ママ活しておこずかいを稼ごうとした弟の身代わりが、40歳過ぎた冴えない僕でもいいですか?

ちさここはる

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#5 マユからの業務指導

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 竜司は海潮の店へは裏口から入った為に、店内がどういった装飾をしているのかなんか知らなかったのだが。マユに腕を引かれ店内へと一歩と、踏み込めば――

「っこ、これわ…」

 薄暗い空間に、色とりどりの裸電球が発光し点滅をしていた。
「ぅ、わぁ」とため息を漏らす程に、竜司とは縁もなさそうな空間でしかない。電球のみの薄暗い中を、多くの客がいるのが見えた。身長の高く、肉づきもいい身体なのが分かる。
「ママの知り合いならぁ、言わなくても分かるんだよね?」
 マユが喜々とした口調で竜司に聞くのだが、それには流石に竜司も狼狽えた。
「っし、知らないよ!? っぼ、僕はこういったお店とか初めてなんだから!」
「? 嘘だぁ~~♡」と竜司を見てマユも苦笑するのだが。彼の涙目となった表情を見て。

「…マジ、なのぉう!?」

 一切の嘘ではないと察し、一気に嫌な顔に変えてしまう。
 その顔はあまりにも可愛くないしわを眉間に寄せている。
「じゃあ~~説明をするよ?」とマユが手を離した。
 竜司も喉を鳴らして、辺りを見渡してしまう。
「フロアーは邪魔だね。カウンターに行きましょう♡」
 改めて手を掴み、マユは竜司を誘導をした。
 男の手とは思えないほどに、ママ同様に柔らかい手だった。

「ここがメンズカフェってことは聞いたと思うの。でも、もちろん、普通じゃないわよ? あそこに棒が見える? 新人君」

「? あ、はい」

 店内の中心に広い空間があった。そこにはピアノと、三本の棒が天井から地面へと突き刺さっていた。竜司にとって、それがどんな風に使われるのかなんか、思いもしないし、知る由もない。
「あの棒が、…なんなんですか?」
 きょとんと聞き返す竜司に、
「従業員がポールダンスをするのよ」
 にこやかに言ったのだが、その言葉すら意味が分からない。
「ポール、…ダンス????」
 真顔になってしまう竜司に、ため息をするとマユが棒へと駆け寄った。

「っこぉー~~んなかんじぃい!」

 華奢な身体を棒に巻き、腕先一本で向きや、身体の重力すら無視し動かす。
 辺りの客からは盛大な拍手が送られた。口笛の大合唱も鳴った。
 突然の行為に、辺りが一気に熱気が帯びた。
 ふぅ~~と息を吐き、にこやかに竜司の元に戻るマユの額には汗が伝っていた。スムーズにおこなったと思っていた竜司は驚きを隠せない。彼は、彼女はプロなのだと。
 たとえ一瞬であれ。開店をすれば遊びではしないという意識だ。
 収入を得る為の技術を竜司に披露をしたことに、
「あ。汗が出ているよ! マユさんっ」
 慌てて竜司はハンカチを出し額を拭ったのだが。
「あ! ぉ、お化粧、…ごめんよぉう」
 マユがしている化粧を思い出し、バツの悪そうな表情をマユに向けた。それにはマユも、きょとんとなってしまうのだが、すぐに「ありがとうございます」とはにかんだ。
「それにしても、そのポールダンスってのはすごいんだね! 棒を使って、身体をこうして! ああやって! 僕なんかには無理だなぁ」
 首を擦ってマユを待っ過ぎに見据える竜司。
「教えてあげるよ? あたしが」
「! ぃ、いいよ! 僕は年寄りだからねっ! 全身筋肉痛になったちゃった、当分の間は治らないし」
「え?」
「あ! …ぁ、あとはどんなことをするお店なんだい? ここは」
 話しをはぐらかそうと竜司がマユに聞く。
「あのピアノを弾くのも出来るわよ。あとは、お客様の接客をするの♡」
 聞かれたマユも竜司に意地悪い笑顔を向けた。

(なんだ。接客くらいなら、いつも店でしているしなぁ)

 なんとかなりそうだと竜司も軽く頷いた。

「じゃあ。僕は何をしたらいいのかな?」

「そうだなぁ~~まだ、【あの】時間じゃないしぃ。その椅子にで――」と言いかけるとポンポーンと注文オーダーのベルが鳴った。掲示板にテーブルの番号が点滅をしている。
「あ。注文かい? 僕が行こうか?」
 椅子に座っていなかった竜司がマユに聞く。
「じゃあ。お願いしょうかしら♡」
「うん!」
 小走りに行く竜司の背中を見送りながらマユは、

「…何、あの――自然培養って感じのお子様は」

 毒気吐いて、頭を掻いた。

「調子、狂うなぁ」

 そう大きくため息を吐いたマユの元に竜司が走って戻って来た。

「? 何、どうかしたの?」
「…どうやって、注文を受けたらいいんだろうか?」
「あー~~…そこからか!」
 竜司は口をへの字に、バツの悪そうな表情を少し斜めに下げていた。
 勢いよく出て行った、この様が恥ずかしかったからだ。
「いいよ! あたしが行くから君は座ってて♡」
 ウインクをしてカウンターから出て行くマユに言われ、ストンと竜司も腰を椅子に据えた。

「…僕って、本当に馬鹿だなぁ…」
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