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【二部】侯爵令嬢は今日もあざやかに断罪する

13.

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「……伯爵のような方が夫だなんて、羨ましいですわ…」

腹が立つものの、この女が妻としていられる時間も残りわずかと、ユリアナは腹の底では見下しながらも、ロゼッタと親しげに話していた。

「本当に、わたくしには勿体無い夫で……」

そう思うのならば、さっさとその座を下りてしまえ!

そう叫びたいのをグッと堪え、チラリと辺りに視線を巡らせる。
会場の給仕の中に、闇ギルドの者が待機しているのだ。
ロゼッタに媚薬を飲ませるために、ユリアナは手にしていた扇を顔の近くに持ち上げ、閉じたり開いたりを繰り返す。

「ユリアナ様?どうかなさいまして?」

首を傾げて尋ねてくるロゼッタに、内心舌打ちをしていると、一人の給仕がグラスを二つ置いたトレーを持ち、こちらにやって来ながら、ユリアナに頷いて見せた。

来たっ!

「ねえ、喉が渇いたわ。お水を下さる?」

手前のグラスを手に取り、ロゼッタへと差し出す。

「夫人も喉が乾いたでしょう?」

「まあ!ありがとうございます」

にこやかに微笑んで受け取り、それを飲み干したのを確認し、自分ももう一つのグラスの水を飲み干した。

あとは、計画通りに護衛の男が動けばいいだけだ。

伯爵は別の貴族に呼ばれ、少し離れた所で話している。
薬は即効性だと聞いているから、そろそろ効果が出るだろう。

「……?」

様子を伺っていると、ロゼッタの頬が少し赤みを帯びてきて、瞳もトロンと潤んできた。

「まあ、夫人。どうかされまして?」

わざとらしく声を出し、心配そうに背中に手を回す。

「…申し訳ありません。久しぶりの夜会で、少し疲れが出たようです…」

「大丈夫かい、夫人?休憩室で少し休むといい。マキシオ。ランディは抜けれそうにないようだから、ボク達で夫人を案内しよう。テボルト、ランディに伝えておいてくれるかい?」

「まあ!殿下、殿方だけでご婦人を案内するだなんていけませんわ!あたくしが付き添いますから、騎士の方だけお貸し下さいませ」

ユエインが付き添おうとしたのを慌てて引き止め、自分が変わると説得した。

「さ、婦人。あたくしにお捕まりになって…」

放り投げたいのを堪えながら、案内された部屋へと入る。

「…いつまでもたれてますの!」

「っ!?」

部屋のドアを閉めるなり、ユリアナはロゼッタを床へと突き飛ばした。

「あなた!そろそろ媚薬の効果が高まってる頃ですわ。さっさと済ませておしまいなさいな…」

「何を…?マキシオ様?」

頭をゆるゆると振るロゼッタに、マキシオがニヤニヤ笑いながら近寄っていく。

「…あぁ、やっと貴女が手に入る……」

「いやです!下ろして!下ろしてくださいませっ!!」

舌なめずりをしながら、マキシオが暴れるロゼッタの体を担ぎあげ、ベッドルームへ入るのを見届けると、ユリアナは急いで会場へと向かおうとした。

「おやおや。こんな所でいかがしたかね、婚約者殿?」

もう少しで会場内に入るという時に、ユリアナは腕を捕まれ、そう声をかけられた。

「……ウソ…。どうしてここに…」

そこには、父親に決められた自分の婚約者ーー辺境伯ラクト・ダスティールが立っていたーーーー。





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