何度でも、やさしい嘘にキスをしろ。【完全版】

ちさここはる

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EP:7 挑発青年と横暴青年

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 ガチャ、ガチャと何かが動く音が鳴る。

(う…っ!?)

 安住の耳に聞こえた。
 もちろん、ゲイリーにも。

「ん? あれー?」

「な、何で来るんだよ!?」

 安住は、ゲイリーの胸倉を掴み、大きく揺らした。
「ボクがー知るわけないじゃないかー」
 ゲイリーも上擦った口調で安住に言い返すも、頭の中ではどうして? で一杯な状態で困惑もしている。
「っこ、こんなの嘘だー~~‼︎」
 声を押し殺して安住が泣き喚く。
「そんなのボクに言われてもー困っちゃんだよなー」
 ゲイリーも、少しだけ強張った声を漏らす。

「へぇ。二人とも…同性愛者、ゲイか」

 セスナがフレディから渡された手帳を見た。
 そして、その他。
 備考欄に、目を留めた。

「つまんないな」

 セスナは、フレディに手帳を放る。
「わ゛! っととと! 酷い!」
 暗視ゴーグルスコープで、目の前の鉄格子の奥で震える、安住とゲイリーを視る。

「開発済みの中古ユルマンか」

 安住の顔は青ざめていて身体を小刻みに震えさせていた。
 彼の言葉を否定するように顔を横に弱くも振る。

(――…ッッ‼)

 フロイは、中に居る囚人に愕然とした。
 思わず、フレディの顔を見たが、彼は口をへの字にさせ、小さく頷くとフロイに手帳を渡した。

(アズミ・フジマル!? 間違いなく、ア、アズミなのか!)

 信じられないとフロイの手帳を持っていた手に力が込めれ。

 ミシ!   と音が鳴った。

「?! っちょ! フロイさん、手帳を返して下さい!」

 慌ててフレディは、フロイから手帳を取り上げた。

 そんな二人を他所に、
「取り敢えず、試食するか」
 冷淡にもセスナがそう漏らした。

 安住が口をパクパクさせるのに対し。
 ゲイリーは口を突き出し睨み返した。

 フロイとフレディは、この状況に頭を悩ませていた。

 ると言い切ったセスナは獰猛に、食い散らかす。

 自重も、理性もなく――ただ、ただと弄ぶ。

 看守の特権とばかりに。

「日本人は、食べたことがねぇなァ!」

 セスナは暗視ゴーグルスコープから安住を見据えた。

「よし」

 安住に目をつけたセスナに、フロイも血の気が引けていく。

 ガシャン!

 セスナは、鉄格子を開け入って行った。
 そんな彼に、
「おい? 久しくご無沙汰じゃないかい? セスナさんよォ」
 ラバーが救いの手を伸ばす、が。

「ババか。手前は、また今度だ。自分でマスかくか、他の囚人に頼めよ。今日は手前の日じゃねぇんだよ」

 セスナが軽く弾き返し。
 ラバーも舌打ちをするのだった。

 なす術がない、と。

「ボ、ボクがー看守さんを満足させるよー」

「!? っげ、ゲイリー??」
 安住の奥に下げ、ゲイリーがセスナに言った。
 それに、セスナは。

「手前じゃ――」
「もしも、アズミが犯人じゃなかったらー国際問題になるねーいいの? 好き勝手出来なくなるけどー?」

 セスナの口端が、つり上がっていく。

「ふぅん? なら。満足させて貰おうかァ? 手前のユルマンでなァあ!」
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