3 / 110
第一章 『勇者』と『聖女』?
2
しおりを挟む
とある田舎の村に双子の姉弟が誕生したのは、今から七年前のことである。
黒髪に青い瞳の姉の名前はレオノーラ。
金髪に翠の瞳の弟の名前はエレオノール。
愛らしい双子は愛想もよく、見目もよく。明るい性格で、周りから可愛がられていた。
「ノーラ、待って!!」
「ノール、遅いよーっ!!」
今日も元気に村中を駆け回る二人の声が、村人達を笑顔にしている。
「神官様、こんにちはー」
レオノーラが教会前で信者と話していた神官に声をかけながら走り抜けていく。
「はい、こんにちは。ノーラ、ノール」
「こんにちは、神官様。明日、よろしくお願いします!」
姉の後を追いながら、エレオノールも挨拶を返していく。
明日は二人の〖職業鑑定の日〗。教会で神官に自分達の適正職業を確かめてもらう大事な日なのだ。
「ねえ、ノーラ。ノーラは何だと思う?」
いつもの原っぱに辿り着き、いつものように二人で木に登ると、エレオノールが尋ねた。
「わたしは絶対に『勇者』って決まってるもの♪」
「ノーラは女の子なんだから、『聖女』じゃないかな?《回復》使えるし…」
「《回復》なら、ノールだって使えるでしょ!しかも《範囲回復》だって使えるじゃないっ!」
「それ、ノーラも使えるよね?ぼくは『剣士』がいあなぁ…」
「《剣さばき》持ってるもんね、わたし達」
レオノーラは、ヒョイと手を伸ばして木の実を取った。
「でも『勇者』も『聖女』も、何するんだろうね?『魔王』と戦うわけでもないだろ?」
「『魔王』は、魔族を治める職業でしょ?人族とも仲が悪いわけじゃないし、寧ろ仲良しだもんね」
手にした木の実を半分にして、エレオノールと分ける。
「せいぜい、パーティ組んで魔物退治ってとこだよね?」
「ダンジョンの探索が主な仕事だっけ?」
「《冒険者》と変わんないような気もするよね」
「ほんとだね。あー。明日、楽しみだねぇ…」
双子はのんびりと会話を交わしながら、明日を楽しみに過ごしたーーーー。
※※※※※※※※
「それでは、誰から調べようかね?」
待ちに待った〖職業鑑定の日〗。両親と共に教会を訪れたレオノーラとエレオノール。
周りには自分達以外の子供達もいた。
みんな、どんな職業になれるのか、期待に顔を輝かせていた。
「やった!『料理人』だー!!」
酒場の息子のトールは、飛び上がって喜んでいた。
「うわぁ…。『会計士』だって…」
実家が商会のレイモンドは『商人』では無いことに落ち込んでいる。
そうして、色んな喜怒哀楽を浮かべた子供達が終わり、残すは双子のみとなった。
「先にしてもらうね、ノール♪」
そう言って、レオノーラが神官の前に立った。
神官は水晶を両手に掲げ、レオノーラの頭上へと近づけ、呪文を唱えた。
キラキラと光りながら、水晶の中に職業の文字が浮かび上がる。
「レオノーラの職業は…」
その文字を告げようとした神官は、目をパチパチと瞬かせた。
「神官様?」
「これは…」
首を傾げたレオノーラが神官を見上げる。
「これは…、『勇者』。レオノーラの職業は『勇者』です!」
叫んだ神官の言葉に、周りの住人がドッと様々な声を上げた。
「よっし!『勇者』だーっ!!」
レオノーラはピョンピョンと、その場ではしゃいで飛び回った。
「すごいよ、ノーラ!本当に『勇者』だなんて…」
「ありがとう、ノール。次はノールの番だよ♪」
入れ替わったエレオノールに、神官は息を整え、再び儀式を行った。
「………は?」
浮かんだ文字に神官が口をポカンと開けた。
「?」
エレオノールの頭上から水晶を離し、再び繰り返す。
「……はあぁ!?」
今度は変な声を出す。
「し、神官様?ぼくの職業はないんですか?」
不安になったエレオノールは、涙目で尋ねた。
「いや、ちゃんとある。あるのだが、これは…」
『…………』
神官の言葉を聞き逃さないように、周囲はしんと静まり返った。
「……エレオノールの職業は…」
「ぼくの職業は?」
「……『聖女』…」
『はい?』
ポツリと呟いたその言葉に、全員が聞き返した。
「~~っ!!エレオノールの職業は『聖女』となっている!!」
そう叫ぶなり、神官は後ろに倒れた。
「神官様っ!!」
慌てて駆け寄る大人達。そして、茫然とする子供達。
「…『聖女』?でも、ぼく。男なんだけど?」
『聖者』でなく『聖女』。
この事はすぐ隣の村の教会にも伝わり、そこの神官が調べた結果も『聖女』。
とにかく規則で『勇者』や『聖女』が現れた場合は、教会本部と王家に知らせるようになっているため、その通りに知らされたのであるーーーー。
黒髪に青い瞳の姉の名前はレオノーラ。
金髪に翠の瞳の弟の名前はエレオノール。
愛らしい双子は愛想もよく、見目もよく。明るい性格で、周りから可愛がられていた。
「ノーラ、待って!!」
「ノール、遅いよーっ!!」
今日も元気に村中を駆け回る二人の声が、村人達を笑顔にしている。
「神官様、こんにちはー」
レオノーラが教会前で信者と話していた神官に声をかけながら走り抜けていく。
「はい、こんにちは。ノーラ、ノール」
「こんにちは、神官様。明日、よろしくお願いします!」
姉の後を追いながら、エレオノールも挨拶を返していく。
明日は二人の〖職業鑑定の日〗。教会で神官に自分達の適正職業を確かめてもらう大事な日なのだ。
「ねえ、ノーラ。ノーラは何だと思う?」
いつもの原っぱに辿り着き、いつものように二人で木に登ると、エレオノールが尋ねた。
「わたしは絶対に『勇者』って決まってるもの♪」
「ノーラは女の子なんだから、『聖女』じゃないかな?《回復》使えるし…」
「《回復》なら、ノールだって使えるでしょ!しかも《範囲回復》だって使えるじゃないっ!」
「それ、ノーラも使えるよね?ぼくは『剣士』がいあなぁ…」
「《剣さばき》持ってるもんね、わたし達」
レオノーラは、ヒョイと手を伸ばして木の実を取った。
「でも『勇者』も『聖女』も、何するんだろうね?『魔王』と戦うわけでもないだろ?」
「『魔王』は、魔族を治める職業でしょ?人族とも仲が悪いわけじゃないし、寧ろ仲良しだもんね」
手にした木の実を半分にして、エレオノールと分ける。
「せいぜい、パーティ組んで魔物退治ってとこだよね?」
「ダンジョンの探索が主な仕事だっけ?」
「《冒険者》と変わんないような気もするよね」
「ほんとだね。あー。明日、楽しみだねぇ…」
双子はのんびりと会話を交わしながら、明日を楽しみに過ごしたーーーー。
※※※※※※※※
「それでは、誰から調べようかね?」
待ちに待った〖職業鑑定の日〗。両親と共に教会を訪れたレオノーラとエレオノール。
周りには自分達以外の子供達もいた。
みんな、どんな職業になれるのか、期待に顔を輝かせていた。
「やった!『料理人』だー!!」
酒場の息子のトールは、飛び上がって喜んでいた。
「うわぁ…。『会計士』だって…」
実家が商会のレイモンドは『商人』では無いことに落ち込んでいる。
そうして、色んな喜怒哀楽を浮かべた子供達が終わり、残すは双子のみとなった。
「先にしてもらうね、ノール♪」
そう言って、レオノーラが神官の前に立った。
神官は水晶を両手に掲げ、レオノーラの頭上へと近づけ、呪文を唱えた。
キラキラと光りながら、水晶の中に職業の文字が浮かび上がる。
「レオノーラの職業は…」
その文字を告げようとした神官は、目をパチパチと瞬かせた。
「神官様?」
「これは…」
首を傾げたレオノーラが神官を見上げる。
「これは…、『勇者』。レオノーラの職業は『勇者』です!」
叫んだ神官の言葉に、周りの住人がドッと様々な声を上げた。
「よっし!『勇者』だーっ!!」
レオノーラはピョンピョンと、その場ではしゃいで飛び回った。
「すごいよ、ノーラ!本当に『勇者』だなんて…」
「ありがとう、ノール。次はノールの番だよ♪」
入れ替わったエレオノールに、神官は息を整え、再び儀式を行った。
「………は?」
浮かんだ文字に神官が口をポカンと開けた。
「?」
エレオノールの頭上から水晶を離し、再び繰り返す。
「……はあぁ!?」
今度は変な声を出す。
「し、神官様?ぼくの職業はないんですか?」
不安になったエレオノールは、涙目で尋ねた。
「いや、ちゃんとある。あるのだが、これは…」
『…………』
神官の言葉を聞き逃さないように、周囲はしんと静まり返った。
「……エレオノールの職業は…」
「ぼくの職業は?」
「……『聖女』…」
『はい?』
ポツリと呟いたその言葉に、全員が聞き返した。
「~~っ!!エレオノールの職業は『聖女』となっている!!」
そう叫ぶなり、神官は後ろに倒れた。
「神官様っ!!」
慌てて駆け寄る大人達。そして、茫然とする子供達。
「…『聖女』?でも、ぼく。男なんだけど?」
『聖者』でなく『聖女』。
この事はすぐ隣の村の教会にも伝わり、そこの神官が調べた結果も『聖女』。
とにかく規則で『勇者』や『聖女』が現れた場合は、教会本部と王家に知らせるようになっているため、その通りに知らされたのであるーーーー。
10
お気に入りに追加
41
あなたにおすすめの小説

義妹が大事だと優先するので私も義兄を優先する事にしました
さこの
恋愛
婚約者のラウロ様は義妹を優先する。
私との約束なんかなかったかのように…
それをやんわり注意すると、君は家族を大事にしないのか?冷たい女だな。と言われました。
そうですか…あなたの目にはそのように映るのですね…
分かりました。それでは私も義兄を優先する事にしますね!大事な家族なので!

【完結】聖女にはなりません。平凡に生きます!
暮田呉子
ファンタジー
この世界で、ただ平凡に、自由に、人生を謳歌したい!
政略結婚から三年──。夫に見向きもされず、屋敷の中で虐げられてきたマリアーナは夫の子を身籠ったという女性に水を掛けられて前世を思い出す。そうだ、前世は慎ましくも充実した人生を送った。それなら現世も平凡で幸せな人生を送ろう、と強く決意するのだった。

転生令嬢の食いしん坊万罪!
ねこたま本店
ファンタジー
訳も分からないまま命を落とし、訳の分からない神様の手によって、別の世界の公爵令嬢・プリムローズとして転生した、美味しい物好きな元ヤンアラサー女は、自分に無関心なバカ父が後妻に迎えた、典型的なシンデレラ系継母と、我が儘で性格の悪い妹にイビられたり、事故物件王太子の中継ぎ婚約者にされたりつつも、しぶとく図太く生きていた。
そんなある日、プリムローズは王侯貴族の子女が6~10歳の間に受ける『スキル鑑定の儀』の際、邪悪とされる大罪系スキルの所有者であると判定されてしまう。
プリムローズはその日のうちに、同じ判定を受けた唯一の友人、美少女と見まごうばかりの気弱な第二王子・リトス共々捕えられた挙句、国境近くの山中に捨てられてしまうのだった。
しかし、中身が元ヤンアラサー女の図太い少女は諦めない。
プリムローズは時に気弱な友の手を引き、時に引いたその手を勢い余ってブン回しながらも、邪悪と断じられたスキルを駆使して生き残りを図っていく。
これは、図太くて口の悪い、ちょっと(?)食いしん坊な転生令嬢が、自分なりの幸せを自分の力で掴み取るまでの物語。
こちらの作品は、2023年12月28日から、カクヨム様でも掲載を開始しました。
今後、カクヨム様掲載用にほんのちょっとだけ内容を手直しし、1話ごとの文章量を増やす事でトータルの話数を減らした改訂版を、1日に2回のペースで投稿していく予定です。多量の加筆修正はしておりませんが、もしよろしければ、カクヨム版の方もご笑覧下さい。
※作者が適当にでっち上げた、完全ご都合主義的世界です。細かいツッコミはご遠慮頂ければ幸いです。もし、目に余るような誤字脱字を発見された際には、コメント欄などで優しく教えてやって下さい。
※検討の結果、「ざまぁ要素あり」タグを追加しました。
スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?
山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。
2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。
異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。
唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

何かと「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢は
だましだまし
ファンタジー
何でもかんでも「ひどいわ」とうるさい伯爵令嬢にその取り巻きの侯爵令息。
私、男爵令嬢ライラの従妹で親友の子爵令嬢ルフィナはそんな二人にしょうちゅう絡まれ楽しい学園生活は段々とつまらなくなっていった。
そのまま卒業と思いきや…?
「ひどいわ」ばっかり言ってるからよ(笑)
全10話+エピローグとなります。

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。
アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。
両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。
両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。
テッドには、妹が3人いる。
両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。
このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。
そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。
その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。
両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。
両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…
両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが…
母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。
今日も依頼をこなして、家に帰るんだ!
この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。
お楽しみくださいね!
HOTランキング20位になりました。
皆さん、有り難う御座います。

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる