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#23 長谷部とバイト
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スイーツカフェ【極道】は名前こそアレで、強面の従業員もアレだが、味には好評もあり一度となく脚を踏み入れ、一口と食べた日から虜になって、常連に変わる。
本当に店の名前で損をするという勿体無いという、隠れた名店扱いにもなっていた。
そこの責任者であり仕切るのが棗竜司だ。
店のケーキの全品は竜司のレシピ。
コーヒーは歴代の店長のお眼鏡にかかった豆である。
さらに店のBGMは、昔はどこの店にもあったレコードの機械で客の好みの曲を流すことが出来る為に取り合いに発展するときもあるが、起こってしまった場合の店の規則は出禁だ。
至極の時間を味わえる、雰囲気のある空間を癒しに、会社員や主婦などが足しげく通う訳だ。
「今日からようやくアルバイトが増えるんだよ! みんなっ」
「っしゃ!」「辞めなきゃいいね」と対照的な声も同時になった。
紹介をされたのは、学校からそのまま来た――土岐長谷部だ。
長谷部も初めてのアルバイトで、ドキドキと頬を朱に染めていた。
「彼は16歳の高校生だからね、親切に教えてあげておくれよ?」
「おう! やぁ、俺は春日部ともみっての。よろしくな」と胸のネームプレートを見せた。垂れ目で色黒の彼に「よろしくお願いします」とたどたどしく言い返す。
そんな怯える長谷部に切れ長のつり目で、オールバックで見せる額に横一文字に傷がある色白な、もう1人のアルバイト従業員。
「俺は吉川恵だ。ビシバシと鍛えるかんなw 途中でトンズラしやがったら家に乗り込むかんなぁwwwww」
末恐ろしい言葉を吐き捨てた恵に、長谷部の身体が震えた。
冗談半分に脅す恵に、
「めぐみん君!?」
上擦った口調で竜司も声をかけた。
「やだなぁ~~冗談すってぇwwwww」なんて口しか笑っていない恵に、ばしん! とともみが頭を叩いた。
「長谷部君の自己紹介終わり! ささ、仕事に戻ってっ」
パンパパン! と手を叩く竜司に長谷部も困惑しかない。
狼狽える長谷部を竜司が手招く。
「食器洗いしょう?」
にこやかにいう竜司に「はい!」と長谷部も笑顔で頷いた。
裏に行く長谷部に恵とともみが見つめていた。
「高校生にゃあ見えねぇくれぇにガチムチだなぁ~~絶対ぇ、あいつぁ、男にモテるぜw」
「可愛いし。俺たちで守らないとな、めぐみんw」
ともみは恵の肩を叩くと、恵も苦笑を向けた。
◆
「あのよぉう、…竜司さん」
「ん? 何かなぁ?」
裏の調理場で長谷部はケーキを作る竜司にいうのだが、中々と次の言葉を吐かない長谷部に、竜司も察したのか顔を上げた。
「縁司君は店には入らないし寄らないから安心してもいいよ。長谷部君」
「! っそ、そうなんか!? っよ、かったぁ~~」
安心に膝を折って長谷部はしゃがみ込んでしまう。
心底からの安堵のため息に竜司も苦笑するしかない。
余程に縁司が嫌なんだな、と。
(来ないとは思うけど。長谷部君がバイトで来ていることは言わない様にしないとだよなぁ)
「だから、安心してバイトに励んで欲しいなぁ、おじさん」
長谷部は勢いよく立ち上がると、
「分かってるよ! 店長っ」
再び皿洗いへと喜々として戻った。
頼もしい助っ人に、今日初めて縁司に感謝をするのだった。
本当に店の名前で損をするという勿体無いという、隠れた名店扱いにもなっていた。
そこの責任者であり仕切るのが棗竜司だ。
店のケーキの全品は竜司のレシピ。
コーヒーは歴代の店長のお眼鏡にかかった豆である。
さらに店のBGMは、昔はどこの店にもあったレコードの機械で客の好みの曲を流すことが出来る為に取り合いに発展するときもあるが、起こってしまった場合の店の規則は出禁だ。
至極の時間を味わえる、雰囲気のある空間を癒しに、会社員や主婦などが足しげく通う訳だ。
「今日からようやくアルバイトが増えるんだよ! みんなっ」
「っしゃ!」「辞めなきゃいいね」と対照的な声も同時になった。
紹介をされたのは、学校からそのまま来た――土岐長谷部だ。
長谷部も初めてのアルバイトで、ドキドキと頬を朱に染めていた。
「彼は16歳の高校生だからね、親切に教えてあげておくれよ?」
「おう! やぁ、俺は春日部ともみっての。よろしくな」と胸のネームプレートを見せた。垂れ目で色黒の彼に「よろしくお願いします」とたどたどしく言い返す。
そんな怯える長谷部に切れ長のつり目で、オールバックで見せる額に横一文字に傷がある色白な、もう1人のアルバイト従業員。
「俺は吉川恵だ。ビシバシと鍛えるかんなw 途中でトンズラしやがったら家に乗り込むかんなぁwwwww」
末恐ろしい言葉を吐き捨てた恵に、長谷部の身体が震えた。
冗談半分に脅す恵に、
「めぐみん君!?」
上擦った口調で竜司も声をかけた。
「やだなぁ~~冗談すってぇwwwww」なんて口しか笑っていない恵に、ばしん! とともみが頭を叩いた。
「長谷部君の自己紹介終わり! ささ、仕事に戻ってっ」
パンパパン! と手を叩く竜司に長谷部も困惑しかない。
狼狽える長谷部を竜司が手招く。
「食器洗いしょう?」
にこやかにいう竜司に「はい!」と長谷部も笑顔で頷いた。
裏に行く長谷部に恵とともみが見つめていた。
「高校生にゃあ見えねぇくれぇにガチムチだなぁ~~絶対ぇ、あいつぁ、男にモテるぜw」
「可愛いし。俺たちで守らないとな、めぐみんw」
ともみは恵の肩を叩くと、恵も苦笑を向けた。
◆
「あのよぉう、…竜司さん」
「ん? 何かなぁ?」
裏の調理場で長谷部はケーキを作る竜司にいうのだが、中々と次の言葉を吐かない長谷部に、竜司も察したのか顔を上げた。
「縁司君は店には入らないし寄らないから安心してもいいよ。長谷部君」
「! っそ、そうなんか!? っよ、かったぁ~~」
安心に膝を折って長谷部はしゃがみ込んでしまう。
心底からの安堵のため息に竜司も苦笑するしかない。
余程に縁司が嫌なんだな、と。
(来ないとは思うけど。長谷部君がバイトで来ていることは言わない様にしないとだよなぁ)
「だから、安心してバイトに励んで欲しいなぁ、おじさん」
長谷部は勢いよく立ち上がると、
「分かってるよ! 店長っ」
再び皿洗いへと喜々として戻った。
頼もしい助っ人に、今日初めて縁司に感謝をするのだった。
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