何度でも、やさしい嘘にキスをしろ。【完全版】

ちさここはる

文字の大きさ
上 下
146 / 148

EP:146 君は死に体

しおりを挟む
 鼻がくすぐったくて、
「…んぅ???? なんだぁー」
 ラバーは目を醒ました。
 真っ暗な中はずが灯りがうっすらとあった。
 場所は牢獄ではなく特別部屋プライベートルーム

「ああ。起きたのかい? 相変わらず、鈍いねぇ~~あんたって男はさぁ~~」

 声は低く、酒に焼かれたかのようだ。
 しかし、その声には聞き覚えがある。
 女の中では間違いなく彼女は、ラバーにとっての一番星だ。

「…ああ。ジュエルか。ってこたぁ…そっか、そうかい。なるほどなぁ」
「勘がいいってのに。どうして、今、あんたがここに入っているのかが。未だに信じられないよ。あたしゃ」

「ふは! ははは! っはっはっは! 私もさ、ジュエル…来いよ」

 腕を伸ばして彼女を呼び寄せた。
 呼ばれたジュエルも服をぎ捨てながらラバーの傍へと行く。
「おいおい。裸になってナニする気だよ――歳も考えろよ。馬鹿ジュエルよぉ」
 呆れる様子のラバーの両頬を正面から掴んだ。
 
「あんたの子種を寄越しなさい」

 強い目力のジュエルがラバーを見下ろした。
 ジュエルは五十代にしては美しく身体の線も崩れていない上に。
 まだ、二十代――十代と言っても通る程に若い。
ホープも世帯を持ったんだもの。あたしも欲しかったじゃないか、あんたとの――2人きりの余生を…なのに、あんたは…あんたって馬鹿はさ…この様で。しかも――処刑されちまうってきてる!」
 上擦った声で、叫んでいた。
 彼女もアイジ同様に――心の底から。
 ホープよりも愛していると、離れてからようやく気がついた。

 遅すぎるとは、自身も嘲笑してしまう。
 だが、まだ大丈夫なこともある。
 まだ――閉口していないということだ。

「あたしがあんたを産んであげるわ。だから――あたしのなかに注ぎ込みなさいよ」

「魅惑的で眩暈を起こしそうな誘惑だな。本当にいい女だわ。お前さんは」
「そうでしょう? 今さらじゃないの??」
「かもな」
 ラバーはジュエルの首を掴み、ゆっくりと口づけをした。

「いい年こいて子作りをするたぁー思いもしなかったぜ」

 苦笑交じりに言うとラバーはジュエルをベッドへとねじ伏せた。

 ◇◆

「おい。囚人ラバー…出ろ」

 職務をする日中の看守の声にラバーも頷いた。
 ゆっくりとした動作で、ギシ! とベッドを軋ませて立ち上がる。
「ああ。そぅすっかー」
 首を回して、腕を回転させた。
 いつもは騒がしい程の監獄は静まり返っている。どこからかすすり泣く声が聞える始末だ。

「ふは! ははは! っはっはっは! うん。悪くねぇ気分だ」

 手錠をさせられることもなく。
 3人の看守たちと長く、薄暗い廊下を進んで行く。
 そんなときだ。

 弾。

 一発の銃弾がラバーの頭部を貫通し、額から飛び出た。

 弾ッ!

 一発の銃弾がラバーの右目に貫通し、眼球が破裂した。

 弾ッッ‼

 一発の銃弾がラバーの喉を貫通し、食道を破壊した。

 弾ッッッッ‼‼

 一発の銃弾がラバーの胸を貫通し、心臓の中を噛み抜けた。

「「「!?」」」

 三人の看守たちも動揺した。
 肉塊になってしまったラバーの身体が。

 ドォオオオオンンンッッッッ‼‼

 大きな音を立てて廊下へと崩れ落ちた。
 銃弾によって開いた穴から止めどなく血液が溢れ出てくる。
 ラバーの破片も飛び散っていた。

 耳を塞ぐゲイリーを安住がぎゅっと抱きしめていた。
 ゲイリーの表情は真っ青で、口がわなわなと震えている。

「ボス…ボス…――父さんンんんッッ」

 涙を堪えていているゲイリーに、
「泣きなよ。泣いてもいいんだよ?」
 安住が言うも、ゲイリーは顔を横に振った。

 ◇◆

「あんたが死ぬ日に来て驚かしてやろうと。ずっと計画してたんだ」
「へぇ? んで、こんな海上要塞までわざわっざ、SEXしに来ようと? 本当にどうしょうもねぇなぁーお前さんは」

「煩いわね。光栄に思いなさいよ…愛されていることをね!」

 髪からお湯の粒を落としながら、着替え終わったジュエルをラバーが葉巻を吸う。
 灰色の息をを吐きジュエルに態と聞く、
「まだ。り足りないってのかい? 性欲の塊なのは相変わらずだねぇ? ふふふ」
 ジュエルが少女のようにはにかんだ。

「いいや。アイジとも…したかったなと思ってよぉー」

「はァ?! っざけんじゃないわよ!」

 バキ! と頬を拳で殴るジュエル。
 顔が真っ赤に染まっている。怒りの色だ。

「ああ。エルドにゃあ――あの件を進めてくれって伝えてくれ。どうせ、もう完了してるハズだ。あの馬鹿ホープがいりゃあ…希望はあるってもんさ。お前さんの弟ぁ…いい男だ」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

男は休憩も許されぬ身体を独房の中でくねらせる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

嫌われ者の長男

りんか
BL
学校ではいじめられ、家でも誰からも愛してもらえない少年 岬。彼の家族は弟達だけ母親は幼い時に他界。一つずつ離れた五人の弟がいる。だけど弟達は岬には無関心で岬もそれはわかってるけど弟達の役に立つために頑張ってるそんな時とある事件が起きて.....

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...