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#43 ノリに乗って流されてドン引き
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「ははは。おじさんってば幸せー」
にこやかに扇がお酒を煽り飲んだ。
『縁司君も行かないかい? 一緒にさ?』と縁司を誘った扇に、まさかのまさかと。
「そいつぁーよかったーw」
「…はァ」
縁司が承諾をしたのだ。
勿論のこと、このことを厨房に戻ってしまった竜司が知ることもない。
ホイホイとついて行こうとした彼に、長谷部も一緒に来てしまったのだ。
その選択肢に、長谷部自身は早まったと後悔をしているのだ。
(ドウシテコウナッタ…)
しかもである。
あの晩と同じく黄色のワンピース姿に着替えさせられた。
体のいい《従業員要員》とさせられている始末である。
文句を言う前に、海潮のテキパキとした行動になされるがままで――気がつけばの格好。
席も、あの晩と同じで、扇を挟み込んで座っている。
◆◇
長谷部君:竜司さんっ。あの馬鹿野郎と父さんの店に行くことになっちまったっ! また、報告すっから‼
◇◆
当時の店内の込み具合で声を掛けられる様子もなく。
扇について行く縁司の後ろを長谷部も追いかけてしまった。
「バイトしてくれて私も嬉しいです。長谷部君」
「父さんの手際の良さに、俺もびっくりしたよ!」
「ふふふ♡」と横に腰かける海潮が笑う。
しかも、ワンピース姿なのは縁司もだ。
海潮の巧みな話術によって着替えさせられたからである。
「やっぱり。あの日着ていたようなワンピース姿が似合うねぇー縁司君ー~~」
嬉しさに酒も進み、呂律も回らなくなっていく扇を、縁司も冷ややかな目で見つめて笑っている。さながらと、海潮のような氷の微笑である。
「そうかよw」
そして、縁司も酒を飲んで行く。
金のない学生にとっての無料の酒は感無量。
扇に続くように飲み干していく訳だ。
明らかに出来上がっていく2人の男に、ついて来てしまったことを長谷部も本当に後悔をするしかない。
(ドウシテコウナッタ!?)
しかし、と。
縁司を見捨てて帰ろうという気はない長谷部も苦労性を垣間見せる性格だ。
「あれれー~~? どぉーしたのかなぁー~~? 長谷部君んン??」
「ぅえ!? っな、何がだよっ!」
突然とへべれけ具合もいい扇に声を掛けられてしまい、長谷部が勢いよく顔を向けた瞬間。
顎に手が置かれ固定されると、
「へ?」
扇の顔が迫って来たと思えば視界が暗くなった。
唇に慣れたものが触れるのが分かる。
しかし、すぐに抵抗も出来なかった。
それは思いもしない光景に縁司も硬直してしまった。
「ぁア゛?」
長谷部の方に向いている扇が、何をしているのかが縁司からは見えなかった。
だが、すぐに分かった。
「っちょ、ぅん…ぁ、ア゛…っつ」
「ぉ、おいぃ!」
縁司が立ち上がり扇の肩を爪を立てて掴んだ。
遠慮なくスーツに力任せにだ。
「痛いw 痛い痛いってー縁司君ンんw」
にこやかに扇も唇を舌なめずりして縁司を見上げた。
だが、縁司が見る先は息も絶え絶えな長谷部の様子だ。
「その馬鹿にするくれぇならオレとキスをしろ!」
「縁司、さん?」
唇を拭う長谷部の目には扇に押し倒される縁司の姿が映し出された。
そんな様子を唖然と見る長谷部と縁司の視界がかち合うと、
ちょいちょい。
指先で扉を差した。
つまりは帰れとの合図を指している。
だが、長谷部は顔を横に振るしかない。
置いてなんか行けないからだ。自身の身代わりをする彼を。
(マジで馬鹿なのかよっ!)
