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第一章 『勇者』と『聖女』?
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朝早くから起きた双子達は、軽い朝食を二人で食べた後、ダリヤにお風呂に入れられ、揃いの白い服を着せられた。
「「おんなじだねー♪」」
ニコニコ笑っている所へ、レンドル達が現れた。
「やあ、おはよう。ノーラ、ノール」
「「おはようございます!」」
元気よく挨拶を返す双子に、周りはニッコリと笑っている。
「これから、神殿で装備の確認をする。頭の固い年寄り達を驚かせてやろう!」
パチンと片目を瞑ったレンドルに、双子は首を傾げた。
「まあ、とりあえずは、神殿の連中の言う通りに動けばいい。正式なお披露目はまだまだ先なんだから、気にせずにいればいい」
そう言って歩き出したレンドルの後を、ハンニバル達に促されて慌ててついていく。
途中、神殿の入口までと言って、レンドルがレオノーラを、ハンニバルがエレオノールを片手で抱き上げて運んだ。
※※※※※※※※
[レンドル視点]
双子を連れて神殿に向かう。
途中、バルと二人を抱き上げて運んだが、怖がることも無く懐いてくれている様子にホッとした。
正直、私には兄弟がいないので、小さな子供との接し方が正しいかどうかの判断がつかないのだ。
「さあ、着いたぞ…」
開かれた扉の前に二人を下ろす。
祭壇の前には杖の置かれた台と剣の刺さった台座が並ぶ。
【聖杖】カトルディンと【聖剣】エメルディアだ。
「さあ、幼き『勇者』と『聖女』よ。こちらへ…」
神官に招かれ、双子は私達の方を、チラチラと振り返りながら歩いていく。
「さあ、『勇者』よ!【聖剣】をその手に!!」
神官が台座に連れていったのは、エレオノールだった。
レオノーラは首を傾げながらも、黙って見ている。
当然、私達も無言を貫いていた。
「さあ!見事引き抜いて証明するのです!!」
「……」
神官の言葉に、ノールは恐る恐る【聖剣】の柄を握りしめ、
「えーいっ!」
と、叫んだ。
ヒュン。ガシャン!
『………………』
勢いよくそれを抜き、勢いそのままにエレオノールはひっくり返っていた。
ーーんん?エレオノールは『聖女』ではなかったのか?
混乱する我々とは別に、神官達も騒ぎ出した。
「馬鹿な!抜けたというのに、輝かないなど……」
騒ぎの中、ひっくり返ったままのエレオノールに、レオノーラが近寄った。
「ノール、大丈夫?」
「ノーラ、助けて。これ、重たいよ……」
「……手を離せばいいでしょ?」
「あ、そっか。ほんとだぁ♪」
柄から手を離し、ヒョイと起き上がるエレオノール。
「…『勇者』よ。剣をそのままにしてはなりません!」
側にいた神官にそう言われると、エレオノールは首を振った。
「でも、これ。重たすぎて僕は持てません…」
【聖剣】は『勇者』しか持てないという。エレオノールは、台座から抜くことは出来たが、持つことは出来ないと首を振っている。
「……これ、元に戻せばいいの?」
そう言ったレオノーラがヒョイと持ち上げた途端、【聖剣】が輝きを放った。
「もうっ!眩しいってば!!」
ガシャンと台座に剣を突き刺し、レオノールは目を擦っていた。
『…………』
神官達は間抜けな程に口を開けっ放しでいる。
「せ、【聖女】よ。杖に祝福を……」
何とか立ち直ったらしい高位の神官がそう言った。
「ノーラが持つの?」
自分を指さすレオノーラに、神官がコクコクと頷く。
「…これ、重いよ?」
台から持ち上げれないまま、レオノーラは杖を引きずり落とした。
「ノーラ、危ないよ?戻してから持ち直したら?」
手伝おうと手を伸ばしたエレオノールの指が、杖に触れた途端、杖はフワッと浮き、軽く光を放ちながら、台の上に戻った。
『……………』
高位の神官連中は、馬鹿みたいなマヌケ顔で口を開きっぱなしだ。
「ノーラ!ノール!お前達の正しい装備を手にするといい!!」
私の言葉に、レオノーラは【聖剣】を、エレオノールは【聖杖】を軽々と持ち上げる。
そして、その二つは暫く光り輝いたかと思ったら、子供達の手にちょうど良い大きさへと姿を変えていた。
「…………」
高位の神官達は、目の前の光景が信じられなかったのか、大半が腰を抜かすか、気を失って倒れていった。
「さて、これで我が国には新たな『勇者』と『聖女』が誕生した。来る日に向けて、神官の皆様もそのつもりで…」
私達は双子を連れて部屋へと戻り、我々だけで盛大な祝いをした。
「見たか、バル……。頭の固い連中がマヌケ顔晒してたのを……」
普段偉そうにしてたのが、揃いも揃って間抜けな様を見せたのだ。
「ええ、見ましたとも。自分達のとこの神官の言葉も信じずに思い込みだけで動く間抜けっぷりを……」
私だけではない、部屋の中の連中は、皆が皆笑っていた。
「それにしても…」
本来ならば、本人以外には触れることさえ出来ないはずの【聖剣】と【聖杖】を、双子だから相手の物に触れられたのか謎が残る……。
チラリと二人を見れば、楽しそうに食事をしている。
「……まあ、良しとするか……」
私の役目はこの二人が何者にも脅かされずに、伸び伸びとその職を全う出来るように見守ることなのだからーーーー。
「「おんなじだねー♪」」
ニコニコ笑っている所へ、レンドル達が現れた。
「やあ、おはよう。ノーラ、ノール」
「「おはようございます!」」
元気よく挨拶を返す双子に、周りはニッコリと笑っている。
「これから、神殿で装備の確認をする。頭の固い年寄り達を驚かせてやろう!」
パチンと片目を瞑ったレンドルに、双子は首を傾げた。
「まあ、とりあえずは、神殿の連中の言う通りに動けばいい。正式なお披露目はまだまだ先なんだから、気にせずにいればいい」
そう言って歩き出したレンドルの後を、ハンニバル達に促されて慌ててついていく。
途中、神殿の入口までと言って、レンドルがレオノーラを、ハンニバルがエレオノールを片手で抱き上げて運んだ。
※※※※※※※※
[レンドル視点]
双子を連れて神殿に向かう。
途中、バルと二人を抱き上げて運んだが、怖がることも無く懐いてくれている様子にホッとした。
正直、私には兄弟がいないので、小さな子供との接し方が正しいかどうかの判断がつかないのだ。
「さあ、着いたぞ…」
開かれた扉の前に二人を下ろす。
祭壇の前には杖の置かれた台と剣の刺さった台座が並ぶ。
【聖杖】カトルディンと【聖剣】エメルディアだ。
「さあ、幼き『勇者』と『聖女』よ。こちらへ…」
神官に招かれ、双子は私達の方を、チラチラと振り返りながら歩いていく。
「さあ、『勇者』よ!【聖剣】をその手に!!」
神官が台座に連れていったのは、エレオノールだった。
レオノーラは首を傾げながらも、黙って見ている。
当然、私達も無言を貫いていた。
「さあ!見事引き抜いて証明するのです!!」
「……」
神官の言葉に、ノールは恐る恐る【聖剣】の柄を握りしめ、
「えーいっ!」
と、叫んだ。
ヒュン。ガシャン!
『………………』
勢いよくそれを抜き、勢いそのままにエレオノールはひっくり返っていた。
ーーんん?エレオノールは『聖女』ではなかったのか?
混乱する我々とは別に、神官達も騒ぎ出した。
「馬鹿な!抜けたというのに、輝かないなど……」
騒ぎの中、ひっくり返ったままのエレオノールに、レオノーラが近寄った。
「ノール、大丈夫?」
「ノーラ、助けて。これ、重たいよ……」
「……手を離せばいいでしょ?」
「あ、そっか。ほんとだぁ♪」
柄から手を離し、ヒョイと起き上がるエレオノール。
「…『勇者』よ。剣をそのままにしてはなりません!」
側にいた神官にそう言われると、エレオノールは首を振った。
「でも、これ。重たすぎて僕は持てません…」
【聖剣】は『勇者』しか持てないという。エレオノールは、台座から抜くことは出来たが、持つことは出来ないと首を振っている。
「……これ、元に戻せばいいの?」
そう言ったレオノーラがヒョイと持ち上げた途端、【聖剣】が輝きを放った。
「もうっ!眩しいってば!!」
ガシャンと台座に剣を突き刺し、レオノールは目を擦っていた。
『…………』
神官達は間抜けな程に口を開けっ放しでいる。
「せ、【聖女】よ。杖に祝福を……」
何とか立ち直ったらしい高位の神官がそう言った。
「ノーラが持つの?」
自分を指さすレオノーラに、神官がコクコクと頷く。
「…これ、重いよ?」
台から持ち上げれないまま、レオノーラは杖を引きずり落とした。
「ノーラ、危ないよ?戻してから持ち直したら?」
手伝おうと手を伸ばしたエレオノールの指が、杖に触れた途端、杖はフワッと浮き、軽く光を放ちながら、台の上に戻った。
『……………』
高位の神官連中は、馬鹿みたいなマヌケ顔で口を開きっぱなしだ。
「ノーラ!ノール!お前達の正しい装備を手にするといい!!」
私の言葉に、レオノーラは【聖剣】を、エレオノールは【聖杖】を軽々と持ち上げる。
そして、その二つは暫く光り輝いたかと思ったら、子供達の手にちょうど良い大きさへと姿を変えていた。
「…………」
高位の神官達は、目の前の光景が信じられなかったのか、大半が腰を抜かすか、気を失って倒れていった。
「さて、これで我が国には新たな『勇者』と『聖女』が誕生した。来る日に向けて、神官の皆様もそのつもりで…」
私達は双子を連れて部屋へと戻り、我々だけで盛大な祝いをした。
「見たか、バル……。頭の固い連中がマヌケ顔晒してたのを……」
普段偉そうにしてたのが、揃いも揃って間抜けな様を見せたのだ。
「ええ、見ましたとも。自分達のとこの神官の言葉も信じずに思い込みだけで動く間抜けっぷりを……」
私だけではない、部屋の中の連中は、皆が皆笑っていた。
「それにしても…」
本来ならば、本人以外には触れることさえ出来ないはずの【聖剣】と【聖杖】を、双子だから相手の物に触れられたのか謎が残る……。
チラリと二人を見れば、楽しそうに食事をしている。
「……まあ、良しとするか……」
私の役目はこの二人が何者にも脅かされずに、伸び伸びとその職を全う出来るように見守ることなのだからーーーー。
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