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第二章 『勇者』は商売です!
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「失礼いたします。サラディール様。トワレ男爵令嬢を連れて参りました」
侍女長が一人の侍女を連れてきた。
銀色の髪を丸めて団子にし、不安そうに頭を下げている。
「顔を上げてちょうだい。貴女にお話があって呼んだのよ」
サラディールの言葉に、令嬢は床にぬかづいた。
「誰にも秘密は申しておりません!ですので、罰するならワタシだけでお願い申し上げます!!」
突然の行動に、そこにいた全員が呆気に取られた。
「……あ。エレ。ほら、討伐行く前に言ってたのって、この人じゃない?」
レオの言葉に、エレが侍女の前に膝をついた。
「あの……、顔を上げてもらえますか?」
「………」
エレの言葉に、彼女は恐る恐る顔を上げた。
彼女の怯えて潤んだ水色の瞳と、エレの翠の瞳が合った。
「うん。レオの言う通りだ。あの時は落し物を届けてくれてありがとう」
「あの…。その事でお叱りを受けるのではないのですか?」
にっこり笑ったエレに、侍女は首を傾げた。
「…二人とも。ちゃんと説明しなさい…」
レンドルの言葉に、エレは侍女に手を差し出して、彼女を立たせた。
「討伐に行く前に、両親から手紙が届いたんです。それをエレが落としちゃって…」
「落としたというか、風に飛ばされたんだけど…」
「でも、結局落ちたよね?」
「……ソウデスネ」
レオの視線から顔を背ける。
「…つまり、拾った際に中を読んでしまったと…」
「申し訳ございません!!」
レンドルの言葉に彼女は深々と頭を下げた。
「……二人の専属侍女と侍従を増やす話が出てましたわよね?」
「ダリヤ達、年だもんね」
サラディールの言葉に、レオがそう言うと、ジロリとダリヤとグイードに見られた。
「……ごめんなさい」
気まずげに顔を背けるレオ。
「恐れながら申し上げます。こちらのトワレ男爵令嬢は、その候補でございます」
侍女長の言葉に、令嬢は思わず顔を上げた。
「そうだな。討伐から今日まで、何処からも双子の秘密は漏れていなかった。彼女の口は固いようだ」
レンドルが頷くと、令嬢を見た。
「名は?」
「フ、フレイア・ルー・トワレにございます」
「では、フレイア。今よりそなたを双子付きの専属侍女とする。侍女長、そのように手配を!」
「かしこまりました。フレイア、貴女の部屋の荷物の移動は後にします。今はサラディール様の御用が先です!」
侍女長はそう言い残すと、さっさと退出した。
「え?え?」
訳も分からず、立ち往生するフレイアに、サラディールが歩み寄った。
「フレイア。明日のお披露目式で、子供達が〖祝福の華〗を渡す役になったの。それで、少し衣装の手直しをしたくて貴女を呼んだのよ」
「…手直し……」
サラディールの言葉にヘナヘナと座り込む。
「大丈夫?」
「も、申し訳ございません。ワタシ、口止めの為に呼ばれたものだと…」
レオが近寄り、ヒョイと手を取り、引っ張りあげる。
「口止めも何も、ハッキリ口にしてないだけで、別に隠してるわけじゃないよ?レン兄様、秘密とか言ってるけど、忘れてる人が多いだけでさ」
「そうそう。それに男なのに『聖女』って、説明が面倒でしょ?」
「はあ…、そうですね…」
双子の言葉に、そう返すしかない。
「そんな事より、子供達の衣装よ!」
サラディールの言葉に、フレイアは慌てて手直しを確認していくのであったーーーー。
侍女長が一人の侍女を連れてきた。
銀色の髪を丸めて団子にし、不安そうに頭を下げている。
「顔を上げてちょうだい。貴女にお話があって呼んだのよ」
サラディールの言葉に、令嬢は床にぬかづいた。
「誰にも秘密は申しておりません!ですので、罰するならワタシだけでお願い申し上げます!!」
突然の行動に、そこにいた全員が呆気に取られた。
「……あ。エレ。ほら、討伐行く前に言ってたのって、この人じゃない?」
レオの言葉に、エレが侍女の前に膝をついた。
「あの……、顔を上げてもらえますか?」
「………」
エレの言葉に、彼女は恐る恐る顔を上げた。
彼女の怯えて潤んだ水色の瞳と、エレの翠の瞳が合った。
「うん。レオの言う通りだ。あの時は落し物を届けてくれてありがとう」
「あの…。その事でお叱りを受けるのではないのですか?」
にっこり笑ったエレに、侍女は首を傾げた。
「…二人とも。ちゃんと説明しなさい…」
レンドルの言葉に、エレは侍女に手を差し出して、彼女を立たせた。
「討伐に行く前に、両親から手紙が届いたんです。それをエレが落としちゃって…」
「落としたというか、風に飛ばされたんだけど…」
「でも、結局落ちたよね?」
「……ソウデスネ」
レオの視線から顔を背ける。
「…つまり、拾った際に中を読んでしまったと…」
「申し訳ございません!!」
レンドルの言葉に彼女は深々と頭を下げた。
「……二人の専属侍女と侍従を増やす話が出てましたわよね?」
「ダリヤ達、年だもんね」
サラディールの言葉に、レオがそう言うと、ジロリとダリヤとグイードに見られた。
「……ごめんなさい」
気まずげに顔を背けるレオ。
「恐れながら申し上げます。こちらのトワレ男爵令嬢は、その候補でございます」
侍女長の言葉に、令嬢は思わず顔を上げた。
「そうだな。討伐から今日まで、何処からも双子の秘密は漏れていなかった。彼女の口は固いようだ」
レンドルが頷くと、令嬢を見た。
「名は?」
「フ、フレイア・ルー・トワレにございます」
「では、フレイア。今よりそなたを双子付きの専属侍女とする。侍女長、そのように手配を!」
「かしこまりました。フレイア、貴女の部屋の荷物の移動は後にします。今はサラディール様の御用が先です!」
侍女長はそう言い残すと、さっさと退出した。
「え?え?」
訳も分からず、立ち往生するフレイアに、サラディールが歩み寄った。
「フレイア。明日のお披露目式で、子供達が〖祝福の華〗を渡す役になったの。それで、少し衣装の手直しをしたくて貴女を呼んだのよ」
「…手直し……」
サラディールの言葉にヘナヘナと座り込む。
「大丈夫?」
「も、申し訳ございません。ワタシ、口止めの為に呼ばれたものだと…」
レオが近寄り、ヒョイと手を取り、引っ張りあげる。
「口止めも何も、ハッキリ口にしてないだけで、別に隠してるわけじゃないよ?レン兄様、秘密とか言ってるけど、忘れてる人が多いだけでさ」
「そうそう。それに男なのに『聖女』って、説明が面倒でしょ?」
「はあ…、そうですね…」
双子の言葉に、そう返すしかない。
「そんな事より、子供達の衣装よ!」
サラディールの言葉に、フレイアは慌てて手直しを確認していくのであったーーーー。
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