何度でも、やさしい嘘にキスをしろ。【完全版】

ちさここはる

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EP:134 君に恋、焦がれた

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 シャワー室の中で安住はゲイリーに抱き着いていた。そんな彼にゲイリーも苦笑している。

「今まで…どこにいたんだよ。すっごく、心配してたんだからな!」

「ごめんねーアズミーボクもーか! ってなちゃってー看守さん達に出して貰ってねー特別部屋プライベートルームに行ったんだよーボスにボクの認証してもらってたからー」
「聞いてないぞ…そんな話し」
 安住の言葉に、
「言いそびれちゃってたーえへー~~」
 ゲイリーもはにかんだ。
 本来なら、ここで怒りたいが。
 根本的に悪いのが自身である以上と、彼が可愛い過ぎて。
 安住には出来なかった。

 そこから。
 ゲイリーは潜伏生活を喜々と言った。

「――え゛」

 聞かされた安住は、口をあんぐりとさせてしまう。

「マヂで? その話し」

「? うんーボクが嘘を吐くと思うのーアズミー」

 その言葉に安住も。
 顔を横に振った。

 ゲイリーが言うには。
 ラバーの特別部屋の奥にさらに部屋があって。
 そこはPC環境もあり。ネットやアニメに映画が可能な空間だった。

「ボスもーおやつとか持ってきてくれたりー…なんか、女性講座とかやり始めたり…でね! 若とか、パパが来てたりしてね! すっごく愉しかったんだー」

(何それ。竜宮城かよ)

 一家団欒を。
 よりよってゲイリーはしていた訳だ。
 4日で帰るはずが大幅に延長したのも。
 その為だった。

「…どうして。帰って来たの? 楽しかったんならさ」

「? えーアズミに会いたかったからだよー」
「‼ ゲイリー~~ッッ‼」
 さらに抱き着く安住ゲイリーも背中を擦った。
「うん。本当にごめんねーアズミー」
 安住も頷いたが。

 そんなときだった。

「アズミ? 水はー…ぅわ。結構、大洪水みたいだ」

 フロイが牢獄にやって来た。
 他の2人を連れて。

「「!?」」

 それに安住たちも慌ててしまう。
 安住はゲイリーを1人を残して、フロイの元へと走った。

「っだ、大丈夫だよ! うん! ありがとう!」

「? そう? には…見えないんだけど?」

 フロイは怪訝な表情を安住へと向けた。
 安住は笑顔を、取りあえず向けて頷く。

「あァ゛? 俺様たちが手伝ってやるって言ってんだぞォ゛?! っざけんじゃねぇよ! 日本人アズミ!」

「うん。流石に――老朽化かもね。あとで上に言わないと」

 不意に出たフレディの言葉に、安住の身体がビクついた。

 彼らの正体を――ゲイリーは知らない。
 知ってしまったら。

 しかも、その一人と恋人だと知られたら。

 安住の顔から血の気が引いてしまう。

「? アズミ。どうかしたのかい? 顔色がよくないよ?」
「っへ、へぃき…うん。平気…大丈夫、だから」
「…アズミ。さっきからおかしいよ? 何かあったんじゃないの?」

「っな、何もないよ!」

 フロイは安住から手を離すと。
 ゆっくりと牢獄の中を見渡した。
 そして。
 監視カメラの見えない場所である。
 トイレとシャワー室を見た。

「アズミ?」

 フロイは膝をついて。
 安住に再度、優しく聞いた。

「っな…何も…何も、ないよ。居ないよ。本当に」

「アズミ」

 安住の目から涙が溢れ出て来てしまう。
 大粒の。

 安住の様子にセスナとフレディが顔を見合わせた。

ゲイリーが居るんだね?」

 フロイの確信に近い言葉に。
 彼らは。
 シャワー室へと走って行った。

「「――……っつ!」」

「あ。ぅわー…」

 低い口調で見上げるゲイリーの姿に。
 セスナは顔を反らし、
「ゲイリーくぅん~~…居る~~居た~~ぁああ゛んんんッッ‼」
 フレディは、その場にへたり込んでしまう。
 そして泣きじゃくった。
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