく用意できたな?」
「もちろんでございます。扱える者も選出が済み、登録も終えてございます……」
でっぷりと肥太った男が、頭頂部が輝く男の言葉に満足気に頷いた。
「全く。あの様な存在が居るなど、冒涜以外の何者でもないと言うのに、誰も彼も情けのないことよ……」
「ええ。その通りでございます。選ばれた者も『正しき道に導く為に必要ならば、この身を捧げます』と申しております……」
「何と!それは素晴らしい!その者はとてつもない祝福を受けようぞ!!」
「はい、誠に……」
満足気に頷き合う男達は、自分達のその姿を見られていることにも気づかずに、話を続けるのであったーーーー。
**********
いつもお読み下さり、ありがとうございます。
本日は夜にも、こちら更新予定です!
0
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説
あの味噌汁の温かさ、焼き魚の香り、醤油を使った味付け——異世界で故郷の味をもとめてつきすすむ!
ねむたん
ファンタジー
私は砂漠の町で家族と一緒に暮らしていた。そのうち前世のある記憶が蘇る。あの日本の味。温かい味噌汁、焼き魚、醤油で整えた料理——すべてが懐かしくて、恋しくてたまらなかった。
私はその気持ちを家族に打ち明けた。前世の記憶を持っていること、そして何より、あの日本の食文化が恋しいことを。家族は私の決意を理解し、旅立ちを応援してくれた。私は幼馴染のカリムと共に、異国の地で新しい食材や文化を探しに行くことに。
義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!
妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~
サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――
【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。
病弱な幼馴染と婚約者の目の前で私は攫われました。
鍋
恋愛
フィオナ・ローレラは、ローレラ伯爵家の長女。
キリアン・ライアット侯爵令息と婚約中。
けれど、夜会ではいつもキリアンは美しく儚げな女性をエスコートし、仲睦まじくダンスを踊っている。キリアンがエスコートしている女性の名はセレニティー・トマンティノ伯爵令嬢。
セレニティーとキリアンとフィオナは幼馴染。
キリアンはセレニティーが好きだったが、セレニティーは病弱で婚約出来ず、キリアンの両親は健康なフィオナを婚約者に選んだ。
『ごめん。セレニティーの身体が心配だから……。』
キリアンはそう言って、夜会ではいつもセレニティーをエスコートしていた。
そんなある日、フィオナはキリアンとセレニティーが濃厚な口づけを交わしているのを目撃してしまう。
※ゆるふわ設定
※ご都合主義
※一話の長さがバラバラになりがち。
※お人好しヒロインと俺様ヒーローです。
※感想欄ネタバレ配慮ないのでお気をつけくださいませ。
絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる