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#5 マユからの業務指導
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竜司は海潮の店へは裏口から入った為に、店内がどういった装飾をしているのかなんか知らなかったのだが。マユに腕を引かれ店内へと一歩と、踏み込めば――
「っこ、これわ…」
薄暗い空間に、色とりどりの裸電球が発光し点滅をしていた。
「ぅ、わぁ」とため息を漏らす程に、竜司とは縁もなさそうな空間でしかない。電球のみの薄暗い中を、多くの客がいるのが見えた。身長の高く、肉づきもいい身体なのが分かる。
「ママの知り合いならぁ、言わなくても分かるんだよね?」
マユが喜々とした口調で竜司に聞くのだが、それには流石に竜司も狼狽えた。
「っし、知らないよ!? っぼ、僕はこういったお店とか初めてなんだから!」
「? 嘘だぁ~~♡」と竜司を見てマユも苦笑するのだが。彼の涙目となった表情を見て。
「…マジ、なのぉう!?」
一切の嘘ではないと察し、一気に嫌な顔に変えてしまう。
その顔はあまりにも可愛くないしわを眉間に寄せている。
「じゃあ~~説明をするよ?」とマユが手を離した。
竜司も喉を鳴らして、辺りを見渡してしまう。
「フロアーは邪魔だね。カウンターに行きましょう♡」
改めて手を掴み、マユは竜司を誘導をした。
男の手とは思えないほどに、ママ同様に柔らかい手だった。
「ここがメンズカフェってことは聞いたと思うの。でも、もちろん、普通じゃないわよ? あそこに棒が見える? 新人君」
「? あ、はい」
店内の中心に広い空間があった。そこにはピアノと、三本の棒が天井から地面へと突き刺さっていた。竜司にとって、それがどんな風に使われるのかなんか、思いもしないし、知る由もない。
「あの棒が、…なんなんですか?」
きょとんと聞き返す竜司に、
「従業員がポールダンスをするのよ」
にこやかに言ったのだが、その言葉すら意味が分からない。
「ポール、…ダンス????」
真顔になってしまう竜司に、ため息をするとマユが棒へと駆け寄った。
「っこぉー~~んなかんじぃい!」
華奢な身体を棒に巻き、腕先一本で向きや、身体の重力すら無視し動かす。
辺りの客からは盛大な拍手が送られた。口笛の大合唱も鳴った。
突然の行為に、辺りが一気に熱気が帯びた。
ふぅ~~と息を吐き、にこやかに竜司の元に戻るマユの額には汗が伝っていた。スムーズに行ったと思っていた竜司は驚きを隠せない。彼は、彼女はプロなのだと。
たとえ一瞬であれ。開店をすれば遊びではしないという意識だ。
収入を得る為の技術を竜司に披露をしたことに、
「あ。汗が出ているよ! マユさんっ」
慌てて竜司はハンカチを出し額を拭ったのだが。
「あ! ぉ、お化粧、…ごめんよぉう」
マユがしている化粧を思い出し、バツの悪そうな表情をマユに向けた。それにはマユも、きょとんとなってしまうのだが、すぐに「ありがとうございます」とはにかんだ。
「それにしても、そのポールダンスってのはすごいんだね! 棒を使って、身体をこうして! ああやって! 僕なんかには無理だなぁ」
首を擦ってマユを待っ過ぎに見据える竜司。
「教えてあげるよ? あたしが」
「! ぃ、いいよ! 僕は年寄りだからねっ! 全身筋肉痛になったちゃった、当分の間は治らないし」
「え?」
「あ! …ぁ、あとはどんなことをするお店なんだい? ここは」
話しをはぐらかそうと竜司がマユに聞く。
「あのピアノを弾くのも出来るわよ。あとは、お客様の接客をするの♡」
聞かれたマユも竜司に意地悪い笑顔を向けた。
(なんだ。接客くらいなら、いつも店でしているしなぁ)
なんとかなりそうだと竜司も軽く頷いた。
「じゃあ。僕は何をしたらいいのかな?」
「そうだなぁ~~まだ、【あの】時間じゃないしぃ。その椅子にで――」と言いかけるとポンポーンと注文のベルが鳴った。掲示板に机の番号が点滅をしている。
「あ。注文かい? 僕が行こうか?」
椅子に座っていなかった竜司がマユに聞く。
「じゃあ。お願いしょうかしら♡」
「うん!」
小走りに行く竜司の背中を見送りながらマユは、
「…何、あの――自然培養って感じのお子様は」
毒気吐いて、頭を掻いた。
「調子、狂うなぁ」
そう大きくため息を吐いたマユの元に竜司が走って戻って来た。
「? 何、どうかしたの?」
「…どうやって、注文を受けたらいいんだろうか?」
「あー~~…そこからか!」
竜司は口をへの字に、バツの悪そうな表情を少し斜めに下げていた。
勢いよく出て行った、この様が恥ずかしかったからだ。
「いいよ! あたしが行くから君は座ってて♡」
ウインクをしてカウンターから出て行くマユに言われ、ストンと竜司も腰を椅子に据えた。
「…僕って、本当に馬鹿だなぁ…」
「っこ、これわ…」
薄暗い空間に、色とりどりの裸電球が発光し点滅をしていた。
「ぅ、わぁ」とため息を漏らす程に、竜司とは縁もなさそうな空間でしかない。電球のみの薄暗い中を、多くの客がいるのが見えた。身長の高く、肉づきもいい身体なのが分かる。
「ママの知り合いならぁ、言わなくても分かるんだよね?」
マユが喜々とした口調で竜司に聞くのだが、それには流石に竜司も狼狽えた。
「っし、知らないよ!? っぼ、僕はこういったお店とか初めてなんだから!」
「? 嘘だぁ~~♡」と竜司を見てマユも苦笑するのだが。彼の涙目となった表情を見て。
「…マジ、なのぉう!?」
一切の嘘ではないと察し、一気に嫌な顔に変えてしまう。
その顔はあまりにも可愛くないしわを眉間に寄せている。
「じゃあ~~説明をするよ?」とマユが手を離した。
竜司も喉を鳴らして、辺りを見渡してしまう。
「フロアーは邪魔だね。カウンターに行きましょう♡」
改めて手を掴み、マユは竜司を誘導をした。
男の手とは思えないほどに、ママ同様に柔らかい手だった。
「ここがメンズカフェってことは聞いたと思うの。でも、もちろん、普通じゃないわよ? あそこに棒が見える? 新人君」
「? あ、はい」
店内の中心に広い空間があった。そこにはピアノと、三本の棒が天井から地面へと突き刺さっていた。竜司にとって、それがどんな風に使われるのかなんか、思いもしないし、知る由もない。
「あの棒が、…なんなんですか?」
きょとんと聞き返す竜司に、
「従業員がポールダンスをするのよ」
にこやかに言ったのだが、その言葉すら意味が分からない。
「ポール、…ダンス????」
真顔になってしまう竜司に、ため息をするとマユが棒へと駆け寄った。
「っこぉー~~んなかんじぃい!」
華奢な身体を棒に巻き、腕先一本で向きや、身体の重力すら無視し動かす。
辺りの客からは盛大な拍手が送られた。口笛の大合唱も鳴った。
突然の行為に、辺りが一気に熱気が帯びた。
ふぅ~~と息を吐き、にこやかに竜司の元に戻るマユの額には汗が伝っていた。スムーズに行ったと思っていた竜司は驚きを隠せない。彼は、彼女はプロなのだと。
たとえ一瞬であれ。開店をすれば遊びではしないという意識だ。
収入を得る為の技術を竜司に披露をしたことに、
「あ。汗が出ているよ! マユさんっ」
慌てて竜司はハンカチを出し額を拭ったのだが。
「あ! ぉ、お化粧、…ごめんよぉう」
マユがしている化粧を思い出し、バツの悪そうな表情をマユに向けた。それにはマユも、きょとんとなってしまうのだが、すぐに「ありがとうございます」とはにかんだ。
「それにしても、そのポールダンスってのはすごいんだね! 棒を使って、身体をこうして! ああやって! 僕なんかには無理だなぁ」
首を擦ってマユを待っ過ぎに見据える竜司。
「教えてあげるよ? あたしが」
「! ぃ、いいよ! 僕は年寄りだからねっ! 全身筋肉痛になったちゃった、当分の間は治らないし」
「え?」
「あ! …ぁ、あとはどんなことをするお店なんだい? ここは」
話しをはぐらかそうと竜司がマユに聞く。
「あのピアノを弾くのも出来るわよ。あとは、お客様の接客をするの♡」
聞かれたマユも竜司に意地悪い笑顔を向けた。
(なんだ。接客くらいなら、いつも店でしているしなぁ)
なんとかなりそうだと竜司も軽く頷いた。
「じゃあ。僕は何をしたらいいのかな?」
「そうだなぁ~~まだ、【あの】時間じゃないしぃ。その椅子にで――」と言いかけるとポンポーンと注文のベルが鳴った。掲示板に机の番号が点滅をしている。
「あ。注文かい? 僕が行こうか?」
椅子に座っていなかった竜司がマユに聞く。
「じゃあ。お願いしょうかしら♡」
「うん!」
小走りに行く竜司の背中を見送りながらマユは、
「…何、あの――自然培養って感じのお子様は」
毒気吐いて、頭を掻いた。
「調子、狂うなぁ」
そう大きくため息を吐いたマユの元に竜司が走って戻って来た。
「? 何、どうかしたの?」
「…どうやって、注文を受けたらいいんだろうか?」
「あー~~…そこからか!」
竜司は口をへの字に、バツの悪そうな表情を少し斜めに下げていた。
勢いよく出て行った、この様が恥ずかしかったからだ。
「いいよ! あたしが行くから君は座ってて♡」
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「…僕って、本当に馬鹿だなぁ…」
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