何度でも、やさしい嘘にキスをしろ。【完全版】

ちさここはる

文字の大きさ
上 下
136 / 148

EP:136 言葉はいらない

しおりを挟む
「会いたくなかっただァー~~?? あァ゛??」

 セスナは首元をキツく掴んで絞めつけた。

「ぅ゛ー~~っつ」

「だから! そんなんで! そんな理由で!? 帰って来なかったってのかァ゛??」
 ゲイリーは絞めてつける、その手を掴んだ。
 いや、手を添えた。
 その手は、苦しさに震えているのが分かる。

「き、君を見ると――看守さん達を思い出すから……怖い、んだよー」

 息絶え絶えに言うゲイリーに。
 セスナの顔から怒りの色が消え失せ、手を離した。ギシ! とベッドの上に腰を据えた。
 そして、小さく呟くのだった。

「怖いか。俺様が……――」

 開放されたゲイリーは大きく咳き込み。
 息を吸った。

「どうして…なのかなー? ボクにも分かんないだけどー」

「…なんで。戻って来やがったんだ。ずっと、雲隠れしてりゃあよかったじゃねぇかよ。手前」
「えーアズミに会えないの嫌だもんー」
「…手前にゃあ一緒に雲隠れするって知恵はねぇのかよ?? っは! 本当に馬鹿じゃねぇのかァ??」
 そんなセスナの言葉に。
 ゲイリーの表情も強張った。

 まさに。
 その手があったか! とばかりに。

「そんなの。僕が許さないよ。ふざけるんじゃない」

 セスナの言葉に。
 安住の恋人でもあるフロイが、口を挟んだ。

「アズミを隠してみろ。僕は君を殺すよ」
「っふ、フロ――イトウ! イトウ! スットップぅうう‼」

 安住が慌ててフロイを横から抱き締めた。
 それに、鼻下を伸ばすフロイの顔もほころんでいて。

「帰って来たってこたぁー看守連中に犯されるってことだぜ? 覚悟は出来てんだろうなァ??」

「えー流石にさー看守さん達だって、次の囚人相手が居るでしょうーあの人たちが、性処理をしない訳ないじゃないかーっふふふ♡ ボクなんかに興味なんかなくなっててーでも。《独房》は覚悟しなきゃいけないよねー…アズミとまたー離れちゃうなーぅうんー~~」

 そう笑いながらゲイリーが身体を起き上がらせ。肩を揺らして、楽しそうな半面。
 これから来る反動を、想像したのか。
 顔を曇らせた。

「も、もし…っそ、その囚人相手がいなかったら…」
「えー? いるでしょうーいない訳ないもんーケダモノなのにー」
「だから。いなかったら――……」

「ないない♡ あり得ないよー~~♡」

 手を振って否定するゲイリーの行動に、安住の顔が真っ青になっていってしまう。
 本当に。
 夜は静かで。

 静か過ぎるほどだった。

(っよ、よせ! ゲイリー~~そいつを挑発するなぁ~~‼)

 それほどまでに。
 ゲイリーの言う――看守さん達は。

 ゲイリーに飢えていた。

「…手前。雲隠れしてたときに…誰かとシたか?」
「? しないよー身う――…相手がいなかったもん♡ あ。でも、何回か、噛まれちゃったかな? んー痕は残っていないとは思うけどー…え? それって君に関係あるの??」

「生理は?? 本当に終わったのか?!」

 凄味のある。えらい剣幕のセスナの言葉に、ゲイリーも、嘘を吐くことも忘れていて。
 小さく頷いてしまう。

「…君に。関係、ないよねぇ? え? 怖い…んだけどー??」

 怯えるゲイリーの顔を見ながら。
 セスナが舌なめずりをした。

「夜が楽しみだなァ゛! 」

 ぞく!

 ぞくぞく!

「おかしな人だなー本当にー怖いんだけどー」

 ゲイリーは乱れた髪を手櫛で整えながら。
 セスナに言う、と。
「可愛くないことばっか言う唇だなァ!」
 彼の頭部に手を回すと、強く掴み。
 強引に顔を引き寄せると。

 ちゅ。

 ソフトな口づけをした。
 これは。
 セスナとの初めてのキスでもあった。

「キスもしてきてねぇのかァ??」

「それは寝る前にするものでしょーもー~~」

 ピシ。

 ピシピシ――……。

「手前ェ゛‼」

 セスナが正面から手で口を開かせると。

「んぅ??」

 強引に口づけをすると。
 ゲイリーを押し倒して、息を吸いとるほどに。
 舌を絡め、誉めた。

「ん♡ っん♡ んぁ゛♡♡♡」

 胸を押していた手も。
 軽く添えられているものになってしまう。
 トロ顔になり、飲み切れない唾液が頬を汚していく。
 セスナも、満足気に唇を離した。
 ゲイリーの頬についた唾液を指先で拭い。
 舐めた。

 身体をヒくつかせるゲイリーを見下ろすと。

「帰るぞ。手前ら!」

 これから訪れる夜の時間に。
 思い馳せ、そして、心をセスナは躍らせた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

男は休憩も許されぬ身体を独房の中でくねらせる

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

後輩に嫌われたと思った先輩と その先輩から突然ブロックされた後輩との、その後の話し…

まゆゆ
BL
澄 真広 (スミ マヒロ) は、高校三年の卒業式の日から。 5年に渡って拗らせた恋を抱えていた。 相手は、後輩の久元 朱 (クモト シュウ) 5年前の卒業式の日、想いを告げるか迷いながら待って居たが、シュウは現れず。振られたと思い込む。 一方で、シュウは、澄が急に自分をブロックしてきた事にショックを受ける。 唯一自分を、励ましてくれた先輩からのブロックを時折思い出しては、辛くなっていた。 それは、澄も同じであの日、来てくれたら今とは違っていたはずで仮に振られたとしても、ここまで拗らせることもなかったと考えていた。 そんな5年後の今、シュウは住み込み先で失敗して追い出された途方に暮れていた。 そこへ社会人となっていた澄と再会する。 果たして5年越しの恋は、動き出すのか? 表紙のイラストは、Daysさんで作らせていただきました。

『これで最後だから』と、抱きしめた腕の中で泣いていた

和泉奏
BL
「…俺も、愛しています」と返した従者の表情は、泣きそうなのに綺麗で。 皇太子×従者

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

拝啓お父様。私は野良魔王を拾いました。ちゃんとお世話するので飼ってよいでしょうか?

ミクリ21
BL
ある日、ルーゼンは野良魔王を拾った。 ルーゼンはある理由から、領地で家族とは離れて暮らしているのだ。 そして、父親に手紙で野良魔王を飼っていいかを伺うのだった。

処理中です...