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第一章 『勇者』と『聖女』?
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「……は?姉の方が『勇者』で、弟が『聖女』?」
王都から迎えに来た騎士達は、目の前の子供達に首を傾げる。
ーー可愛い顔してるけど、弟って言ったぞ?
ーー弟って、男だよな?男なのに、『聖女』?え?ふざけてんのか?
騎士達の心中はこんな感じである。
しかし、同行していた神官がやはり同じ結果を口にすると、
ーー は?『聖女』の性別って、何なの?
と、全員が混乱したのである。
なにはともあれ、騎士達は二人を連れて、王都に戻らなければならないのだ。
何となく心の中にモヤモヤしたものを抱えつつ、一行は王都へと旅立った。
道中、二人を相手にしていた神官は、二人とも《回復》ばかりか《範囲回復》が使えることに驚いた。
面白がった一部の騎士達も、二人に剣の手ほどきをしたところ、やはりこちらも二人とも《剣さばき》を持っていることに気づき、
ーーえ?こいつら、どうなってんの??
と、頭を悩ますことになった。
王都までもう少しという所で、暗黒熊に遭遇した。
一匹程度なら騎士達だけで、倒せるランクなのだが、運の悪いことに相手は三匹。親子の様だった。
さらに子育て中の暗黒熊は、いつもより獰猛さが増す。
とりあえず、子供達は神官と共に後ろに…と、隊長は指示を出そうとしたのだが、
「えーい!」
持っていた剣に風魔法を付与し、レオノーラが親熊を一刀のもとに斬撃で斬り殺した。
『はああぁぁぁっ!?』
騎士達はあまりの事に、あんぐりと大口を開いてしまった。
「行きます!《炎弾》!!」
神官の隣では、無詠唱でエレオノールが火魔法を放ち、二匹の小熊を消し炭に変えてしまった。
『………………』
自分達でも倒せるかどうか怪しい三匹を、たった二人の子供があっさりと退治してしまったのである。
ーー怖……。この双子、怖っ!!
キャッキャッ、キャッキャッと、飛び跳ねて喜ぶ双子を見ながら、一行はドン引きしていた。
「隊長さん。これ、解体するの?」
無事だった親熊を指差し、レオノーラが尋ねてくる。
瞳は好奇心でキラキラしていた。
「……あー。そうだな、解体するか…」
そうして、解体を始めた騎士達の側で、双子は熱心にその手元を眺めていた。
「よーく見とけよ。この肝の所は薬に使えるから、いい状態だと買取価格が上がるんだ」
解体作業で落ち着いたのか、騎士達は双子にいつも通りに話し出した。
「何の薬になるの?」
エレオノールが尋ねる。
「そうだな。滋養強壮剤とかかな?」
「ふうん…」
レオノーラは毛皮の剥ぎ方を見ていた。
「首が繋がってりゃ、敷物とかで高値で売れるんだ。これもほとんど傷がないから、毛皮とかで高値で買い取ってもらえると思うぞ♪」
「じゃあ、心臓を一突きで殺しちゃえばいいのかな?」
「そうだな。でも、それは熟練の騎士や冒険者じゃないと難しいだろうなぁ…」
「ふうん…」
騎士達は気づいていなかった。
双子が自分達の言葉で、次からはどう倒すかを考えていたことにーーーー。
「つまり、内蔵をなるべく傷めずに、毛皮も傷つけないように倒せば、お金になるってことよね?」
「魔物毎に必要な部位が違うから、魔物毎にやり方変えなきゃダメだよね?」
夜、二人はテントの中で愉しげにそう語っていた。
「…………」
同じテントの中。ゆっくり休もうと横になっていた神官は、聞こえてくる話の内容に、全然休めなくなったのであったーーーー。
王都から迎えに来た騎士達は、目の前の子供達に首を傾げる。
ーー可愛い顔してるけど、弟って言ったぞ?
ーー弟って、男だよな?男なのに、『聖女』?え?ふざけてんのか?
騎士達の心中はこんな感じである。
しかし、同行していた神官がやはり同じ結果を口にすると、
ーー は?『聖女』の性別って、何なの?
と、全員が混乱したのである。
なにはともあれ、騎士達は二人を連れて、王都に戻らなければならないのだ。
何となく心の中にモヤモヤしたものを抱えつつ、一行は王都へと旅立った。
道中、二人を相手にしていた神官は、二人とも《回復》ばかりか《範囲回復》が使えることに驚いた。
面白がった一部の騎士達も、二人に剣の手ほどきをしたところ、やはりこちらも二人とも《剣さばき》を持っていることに気づき、
ーーえ?こいつら、どうなってんの??
と、頭を悩ますことになった。
王都までもう少しという所で、暗黒熊に遭遇した。
一匹程度なら騎士達だけで、倒せるランクなのだが、運の悪いことに相手は三匹。親子の様だった。
さらに子育て中の暗黒熊は、いつもより獰猛さが増す。
とりあえず、子供達は神官と共に後ろに…と、隊長は指示を出そうとしたのだが、
「えーい!」
持っていた剣に風魔法を付与し、レオノーラが親熊を一刀のもとに斬撃で斬り殺した。
『はああぁぁぁっ!?』
騎士達はあまりの事に、あんぐりと大口を開いてしまった。
「行きます!《炎弾》!!」
神官の隣では、無詠唱でエレオノールが火魔法を放ち、二匹の小熊を消し炭に変えてしまった。
『………………』
自分達でも倒せるかどうか怪しい三匹を、たった二人の子供があっさりと退治してしまったのである。
ーー怖……。この双子、怖っ!!
キャッキャッ、キャッキャッと、飛び跳ねて喜ぶ双子を見ながら、一行はドン引きしていた。
「隊長さん。これ、解体するの?」
無事だった親熊を指差し、レオノーラが尋ねてくる。
瞳は好奇心でキラキラしていた。
「……あー。そうだな、解体するか…」
そうして、解体を始めた騎士達の側で、双子は熱心にその手元を眺めていた。
「よーく見とけよ。この肝の所は薬に使えるから、いい状態だと買取価格が上がるんだ」
解体作業で落ち着いたのか、騎士達は双子にいつも通りに話し出した。
「何の薬になるの?」
エレオノールが尋ねる。
「そうだな。滋養強壮剤とかかな?」
「ふうん…」
レオノーラは毛皮の剥ぎ方を見ていた。
「首が繋がってりゃ、敷物とかで高値で売れるんだ。これもほとんど傷がないから、毛皮とかで高値で買い取ってもらえると思うぞ♪」
「じゃあ、心臓を一突きで殺しちゃえばいいのかな?」
「そうだな。でも、それは熟練の騎士や冒険者じゃないと難しいだろうなぁ…」
「ふうん…」
騎士達は気づいていなかった。
双子が自分達の言葉で、次からはどう倒すかを考えていたことにーーーー。
「つまり、内蔵をなるべく傷めずに、毛皮も傷つけないように倒せば、お金になるってことよね?」
「魔物毎に必要な部位が違うから、魔物毎にやり方変えなきゃダメだよね?」
夜、二人はテントの中で愉しげにそう語っていた。
「…………」
同じテントの中。ゆっくり休もうと横になっていた神官は、聞こえてくる話の内容に、全然休めなくなったのであったーーーー。
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