双子の姉は『勇者』ですが、弟の僕は『聖女』です。

ミアキス

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第四章 思惑は絡み合って成立する

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「何かムカつく……」

    レオは休憩中の馬車の中で、ポツリと呟いた。
    討伐依頼にではなく、最近の騎士達の態度にモヤモヤしていた。

    年配の騎士達には、孫や子のように頭を撫でられ、歳の近い騎士たちにはポンと肩や頭に手を置かれるのだ。
    それも決まって、レオが一人でボーッとしている時だけ。

「…何だっけ、あれだ、あれ…」

   そして、彼らの浮かべる表情が、前世で見たある光景を脳裏に過ぎらせた。

「ん~……」

必死で思い出してると、頭に浮かんだその光景がヒットした。

「……『初めてのお買い物』で、子供見守ってる大人だ……」

   もうすぐ十八になろうかと言うのに、何でそんな小さな子供を見守るような顔をされているのだろうかと、真剣に考えても分からない。
    そして分からないとなると、さらにイラつくのだ。

「え?お披露目のダンスパートナーの心配じゃないかな?」

    エレに相談すると、そう返された。

「……それって、パートナーになってくれる人が見つからないって心配なわけ?踊らずに退出するって言ったのに……」

   プクッと頬を膨らませたレオに、

ーーまだ無理かなぁ、これ…。

   と、エレはこっそりと溜息をついた。

   そんな感じでも討伐依頼はサクサクとこなされていき、王太子のお披露目まで残り一週間となった頃、全ての依頼を終えて帰還した。


※※※※※※※※
[レオノーラ視点]

「…………」

    それ・・を受け取ったエレは、固まったまま動かなかった。

「おーい、エレ?気に入らなかった?サラ姉様とダリヤが選んでくれたんだけど?」

    最近、貴族の子息の間でひっそりと流行ってるのを知っていた。
    エレがそっち方面の情報は知らないだろうからと、討伐に出てる間に用意してもらった品だ。

    エレの金色の髪に合わせた黄金の台座に、フレイアの瞳の色のアクアマリンを嵌め込んだ髪飾りと意匠を合わせたストールリング。

   それの入った箱を受け取り、中身を見るなりエレが固まったまま。

ーーだってねぇ…。フレイアとなら色々と安心なんだもん、姉としてはさ……。

    こちらの秘密を知っても利用しようとしなかった。寧ろ、処罰を受けるなら、自分だけにと家族を庇う。
    口は堅く、家族思いで器量良し。トドメに弟の想い人ときたら、そりゃ姉としては義妹にするに不足はないわけで……。

    何しろこちら・・・の世界ときたら、既成事実を作ったモン勝ちみたいなとこが強いせいか、差し入れに一服盛るのは当たり前だ。
    魔法もあって、魔術もある。
    《魅了チャーム》や《精神操作マインドコントロール》を使えば、令嬢だろうと襲いにくるのだ。

    数ある肉食系令嬢の中で、数少ない草食系令嬢。裏表のない令嬢がフレイアなのだ。

    《気配隠蔽》であちこちを歩き回っているから、陰でどの令嬢がどんな事をしてるかも把握している。

ーーまあ、貴族の子息達も、騎士達から情報貰ってるけどね……。

    レン兄様達からも、要注意人物は教えられている。
    自分が女だと知られたら、態度が確実に豹変するであろうことも把握済みだ。

    それになによりも、エレに陰で嫌がらせしてた令嬢達や、口説いてた令息達が、本来の姿のエレを見た時の顔を見るのが楽しみなのだ。
    貧相で魅力の無い体と、エレをバカにしていた連中が、実は好条件の相手と知った瞬間、決まった相手が国王陛下公認でいるのだ。
    手出しも出来ないけど、本性バレてるから取り付く島もないだろう。
    あの手この手で口説いてた連中は、男を口説いていたと知れば、どうなるのだか……。

「はっ。ざまぁ……」

    想像だけで笑えてくる。

「…………」

    ところで、私の弟はいつまでフリーズしているのだろう?





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