45 / 52
第45話 怪物の子は怪物
しおりを挟む
あの組で試験に合格したのは5人。俺とネイガンとエナイス。それにザケンとよく知らない一人だ。合格人数的に考えて、俺の組が一番レベルが低かった様で一安心。と言いたい所だが……ザケン程度が引っかかってる時点であれなんだよな。
「ふむ……」
入学式と言えばいいのだろうか。合格者が一堂に集められた講堂の様な場所で、割り振られた席に着席した俺は自然な形で周囲を見渡した。残念ながら、ぱっと見、明確に強いと感じられる人物は10人にも満たない。まあ魔法使い系は判断が難しいので、そこまで含めたらもう少し増える可能性もあるが……
その中で特に目を引いたのは6人だ。
実技の際、教官は俺の上に6人いると言っていた。恐らく彼らがそうなのだろう。そのうち4人は俺と大差ない様に思えたが、魔法ありで戦ってもキツそうに感じる人物が2人いる。魔法込みで三位との評価だったので、その2人が1位2位と考えて間違いないだろう。
「始まるな」
ファンファーレが流れ、一段高いステージの様な場所の奥の扉が開いた。そこから真っ先に現れたのは――
「子供?」
――年のころ、12、3歳程の少年だった。
その姿に、俺の横に座るネイガンが怪訝そうに声を漏らす。彼だけではなく、他の席からもそう言った声が漏れ聞こえて来る。
扉からは少年に続く様に大人が10人入って来た。その中には試験を受け持っていた戦闘教官の姿があり、他の9人からもそれに近い強さを感じる事から、恐らく彼らがこのアカデミーの指導教官なのだろうと思われる。
「兄貴、あの子供何者なんでしょうね?」
他の9人を従える形で、マイクの様な物の前に立つ少年に我慢できなくなったのかネイガンが俺に尋ねて来る。
当然、聞かれても答えようがない。こいつは俺を何だと思っているのか? 聞くなら普通エナイスの方だろうに。まあ彼女は席が離れているが。
「知らん。ただ一つ分かるのは――」
俺に分かる事があるとすれば、それはただ一つ。それは――
「化け物だって事ぐらいだ」
そう、少年がこの場における最強と言う事だけである。それもダントツに。
「化け物って……」
「しっ、私語はここまでだ」
少年が自分用に低く設置されたマイクを握り、口を開いた。
「諸君!よくぞ我が父――ジークフリート陛下の呼びかけに答え、この場に集うてくれた!その勇気と世界を愛する心に、このバルムンク・シグムント感動の念で胸が張り裂けんばかりだ!」
破竜帝、ジークフリートの息子……化け物の子は化け物と言うべきだろうな。その年齢から考えられない様な高い能力も、破竜帝の息子といううだけで納得できてしまうのだから困る。まあここは頼もしい味方が出来たと、素直に喜んでおくとしようか。
バルムンクの演説、そして次いで教官長からのこれからのカリキュラムが伝えられる。訓練はその大半が自由選択制で、自分に合った教官に指導を受けられるシステムの様だ。ただし魔法を教えてくれる人物は一人だけしかいない様なので、魔法の訓練はその人物を師事するか、用意された魔法書で魔法を覚えて独学でやるかに二択になる。
「私の――」
それぞれの教官が自分の得意分野と、教えられる技術についての説明を順番にしていく。それを聞き、正直、戦闘技術に関してはそれ程学ぶべき部分はない様に感じざる得なかった。まあそれはそれだけ、師匠から学んだ技術が優れていたという事の表れでもある。赤鬼ベゼルなんて御大層な二つ名は、伊達じゃなかった訳だ。
学ぶべき事が少ないなら、アカデミーに入る意味はない?
そんな事はないさ。自分と同等かそれ以上の相手との手合わせは、得られるものが多いからな。一人で訓練を続けるより、其方の方が遥かに効率的だ。しかも魔王戦で連携する事を考えるのなら、猶更である。 それに、アカデミー生には唯一無二の特典が与えられる。龍陣と呼ばれるものだ。
――龍陣。
魔竜の心臓と呼ばれる、魔竜から取り出された宝玉を加工した物を触媒に。地脈と呼ばれる大地のエネルギーを吸い上げ展開される魔法陣。それが龍陣である。その効果は中にいる者の潜在能力を引き出すそうだ。
それを一月に一度受けられるというのが、このアカデミー最大の売りである。訓練とは別に能力を引き出して貰えるなら、受けない手はないだろ?それでなくとも、時間がどれぐらいの猶予が残っているか分からないんだから。やれる事。得られる利益は全て受けておかないとな。
