何度でも、やさしい嘘にキスをしろ。【完全版】

ちさここはる

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EP:82 23歳の真実

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「ぁ、あ…ズミ! アズミ‼ アズミぃ~~ぅえ゛!」

 泣きながらゲイリーは安住を左右に揺らすと。
 それに安住も、「何ー~~」と声を漏らした。
 ただ、それは寝言のような聞き方だった。
「ヤバいんだよーねーヤバいんだよー~~アズミぃ~~‼」
 激しく尋常じゃない泣き方のゲイリーに安住も目を開けていくと、ほぼ全裸のゲイリーの姿が目に映し出された。

「!? ゲイリー…何かあったのか?? 何で、そんな裸で!? 寒いだろぅが! ああ、もう! 囚人服つなぎは?? ちょっと!」

「血が、…血で濡れちゃって…だから、脱いだんだよー」

 もごもご、と言うゲイリーに安住も、完全に目を覚まし目を指先でこすると、真っ暗なため目を細める安住は、ゲイリーの泣きじゃくった顔を見た。
 それに完全に意識を戻した安住は、彼の肩を強く掴み寄せた。

「看守の奴らが来たのか?!」
「ぃ、いや…来てないーんだけど…うん、来てないよー」
「そっか…よかった~~ゲイリーが俺が寝ている間にられたのかと思ったじゃんか~~」
 大きく安堵の息を吐きながら言う安住だったが。
 すぐに。

「--…血? え? 血って何????」

 彼の言った『血』のことを聞き返した。
 ゲイリーは肩をビクつかせながらも、安住に隠しごとをしたくない一心で。
 ゆっくりと、した口調で言った。

「っぼ、ボクーー…女の子でも、ぁってね…それで、あの、ね?」

 ビクビクと安住の顔色を伺いながら、ゲイリーも口ごもりながら続けた。

「一応ー…その孔とか…膣とかー…もあって。あ! っで、でもね?! 子供の頃に聞いた話しだから! ちょっとだけ忘れてたんだけど! あ、ぁのねー…アズミー聞いてるー?」

「…うん。訊いてるよ」

 安住も真っ直ぐとゲイリーを見据えていた。
(おおお、女の子って?! どうゆうこと?! ちょっと! ぇええ??)
 内心は激しい動揺に支配されてはいるが、ゲイリーの前でそれは出さなかった。
(つまりは? 男だけど、女でもあるってことなのか?? はァ?!)
 見つめ合う安住に、ゲイリーも口を開いた。

「…生理が…来ちゃったのー血がねー出てきちゃったのぉ! 真っ赤なのがボクの股からぁー~~!」

 顔に手を当てて、覆い隠してしまったゲイリーに安住も。
 正直、どうしていいのか分からなかったものの。
「取りあえず。どうしたらいいかな? 大丈夫だって! ゲイリー、大丈夫だって!」
 安住は短いゲイリーの頭を撫ぜた。
 そして、
「ババさーん! 何かちょうだー~~い‼」
 斜め前のラバーへと声をかけた。

 真っ暗な中。

 勢いよく何かが投げられた。
 そのあまりの速度スピードにゲイリーの頭に当たってしまう。

 どっふん‼

「!? 何ー~~?? これー柔らかいー」

 ベッドの下に落ちた道具ソレを安住が拾い上げた。
 キツく縛ったそれを解くと中には。

(長時間…夜用。羽根付きって。これはナプキン…って。本当に何で持ってんの?)

「アズミーそれー何ー~~??」
「ナプキンって女性用品で。生理のためのものだよ」
「? へぇー安住ー物知りー」

「学校で習ってるからね。保健の授業で」

 さらに開けると。
「ぅわ…ババさーん??」
 割と大きなサイズのーーパンツが入っていた。
「これは生理用のパンツで漏れないようにする素材なんだ。履く前に一回、シャワーを浴びた方がいいよ」
 キラキラキラ、とゲイリーは安住の顔を見ていた。
 尊敬の眼差しだ。

「うん! そぅするー…これ、どうやってつけるの????」

 首を傾げるゲイリーに、
「トイレに行こうか」
 安住はベッドから降りた。

 ◆

「ぅ゛ん゛ー~~! やっぱり制服が一番いいなァ゛!」

 ボォおおお!

 ドライヤーで髪を乾かすフロイに言うセスナは。
 上機嫌で、満面の悪い表情を浮かべている。
「来るの? 言っとくけど。あの囚人の部屋には行かないよ。そっちの日じゃないし、流石に会うと。また、アズミの前であの囚人を殴りそうだ」

「殴るんじゃねェよ! 最低だな! 暴力するなんざァ‼」

「「おまいう」」

 思わずフロイとフレディの声が重なってしまう。
「何だよ。気色悪ィ奴らだな」
「セスナさんのがよっぽどですけどね。腰が痛いなら…」

 バン‼‼ とフレディがセスナの腰を叩いた。
「!? --~~ッッ‼」
 痛みに悶絶しながらセスナが膝を折ってしまう。
「っふ、フレディ~~手前ッッ‼」
「今日までお休みなんですからぁ~~来なくたっていいんですよ?」
 にこやかに、満面な笑顔のフレディに。

「ざけんじゃねェよ‼」

 腰を抑えながらセスナが立ち上がった。

「行くに決まってんだろォうがァ‼」
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