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#26 会いたい気持ち
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「へぇーンなコアな場所ってあんのねぇw」
「まぁ。俺らには縁がない場所でもあるな、恵」
竜司から根掘り葉掘りと聞いた2人が言い合う。それには竜司もいたたまれずに、顔も真っ赤に染めてしまう。あくまでもソフトに、ハードな事実は言わずにおいた。
流石に、同性の男に咥えられて射精ってしまったことは恥ずかしかったからだ。しかし、胸の突起を舐められたことは声も小さく言ってしまった。
どうして、こうして自身が戸惑っているかを知って欲しかったからだ。
彼は年下だ。
彼は手練れだ。
何よりも、弟の縁司を演じてしまった。
彼は《竜司》を知らない。
「つぅか。縁司さんってわりと厄介者だよなぁ」
「…ノーコメントで」とともみはケーキを頬張った。味は普段よりも美味しくも、決して不味くもないが物足りない味だ。ビターの上の濃厚な舌を麻痺させるような感覚である。
ねっとりとしつこい味。口腔内に残る、なんとも言えない味覚。
しかし、なんとも作ったのが竜司とだけあって、癖になりそうで、たまに食べたくなるそうな不思議なケーキだった。
「そんなんでも可愛い弟さんなんでしょう? 店長にとっては、さ?」
恵も、ケーキを頬張り竜司に聞く。
「っそ、そりゃあー僕にとって縁司は実の兄弟だし、…可愛いよ」
深いため息を吐き、弱々しくも竜司も言い返した。
「そう可愛いがるから縁司さんも調子に乗るんじゃねぇのかなぁ?」
「っそ、それわ…」と目を反らして、頭も項垂れてしまう。
「じゃあ、また縁司さんになりすまして会いにいけばいいんじゃないですか? 一回だけ」
ともみの提案に竜司の口もへの字にままだ。
それは、あまりにリスクが伴う行為でしかない。
「バレたら、…怖いし。おじさん、そんな勇気もないんだ、…ごめん」
「っは! っなぁんだっ、店長のそいつへの想いは、その程度かよっ」
声を大きく上げて恵は竜司に言い捨てた。
それにはともみも、
「っめ、めぐみん!?」
恵の肩に手を置いた。流石に、その言い方はどうだと思ったからだ。
「会いたきゃ会えばいいんだよ。縁司さんのフリでも、初めて会うかのように演技して店長本人として会えばいい。それを咎めるヤツなんかいないじゃん。バレる訳ねえじゃんかwwwww」
若い恵の言葉に竜司もテーブルに肘をつけて頭を抱え込んでしまった。
「こんなおじさんで、年寄りの男を相手にする訳がないじゃないか」
そう、言い聞かせている。
そう、自身に言い訳をする。
「がっかり、させたくないんだよ」
弾んだ胸を抑えこもうともがく。
知ってしまった感情と刺激に足掻く。
「…僕は、彼には会えないんだ」
◆
「っは! これで痛みっ、治まったかよ!」
「はいはい。よくできましたw」
扇は優しく長谷部の頭を撫ぜた。それに長谷部は顔を横にして外させた。
手で払わなかったのは舐めたくなかったからだ。
「触んじゃねぇよっ」
「本当に、もー~~おじさんはお客様でしょ?」
表情を一変させ、雄になる扇に長谷部も息を飲んだ。
「 …もっと、要求してもいいんだよ?」
「っか、勘弁しろよ」
「じゃあ、縁司君のことを話してくれるよねぇ?」
「勘弁しろ!」と長谷部が立ち上がり扇の席から離れた。
背中を見送る扇は、ソファーの背もたれに頭を置いて宙を仰いだ。
そんな彼に。
「また、失恋したんなら。あたしがとことん付き合うわよ、王子様♡」
マユが笑顔で接客をする。
「まだ失恋はしていないよ? おじさんw」
不敵にほくそくんで、マユを扇は見た。
そんな扇にマユも、
「あの新人のこと、本気になっちゃった?」
予想することを口にした。
扇も眼鏡の奥の目を細めた。
「おじさん、かなり好みだからね。縁司君wwww」
はぁ、はぁ――……
「もう無理! もう無理だっ!」
そう何度となく言い漏らした。
店内を小走りに裏へと長谷部は向かう。
一刻も早く、この店を出て竜司の店に行こうと急ぐ。
時間が時間でも、彼の家だ。
「ちょっと! 長谷部ちゃん」
ガシ! と長谷部の腕を海潮が掴み止めた。
「と、父さんっ」
「どこに行くのよ。今日は最後まで居て貰わないと」
「っか、母さんにバレたら、父さんと会えなくなっちゃうよ!?」
「っぐ」と低い声が海潮の口から漏れた。しかし、手は掴んだままだ。
「ねぇ、長谷部ちゃん」
「っな、何?」
「縁司さんとは会っているの?」
長谷部を正面から見据える海潮にタジタジになってしまう。
だが、ここでぼろを出す真似は出来ない。
「俺は会ってないよ。父さん」
「そう」
掴んでいた手を離してため息を吐く海潮に、
「あと、俺さ、昨日からバイト始めたから! もう来れないよっ」
早口で吐き捨てると長谷部は立ち去った。
きょとんとなり見送る海潮。
「バイト? …昨日から??」
「まぁ。俺らには縁がない場所でもあるな、恵」
竜司から根掘り葉掘りと聞いた2人が言い合う。それには竜司もいたたまれずに、顔も真っ赤に染めてしまう。あくまでもソフトに、ハードな事実は言わずにおいた。
流石に、同性の男に咥えられて射精ってしまったことは恥ずかしかったからだ。しかし、胸の突起を舐められたことは声も小さく言ってしまった。
どうして、こうして自身が戸惑っているかを知って欲しかったからだ。
彼は年下だ。
彼は手練れだ。
何よりも、弟の縁司を演じてしまった。
彼は《竜司》を知らない。
「つぅか。縁司さんってわりと厄介者だよなぁ」
「…ノーコメントで」とともみはケーキを頬張った。味は普段よりも美味しくも、決して不味くもないが物足りない味だ。ビターの上の濃厚な舌を麻痺させるような感覚である。
ねっとりとしつこい味。口腔内に残る、なんとも言えない味覚。
しかし、なんとも作ったのが竜司とだけあって、癖になりそうで、たまに食べたくなるそうな不思議なケーキだった。
「そんなんでも可愛い弟さんなんでしょう? 店長にとっては、さ?」
恵も、ケーキを頬張り竜司に聞く。
「っそ、そりゃあー僕にとって縁司は実の兄弟だし、…可愛いよ」
深いため息を吐き、弱々しくも竜司も言い返した。
「そう可愛いがるから縁司さんも調子に乗るんじゃねぇのかなぁ?」
「っそ、それわ…」と目を反らして、頭も項垂れてしまう。
「じゃあ、また縁司さんになりすまして会いにいけばいいんじゃないですか? 一回だけ」
ともみの提案に竜司の口もへの字にままだ。
それは、あまりにリスクが伴う行為でしかない。
「バレたら、…怖いし。おじさん、そんな勇気もないんだ、…ごめん」
「っは! っなぁんだっ、店長のそいつへの想いは、その程度かよっ」
声を大きく上げて恵は竜司に言い捨てた。
それにはともみも、
「っめ、めぐみん!?」
恵の肩に手を置いた。流石に、その言い方はどうだと思ったからだ。
「会いたきゃ会えばいいんだよ。縁司さんのフリでも、初めて会うかのように演技して店長本人として会えばいい。それを咎めるヤツなんかいないじゃん。バレる訳ねえじゃんかwwwww」
若い恵の言葉に竜司もテーブルに肘をつけて頭を抱え込んでしまった。
「こんなおじさんで、年寄りの男を相手にする訳がないじゃないか」
そう、言い聞かせている。
そう、自身に言い訳をする。
「がっかり、させたくないんだよ」
弾んだ胸を抑えこもうともがく。
知ってしまった感情と刺激に足掻く。
「…僕は、彼には会えないんだ」
◆
「っは! これで痛みっ、治まったかよ!」
「はいはい。よくできましたw」
扇は優しく長谷部の頭を撫ぜた。それに長谷部は顔を横にして外させた。
手で払わなかったのは舐めたくなかったからだ。
「触んじゃねぇよっ」
「本当に、もー~~おじさんはお客様でしょ?」
表情を一変させ、雄になる扇に長谷部も息を飲んだ。
「 …もっと、要求してもいいんだよ?」
「っか、勘弁しろよ」
「じゃあ、縁司君のことを話してくれるよねぇ?」
「勘弁しろ!」と長谷部が立ち上がり扇の席から離れた。
背中を見送る扇は、ソファーの背もたれに頭を置いて宙を仰いだ。
そんな彼に。
「また、失恋したんなら。あたしがとことん付き合うわよ、王子様♡」
マユが笑顔で接客をする。
「まだ失恋はしていないよ? おじさんw」
不敵にほくそくんで、マユを扇は見た。
そんな扇にマユも、
「あの新人のこと、本気になっちゃった?」
予想することを口にした。
扇も眼鏡の奥の目を細めた。
「おじさん、かなり好みだからね。縁司君wwww」
はぁ、はぁ――……
「もう無理! もう無理だっ!」
そう何度となく言い漏らした。
店内を小走りに裏へと長谷部は向かう。
一刻も早く、この店を出て竜司の店に行こうと急ぐ。
時間が時間でも、彼の家だ。
「ちょっと! 長谷部ちゃん」
ガシ! と長谷部の腕を海潮が掴み止めた。
「と、父さんっ」
「どこに行くのよ。今日は最後まで居て貰わないと」
「っか、母さんにバレたら、父さんと会えなくなっちゃうよ!?」
「っぐ」と低い声が海潮の口から漏れた。しかし、手は掴んだままだ。
「ねぇ、長谷部ちゃん」
「っな、何?」
「縁司さんとは会っているの?」
長谷部を正面から見据える海潮にタジタジになってしまう。
だが、ここでぼろを出す真似は出来ない。
「俺は会ってないよ。父さん」
「そう」
掴んでいた手を離してため息を吐く海潮に、
「あと、俺さ、昨日からバイト始めたから! もう来れないよっ」
早口で吐き捨てると長谷部は立ち去った。
きょとんとなり見送る海潮。
「バイト? …昨日から??」
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