魔王に勝つために。
「ふむ……」
入学式と言えばいいのだろうか。合格者が一堂に集められた講堂の様な場所で、割り振られた席に着席した俺は自然な形で周囲を見渡した。残念ながら、ぱっと見、明確に強いと感じられる人物は10人にも満たない。まあ魔法使い系は判断が難しいので、そこまで含めたらもう少し増える可能性もあるが……
その中で特に目を引いたのは6人だ。
実技の際、教官は俺の上に6人いると言っていた。恐らく彼らがそうなのだろう。そのうち4人は俺と大差ない様に思えたが、魔法ありで戦ってもキツそうに感じる人物が2人いる。魔法込みで三位との評価だったので、その2人が1位2位と考えて間違いないだろう。
「始まるな」
ファンファーレが流れ、一段高いステージの様な場所の奥の扉が開いた。そこから真っ先に現れたのは――
「子供?」
――年のころ、12、3歳程の少年だった。
その姿に、俺の横に座るネイガンが怪訝そうに声を漏らす。彼だけではなく、他の席からもそう言った声が漏れ聞こえて来る。
扉からは少年に続く様に大人が10人入って来た。その中には試験を受け持っていた戦闘教官の姿があり、他の9人からもそれに近い強さを感じる事から、恐らく彼らがこのアカデミーの指導教官なのだろうと思われる。
「兄貴、あの子供何者なんでしょうね?」
他の9人を従える形で、マイクの様な物の前に立つ少年に我慢できなくなったのかネイガンが俺に尋ねて来る。
当然、聞かれても答えようがない。こいつは俺を何だと思っているのか? 聞くなら普通エナイスの方だろうに。まあ彼女は席が離れているが。
「知らん。ただ一つ分かるのは――」
俺に分かる事があるとすれば、それはただ一つ。それは――
「化け物だって事ぐらいだ」
そう、少年がこの場における最強と言う事だけである。それもダントツに。
「化け物って……」
「しっ、私語はここまでだ」
少年が自分用に低く設置されたマイクを握り、口を開いた。
「諸君!よくぞ我が父――ジークフリート陛下の呼びかけに答え、この場に集うてくれた!その勇気と世界を愛する心に、このバルムンク・シグムント感動の念で胸が張り裂けんばかりだ!」
破竜帝、ジークフリートの息子……化け物の子は化け物と言うべきだろうな。その年齢から考えられない様な高い能力も、破竜帝の息子といううだけで納得できてしまうのだから困る。まあここは頼もしい味方が出来たと、素直に喜んでおくとしようか。
バルムンクの演説、そして次いで教官長からのこれからのカリキュラムが伝えられる。訓練はその大半が自由選択制で、自分に合った教官に指導を受けられるシステムの様だ。ただし魔法を教えてくれる人物は一人だけしかいない様なので、魔法の訓練はその人物を師事するか、用意された魔法書で魔法を覚えて独学でやるかに二択になる。
「私の――」
それぞれの教官が自分の得意分野と、教えられる技術についての説明を順番にしていく。それを聞き、正直、戦闘技術に関してはそれ程学ぶべき部分はない様に感じざる得なかった。まあそれはそれだけ、師匠から学んだ技術が優れていたという事の表れでもある。赤鬼ベゼルなんて御大層な二つ名は、伊達じゃなかった訳だ。
学ぶべき事が少ないなら、アカデミーに入る意味はない?
そんな事はないさ。自分と同等かそれ以上の相手との手合わせは、得られるものが多いからな。一人で訓練を続けるより、其方の方が遥かに効率的だ。しかも魔王戦で連携する事を考えるのなら、猶更である。 それに、アカデミー生には唯一無二の特典が与えられる。龍陣と呼ばれるものだ。
――龍陣。
魔竜の心臓と呼ばれる、魔竜から取り出された宝玉を加工した物を触媒に。地脈と呼ばれる大地のエネルギーを吸い上げ展開される魔法陣。それが龍陣である。その効果は中にいる者の潜在能力を引き出すそうだ。
それを一月に一度受けられるというのが、このアカデミー最大の売りである。訓練とは別に能力を引き出して貰えるなら、受けない手はないだろ?それでなくとも、時間がどれぐらいの猶予が残っているか分からないんだから。やれる事。得られる利益は全て受けておかないとな。
魔王に勝つために。
101
お気に入りに追加
785
あなたにおすすめの小説