聞き分けのない長谷部に中指を立てて怒りを見せた。
「ねぇ? 少しはおじさんに集中しようよー縁司君w」
にこやかに扇がお酒を煽り飲んだ。
『縁司君も行かないかい? 一緒にさ?』と縁司を誘った扇に、まさかのまさかと。
「そいつぁーよかったーw」
「…はァ」
縁司が承諾をしたのだ。
勿論のこと、このことを厨房に戻ってしまった竜司が知ることもない。
ホイホイとついて行こうとした彼に、長谷部も一緒に来てしまったのだ。
その選択肢に、長谷部自身は早まったと後悔をしているのだ。
(ドウシテコウナッタ…)
しかもである。
あの晩と同じく黄色のワンピース姿に着替えさせられた。
体のいい《従業員要員》とさせられている始末である。
文句を言う前に、海潮のテキパキとした行動になされるがままで――気がつけばの格好。
席も、あの晩と同じで、扇を挟み込んで座っている。
◆◇
長谷部君:竜司さんっ。あの馬鹿野郎と父さんの店に行くことになっちまったっ! また、報告すっから‼
◇◆
当時の店内の込み具合で声を掛けられる様子もなく。
扇について行く縁司の後ろを長谷部も追いかけてしまった。
「バイトしてくれて私も嬉しいです。長谷部君」
「父さんの手際の良さに、俺もびっくりしたよ!」
「ふふふ♡」と横に腰かける海潮が笑う。
しかも、ワンピース姿なのは縁司もだ。
海潮の巧みな話術によって着替えさせられたからである。
「やっぱり。あの日着ていたようなワンピース姿が似合うねぇー縁司君ー~~」
嬉しさに酒も進み、呂律も回らなくなっていく扇を、縁司も冷ややかな目で見つめて笑っている。さながらと、海潮のような氷の微笑である。
「そうかよw」
そして、縁司も酒を飲んで行く。
金のない学生にとっての無料の酒は感無量。
扇に続くように飲み干していく訳だ。
明らかに出来上がっていく2人の男に、ついて来てしまったことを長谷部も本当に後悔をするしかない。
(ドウシテコウナッタ!?)
しかし、と。
縁司を見捨てて帰ろうという気はない長谷部も苦労性を垣間見せる性格だ。
「あれれー~~? どぉーしたのかなぁー~~? 長谷部君んン??」
「ぅえ!? っな、何がだよっ!」
突然とへべれけ具合もいい扇に声を掛けられてしまい、長谷部が勢いよく顔を向けた瞬間。
顎に手が置かれ固定されると、
「へ?」
扇の顔が迫って来たと思えば視界が暗くなった。
唇に慣れたものが触れるのが分かる。
しかし、すぐに抵抗も出来なかった。
それは思いもしない光景に縁司も硬直してしまった。
「ぁア゛?」
長谷部の方に向いている扇が、何をしているのかが縁司からは見えなかった。
だが、すぐに分かった。
「っちょ、ぅん…ぁ、ア゛…っつ」
「ぉ、おいぃ!」
縁司が立ち上がり扇の肩を爪を立てて掴んだ。
遠慮なくスーツに力任せにだ。
「痛いw 痛い痛いってー縁司君ンんw」
にこやかに扇も唇を舌なめずりして縁司を見上げた。
だが、縁司が見る先は息も絶え絶えな長谷部の様子だ。
「その馬鹿にするくれぇならオレとキスをしろ!」
「縁司、さん?」
唇を拭う長谷部の目には扇に押し倒される縁司の姿が映し出された。
そんな様子を唖然と見る長谷部と縁司の視界がかち合うと、
ちょいちょい。
指先で扉を差した。
つまりは帰れとの合図を指している。
だが、長谷部は顔を横に振るしかない。
置いてなんか行けないからだ。自身の身代わりをする彼を。
(マジで馬鹿なのかよっ!)
聞き分けのない長谷部に中指を立てて怒りを見せた。
「ねぇ? 少しはおじさんに集中しようよー縁司君w」
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