少年、異世界に渡る

野上月子

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少年、異世界に渡る

少年、人を喰らうバケモノ

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守られることはけして悪くないことなんだよ

 だって、俺は守られているから生きていられるだもん

 もし、この異世界で一人で生きていくのなら

 きっと俺は死んでいたかもしれない

それが、偶然なのか必然なのかわからない

俺を信じて守ってくれる存在に出会った 

だけど、俺を守ってくれる存在だっていた
それが狼のジンだった。
動物でも、誰かが傍に居てくれることがとっても
嬉しくて悲しみが薄れるような気がしたんだ。

一人だったらきっと何もできない
 だからね、ジンが困っていたら、今度は自分が守らなければ

守られてばかりじゃ割合わないでしょ?

だから、俺は戦う

 ただ、それだけの話なのさ。


                    ********


ジンは驚いている

(本気・・なのか?)

「うん、俺、森の主を倒すよ」

 俺はもう決心したんだ
 きっと、今よりこの状態は悪化するって
 その前に倒してしまえばいいんだって考えたんだ


(だが、危険すぎる)

ジンがしぶる
どうやら俺を行かせたくないようだ
 ジンはとても優しい
俺の母のように時々厳しくて優しい
 だから、俺は言うことにしたんだ

最初から気づいていたことを


「気づいていたんだよ俺」

(え・・?)

「お前が俺を守ろうとしてくれたことに」

(・・・。)

ジンは驚いたかのように丸っこい瞳をさらに丸くした

気づいてはいたんだ
 俺を守るために
 
わざと敵が少ない森の端に俺を囲ってくれたことを

変だとずっと思っていたんだ
 だって、一度も強い敵には遭遇しなかったし
獲物だって簡単に採れた

 それが、おかしいといえばおかしかった

(やはり、気づいていたんだな)

「うん、だってお前、俺を鍛あげるために
 わざと俺を挑発していたしな」

(・・・。)

思えばあの地獄の特訓
木に登れば落ちて
山を登れば崖から突き落とされ
薬草を食べれば死にかけ
川の魚採りすれば流され
魔法の特訓すれば失敗し

失敗をするたび

 ジンのタックルが決まっていた

 でも、それがあいつなりの
この異世界で生きるための
特訓だったかもしれない


思えば俺はやっぱり守られていたんだと思う
どんな時でもジンは心配してくれた
 まるで、家族のように

 だからこそ守られているだけでは割合わない
俺は決心したんだ
強くなることを
地獄なんて死ぬよりもマシなことだ

そう、俺はすでに決心がついたんだ

 ジンは俺に強く忠告する

(旬、お前は森の主に会ったら死ぬかもしれないだぞ?)
「ううん、俺は死なない。」

それは脅しではなく

事実でもあった

確かに、俺は森の主の顔を見ていないし知らない

 もしかしたら強いかもしれない
だけど・・不思議なんだ。
死ぬとかそんな未来なんて考える暇はなかった

 ただ、この小さな身体にある確かな、勝機だったんだ

(正気か?)

「うん、俺。守られている頃の自分じゃないから」

ジンは、俺の瞳をジッと見ている
 やがてため息を吐いて

(分かった。)

「いいの?」

(ああ、ただし、我もついて行くからな)

「ありがとう」

ジンはもう諦めたようだ
短い付き合いだけど俺の性格を知っている上での諦めのようだ

(乗れ)

「うん」

(飛ばすからな。)

乗ると急速にジンの走るスピードは眼にも見えない速さになった
 もし、これが車ならどちらが速い
 ジンか車・・考えるまでもなく車だと思うけど
 そんなこと考えながらもジンのスピードは緩める気配はない
旬は、必死にジンに捕まりながら

森の奥の奥・・それは、旬ですら知らないエリアに入ることになったのだ


                   **********

ジンは森の奥へと侵入すると旬は辺りを見渡す
 それは驚きに満ちた森の世界だった。


 「な、なんなの・・この植物達」

それは、奇妙な森だった
 うねうね動く植物
そして、花なのに動物を食べる異様な姿
グワァっと口を開けて弦なんて生きているかのように
怪しげに動く生物がたくさんいる

 ジンは辺りを見渡して

(ここは森の最深部だ)

「・・森の最深部?」

どうやらジンのおかげで目的の場所に近い所に来たようだ
 でも、この森はどこか自分がいた所よりかなり植物の違いがある。
 怖いっていうか
 なんていうか
 なんだろう・・言っていいかな?

 「化け物の住処・・・?」

 思わず呟いてしまう

無理もないよ・・。
植物なのか獣なのかよくわからないのがいて怖い
幼い身体で周りをみるけど
何もかも大きく見えて怖い!!
 今、ならいえることだ・・。

 「ここに落ちなくて良かった」

もし、自分がここに落ちたら死ぬどころじゃない
本当に自分の運の良さには感謝したいよ・・。

ここに落ちたらあっという間に喰われておしまいだね・・。
つくづく自分の末路を考える旬

なるべく植物の醜態を見ないように
ビクビクと震えながら旬は辺りを見渡す

 そんな旬を見ながらジンはゆっくり歩きながら
旬にこの森の最奥について話す

(旬)

「な、何」

ビクっとしながら旬はジンに聞く
 ジンは、その様子を見ながらこの森の主について話す

(この奥には、森の主がいる。この森の最深部に入るな)

「最深部って・・見たことない生物ばかりだよ・・ここ」

(確かに。お前には見慣れないものばかりの生物・・だが、
  これ以上の生物が眠っているんだよ。)

「・・・これ以上?」

 思わず聞いてしまった
 この生物以上に何がいるんだろう
 ジンはクッと笑って

(実物を見ればわかるさ。)

旬はごくりと喉をならした
 ジンの意味深の笑みが分かるのはすぐ

 ゆつくりと歩いていくうちに旬は驚く物に目を向けた


「あれは・・?」

 旬が見た不思議な生物
それは、獣ではないでも、植物でもない
花に見えても何かが違う
 そう、異様な雰囲気を出している、
 奇妙な生物がそこにいたのだ

「なぁ、ジン・・もしかしてあれが・・?」

(正解だ。あれがこの森の主だ。)

旬は、ジンの背から降りて
 その生物を遠くから確認する

(あれは、森の主であり我らはルストと呼んでいる)

「ルスト・・。」

植物なんだろうか・・・?

花が大きな唇にみえて不気味だ

根っこが・・足のかわりなのか?

歩いている姿が不気味だ

遠目からルストと呼ばれた謎の生物を見て思ったことは

そんな、疑問だった

雰囲的にはかなり強そうだよね・・。

なんていうか、あの奇妙に血のニオイが充満しているし

鼻にこびりつく最悪のニオイだ。

俺が倒すのか・・・あんなバケモノを
勝てるかな・・。
いや、勝たないといけない
そうしなければ俺は先に進めない

(怖いか?)

「全然・・と言いたいけど・・・怖いね。」

 本当は怖い
今でも手が震えているし、口だって震えている
 だって、俺の世界では見たことないだもん

 あんな凶悪で凶暴な生物は生まれて初めてみる
 でも・・。
 俺は、恐怖を乗り越えて戦うしかない

(あれは、植物じゃない。いや、正確には植物だったものだ。
 人間を喰らい力を増幅した本物のバケモノだ。)

「人間を・・・!?」

よく見れば、あちらこちらに骸骨が・・・!!

(・・・怖くなったか?)

「いや・・・行くよ。」

今は、恐怖よりも先に

「やらないと。これ以上、犠牲者をださないために!
 準備はいいかい?」

(ああ、大丈夫だ)

「じゃ、行こうか」

 一歩、一歩を歩んでいく
 ジンと俺はその奇妙な生物へと歩む

 さぁ、戦闘開始・・だ。
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