おっさんなのに異世界召喚されたらしいので適当に生きてみることにした
高鉢 健太
ファンタジー
ふと気づけば見知らぬ石造りの建物の中に居た。どうやら召喚によって異世界転移させられたらしかった。
ラノベでよくある展開に、俺は呆れたね。
もし、あと20年早ければ喜んだかもしれん。だが、アラフォーだぞ?こんなおっさんを召喚させて何をやらせる気だ。
とは思ったが、召喚した連中は俺に生贄の美少女を差し出してくれるらしいじゃないか、その役得を存分に味わいながら異世界の冒険を楽しんでやろう!

学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ
25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。
目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。
ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。
しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。
ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。
そんな主人公のゆったり成長期!!

スライムと異世界冒険〜追い出されたが実は強かった
Miiya
ファンタジー
学校に一人で残ってた時、突然光りだし、目を開けたら、王宮にいた。どうやら異世界召喚されたらしい。けど鑑定結果で俺は『成長』 『テイム』しかなく、弱いと追い出されたが、実はこれが神クラスだった。そんな彼、多田真司が森で出会ったスライムと旅するお話。
*ちょっとネタばれ
水が大好きなスライム、シンジの世話好きなスライム、建築もしてしまうスライム、小さいけど鉱石仕分けたり探索もするスライム、寝るのが大好きな白いスライム等多種多様で個性的なスライム達も登場!!
*11月にHOTランキング一位獲得しました。
*なるべく毎日投稿ですが日によって変わってきますのでご了承ください。一話2000~2500で投稿しています。
*パソコンからの投稿をメインに切り替えました。ですので字体が違ったり点が変わったりしてますがご了承ください。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?
お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。
飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい?
自重して目立たないようにする?
無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ!
お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は?
主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。
(実践出来るかどうかは別だけど)

寝て起きたら世界がおかしくなっていた
兎屋亀吉
ファンタジー
引きこもり気味で不健康な中年システムエンジニアの山田善次郎38歳独身はある日、寝て起きたら半年経っているという意味不明な状況に直面する。乙姫とヤった記憶も無ければ玉手箱も開けてもいないのに。すぐさまネットで情報収集を始める善次郎。するととんでもないことがわかった。なんと世界中にダンジョンが出現し、モンスターが溢れ出したというのだ。そして人類にはスキルという力が備わったと。変わってしまった世界で、強スキルを手に入れたおっさんが生きていく話。※この作品はカクヨムにも投稿しています。

独身おじさんの異世界ライフ~結婚しません、フリーな独身こそ最高です~
さとう
ファンタジー
町の電気工事士であり、なんでも屋でもある織田玄徳は、仕事をそこそこやりつつ自由な暮らしをしていた。
結婚は人生の墓場……父親が嫁さんで苦労しているのを見て育ったため、結婚して子供を作り幸せな家庭を作るという『呪いの言葉』を嫌悪し、生涯独身、自分だけのために稼いだ金を使うと決め、独身生活を満喫。趣味の釣り、バイク、キャンプなどを楽しみつつ、人生を謳歌していた。
そんなある日。電気工事の仕事で感電死……まだまだやりたいことがあったのにと嘆くと、なんと異世界転生していた!!
これは、異世界で工務店の仕事をしながら、異世界で独身生活を満喫するおじさんの物語。

劣等冒険者の成り上がり無双~現代アイテムで世界を極める~
絢乃
ファンタジー
F級冒険者のルシアスは無能なのでPTを追放されてしまう。
彼は冒険者を引退しようか悩む。
そんな時、ルシアスは道端に落ちていた謎のアイテム拾った。
これがとんでもない能力を秘めたチートアイテムだったため、彼の人生は一変することになる。
これは、別の世界に存在するアイテム(アサルトライフル、洗濯乾燥機、DVDなど)に感動し、駆使しながら成り上がる青年の物語。
努力だけでは届かぬ絶対的な才能の差を、チートアイテムで覆す!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる