何度でも、やさしい嘘にキスをしろ。【完全版】

ちさここはる

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EP:89 明けない夜に

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(怖い! 怖い! 怖い‼)

 毛布の中で安住は、たった一人で身体を振るえている。
 心細くて、口許を手で覆っている。

(った、助けて! 助けてェ~~イトウぅー~~)

「こいつを犯してやるよ! 手前の前でだ‼」

 突然に毛布を上げられてしまい。
 顔を視界を上げると、
「ぁ゛、ああ゛あ…アァあ…ぅ゛うう゛ぅ…」
 そこにはーー凶悪な看守。
 あの彼が、安住を見下ろしていた。
 口元は大きくワナつき、引きつっている。
 
囚人服つなぎは脱いでいたのか」

 安住は囚人服を脱いで寝ていた。
 タンクトップに、パンツ姿で。
 これはいつもで、逆にゲイリーが囚人服を着たまま寝ていて。
 その熱に包まれながら安住も安心しきっていた。
 結果として、その習慣に仇になってしまった訳で。
 セスナは腕を掴み身体を起こさせた。
「っつ! ぃ、痛い‼」
 あまりに強引な行為に、安住も小さく声を上げた。
「そこで! 手前は見てやがれっ!」
 ベッドに腰を下ろし、自身の股座に安住を下した。
「っひゃ!」
 ガチガチと歯を鳴らしながら、安住も抵抗をしない。出来ないでいた。

「ア、アズミに触らないでっっ‼」

 壁から一歩手前に踏み出したゲイリー。
 だが、すぐに壁へと身体をくっつけた。
「だから! ボクがっ! なななな、七日後に相手するからァ‼」
 そして、強張った声で叫んでいた。
 
「駄目だ! 今すぐに股を開け!」

「--~~だから! 何で聞き分けてくれないんだよーっっ‼」

 さらに大粒の涙を流しながら。
 顔を被り振っていた。
「っち! 囚人の分際でっっ‼」
 苛立ちで顔を歪ませながらセスナは、
「っひ!」
 タンクトップの上から胸の突起を触れた。
 ザワつく感覚に、肌も泡立ってしまう。
「さぁ! 可愛く啼きやがれ! あの馬鹿に聞こえるように! 妖艶にだ!」

「ぁ、ああアズミぃー~~‼」

 泣き喚くゲイリーと同じ方向を見る。
 フレディと、安住の恋人のフロイ。

(ふ、フロイ…さん? あの…)
(何? 仕方ないよ)

「っし、仕方ないって! 何でですか?!」

 思わずフレディが、フロイに聞き返してしまう。
(声を小さくしないと…どうなるか。分かるかい?)
 低い口調にフレディも閉口せざるを得なかった。
(どうも何も……アズミ君は! フロイさんの! 恋人じゃないですか!)
 フロイは腕を組み。
 顔を下に向けた。

(ふ、ロイ…さん?)

「彼は囚人だ。その事実に変わりはしない」

 しかし、それは人違いだと。
 フロイが知っていることもフレディも知っている。
 だから、余計にーー納得がいかない。

(それに。一回はシてもいいって言ってしまったし。多分、その約束は守られないとも知っているんだけど…その後に慰めれば…アズミとの仲もよくなるし。一石二鳥だよね)

「…最低です。フロイさん」

 ◆

「んぁ…や、も…乳首…痛いぃ~~」

 爪先でセスナが安住の突起を押しつぶし、摘まんでいた。
 その堪らない感覚と、痺れる突起の痛みに。
「っふ、ぅ…あ゛!」
 安住も甘い声を漏らしていた。
 ただ、彼も抵抗らしい抵抗もせずに。
 受け入れていた。

(お、俺が…俺が我慢をすれば! 我慢さえしたらいいんだ!)

「あああ、アズミ…っご、ごめ…アズミぃー…」
 
 その様子を。
 床に腰を下ろしてしまったゲイリーが見ていた。
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