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第一章 『勇者』と『聖女』?
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[エレオノール視点]
ふわふわ、ふわふわ。ふわふわ、ふわふわ。
体が宙に浮かんでるみたいな感覚に、またあの変な夢の中なんだと分かった。
ゆっくりと瞼を上げれば、目の前には広がる見た事の無いものだらけの世界。
鉄の馬や、馬がいないのに走っている荷車。
建物はほとんどが城よりも高く、石やガラスで出来ている。
女の人も男の人も色んな服を着ていて、性別も分かりにくい。
話してる言葉は理解できるんだけど、意味が分からない言葉が多い。
だけど…。だけど、たまに聞き覚えのある言葉があるんだ。
「もー、今日の担任!チョーウザかったし!!」
『あーもうっ!あの神官のおじいさん、チョーウザーーいっ!!』
「やばっ!ここのアイス、激うまっ!」
『くーっ……。ダリヤさんのご飯、激うまっ!』
……なんで、ノーラはこの人達とおんなじ言葉を話せるんだろう?
ふと空を見上げると鉄の鳥が飛んでいた。
海には鉄の船も浮いてるし、大きなムカデみたいな鉄の蟲が街中を走っている。
そして、この世界には《魔法》がないーーーー。
《魔法》の代わりに《魔導具》がたくさんあるみたい。
箱の中に人がいて、話してる。
僕達の世界とは違う不思議な世界。
もしかして、ノーラもおんなじ夢を見てるのかな?
だったら、言葉を使ってもおかしくないよね?
そうして目を覚ました僕は、ノーラに夢の話をした。
「夢じゃないよ。あそこはノーラが産まれる前に暮らしてた世界だよ」
「…………は?」
ノーラは産まれる前はあの夢で見ていた世界で暮らしていたのだと話し出した。
「あっちの世界が嫌になって、死んじゃおうかなって思ってたら、神様に声をかけられたんだ…」
そこからノーラは神様と話して、『勇者』になりたいって頼んだ事。元の世界のことを理解してくれる人として、双子の僕が選ばれた事とかを説明してくれた。
「ホントは『聖女』になるはずだったらしいんだけど…」
「は?待って、待って!!ノーラが『聖女』だったの!?」
「だから、なるはずだったんだけど、嫌だって言って、『勇者』にしてもらったの♪」
「それって、僕が『聖女』になったのは、ノーラのせいってことじゃん!」
「え?違うと思うよ?だって、それなら『聖者』になるはずでしょ?」
「……言われてみれば……」
呆然とする僕を見ながら、ノーラは何かを思い出してるみたいだった。
「…もしかしたら何だけど…」
「ん?」
「あの神様。すごく残念だったから、直すの忘れてただけかもしんない……」
すごく真剣な顔でノーラに言われた。
※※※※※※※※
『ぶふっ…』
落ち込んだあまりに、レン様達に心配された僕は、ノーラと二人でその話をした。
そしたら、皆が口を押さえて色んな方向に顔を向けた。
笑うのを堪えてるの丸わかりだよ。皆、体がプルプルしてるんだから……。
「…いーですよ、笑って……」
「いや、それはノールに悪い…」
レン様は必死で噎せながらも、真顔を取り戻してた。
「なるほどな。そういう理由なら、あの時二人が装備を手にすることが出来た理由が説明つくな」
「神官様達に話すの?」
ノーラがそう聞くと、皆がニヤリって悪い顔した。
「いーや。曲がりなりにも奴らの信仰する神が間違えたなんて、認めるわけもないからな。我々だけの秘密にしておこう♪」
あのおじいさん神官達、確かに怒りそうだもんね。
僕とノーラは頷いた。
「それから、今後のことなんだが…」
僕達が十七歳になったら、レン様が王様になるんだって。
その時に正式なお披露目をするらしい。
だから、それまではって、色んなことが決められて、僕もノーラも『分かりました』って答えたよ。
これから、十年後。
僕達はどうなってるのかな?
ふわふわ、ふわふわ。ふわふわ、ふわふわ。
体が宙に浮かんでるみたいな感覚に、またあの変な夢の中なんだと分かった。
ゆっくりと瞼を上げれば、目の前には広がる見た事の無いものだらけの世界。
鉄の馬や、馬がいないのに走っている荷車。
建物はほとんどが城よりも高く、石やガラスで出来ている。
女の人も男の人も色んな服を着ていて、性別も分かりにくい。
話してる言葉は理解できるんだけど、意味が分からない言葉が多い。
だけど…。だけど、たまに聞き覚えのある言葉があるんだ。
「もー、今日の担任!チョーウザかったし!!」
『あーもうっ!あの神官のおじいさん、チョーウザーーいっ!!』
「やばっ!ここのアイス、激うまっ!」
『くーっ……。ダリヤさんのご飯、激うまっ!』
……なんで、ノーラはこの人達とおんなじ言葉を話せるんだろう?
ふと空を見上げると鉄の鳥が飛んでいた。
海には鉄の船も浮いてるし、大きなムカデみたいな鉄の蟲が街中を走っている。
そして、この世界には《魔法》がないーーーー。
《魔法》の代わりに《魔導具》がたくさんあるみたい。
箱の中に人がいて、話してる。
僕達の世界とは違う不思議な世界。
もしかして、ノーラもおんなじ夢を見てるのかな?
だったら、言葉を使ってもおかしくないよね?
そうして目を覚ました僕は、ノーラに夢の話をした。
「夢じゃないよ。あそこはノーラが産まれる前に暮らしてた世界だよ」
「…………は?」
ノーラは産まれる前はあの夢で見ていた世界で暮らしていたのだと話し出した。
「あっちの世界が嫌になって、死んじゃおうかなって思ってたら、神様に声をかけられたんだ…」
そこからノーラは神様と話して、『勇者』になりたいって頼んだ事。元の世界のことを理解してくれる人として、双子の僕が選ばれた事とかを説明してくれた。
「ホントは『聖女』になるはずだったらしいんだけど…」
「は?待って、待って!!ノーラが『聖女』だったの!?」
「だから、なるはずだったんだけど、嫌だって言って、『勇者』にしてもらったの♪」
「それって、僕が『聖女』になったのは、ノーラのせいってことじゃん!」
「え?違うと思うよ?だって、それなら『聖者』になるはずでしょ?」
「……言われてみれば……」
呆然とする僕を見ながら、ノーラは何かを思い出してるみたいだった。
「…もしかしたら何だけど…」
「ん?」
「あの神様。すごく残念だったから、直すの忘れてただけかもしんない……」
すごく真剣な顔でノーラに言われた。
※※※※※※※※
『ぶふっ…』
落ち込んだあまりに、レン様達に心配された僕は、ノーラと二人でその話をした。
そしたら、皆が口を押さえて色んな方向に顔を向けた。
笑うのを堪えてるの丸わかりだよ。皆、体がプルプルしてるんだから……。
「…いーですよ、笑って……」
「いや、それはノールに悪い…」
レン様は必死で噎せながらも、真顔を取り戻してた。
「なるほどな。そういう理由なら、あの時二人が装備を手にすることが出来た理由が説明つくな」
「神官様達に話すの?」
ノーラがそう聞くと、皆がニヤリって悪い顔した。
「いーや。曲がりなりにも奴らの信仰する神が間違えたなんて、認めるわけもないからな。我々だけの秘密にしておこう♪」
あのおじいさん神官達、確かに怒りそうだもんね。
僕とノーラは頷いた。
「それから、今後のことなんだが…」
僕達が十七歳になったら、レン様が王様になるんだって。
その時に正式なお披露目をするらしい。
だから、それまではって、色んなことが決められて、僕もノーラも『分かりました』って答えたよ。
これから、十年後。
僕達はどうなってるのかな?
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