上 下
41 / 52

第41話 6位

しおりを挟む
 一つ目と二つ目は単純なステータスの測定だったが、次は実技である。物理戦闘技術と魔法技術の二タイプあり、どちらかだけ、もしくは両方の測定を受けるか自分で選べる形だ。

 因みに、両方けた場合の評価はより好成績だっほうが基準になり、もう片方は参考程度となる様だった。まあ普通は戦いながらだと大した魔法が使えないので、合算して考えないのは妥当だろう。

 ――場所を変え、広い運動場の様な所で試験は行われる。戦闘教官一人が受験生の相手を受け持ち、それを審査員三人が査定して点数を出す感じだ。

「無駄に長くなるな」

 この組では大半の人間が両方を希望していた。まあ参考程度でも、足しになるかも知れないなら受けるのは当然の判断だ。しかもダメダメだったとしても、マイナス要素にならないなら猶更である。

 とは言え、大半の人間が受ける意味がないのだから待たされる身としては溜まった物ではない。そこそこ魔力はあるのに、魔法の方をすっぱり切り捨てたネイガンを見習ってほしい物だ。

「流石王女様です」

「素晴らしかったです」

「ありがとう。皆」

 エイナスの測定が終わり、戻って来た彼女にネイガン達家臣団が労いの言葉をかける。流石と言われている事からも分る通り、審査員の出した点数はネイガンを抜いてこの組では現在一番となっていた。

 もちろん点数のメインは魔法だ。戦闘技術は大した事なかったが、魔法に関しては、俺から見てもそこそこいい線行っているとは思う。とは言え、だ。それでもこいつが魔王戦で役に立つビジュアルは、微塵も浮かんでこないが。

 あ、そうそう。ザケンの評価はネイガンより下だ。デカい口を叩いていた割にエイナス以下なんだから救えない。

「さて、次は俺の番だな」

 やっと順番が回って来た。自分の名と割り振られた番号を告げ、よろしくお願いしますと試験官に一礼する。

「オーラと魔力で、この組の最高点を叩き出しているそうだね。その技術面がどれ程の物か確かめさせて貰おう」

 戦闘教官は50代ほどの精悍な顔つきをした、かくがりに短く沿った顎のラインに髭を生やした見るからに体育会系の人物だ。

「ではまず戦闘技術からだ。かかって来い」

「では――」

 教官から剣を受け取り、開始と同時に俺は突っ込んだ。最初っから全力全開。手加減は一切しない。何故なら――目の前の男は確実に俺より強いからだ。

「無駄のない、良い動きだ」

 攻撃を仕掛けるが、その全てを掌で止められてしまう。単純なフィジカルもそうだが、教官はその戦闘技術も相当優れていた。相手になっていない。正直、試験の短い時間で崩すのは無理ゲーと言わざる得ない。

 想像してたよりも強いな、この人。今の俺が命を燃やしても勝てそうにない。いやまあ、仮にそれで勝てる相手だったとしても絶対使わないけど……

 この体の寿命が尽きても、地球の方から融通して貰えるので直ちに死ぬ様な事はない。だがそれをやると、本体側の寿命が縮んでしまうのだ。だからこの先、使うのは魔王との戦いのみと決めている。勝つ必要すらない試験で使うなど論外だ。
 
「そこまで!その若さでその強さ。それに戦いながら此方の動きに急速に対応する天才的なセンス。見事としか言いようがない」

 結局制限時間いっぱい攻撃したが、一発も届く事はなかった。まあべた褒めしてくれているので、評価は最高てんだとは思うが。

「ふぅ……ありがとうございます」

「因みに……三組全部私が担当している。順位が気になるか?」

「まあ少しは……」

 別に此処で聞かなくとも後でわかる事だが、教えてくれるのなら聞いておく。

「センスや成長性云々は抜きにした場合、現状の近接戦闘の強さは上から六番目ほどだな」

 六番目か。オーラ判定の時は俺の上に六人いて七位だった訳だが……普通なら喜ぶべきところなのかもしれないが、魔王との戦いを考えると寧ろ嘆くべき結果と言えるだろう。

「では、次は魔法の方を見せて貰おうか」

「分かりました」

 魔法のテストは先頭方式ではなく、少しはなれば場所に建つ教官に向かって攻撃魔法をひたすら撃つというシンプルな物だ。これで魔法の発動速度。使える魔法。狙いの精密度なんかを確認する。

「では――」

 俺は開始線まで下がり、そして一瞬で発動させる。

「セイクリッドプリズン!」

 大司教アルダースが魔王に使ったと言われる精霊級魔法エイスマジックを。
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

レベルを上げて通販で殴る~囮にされて落とし穴に落とされたが大幅レベルアップしてざまぁする。危険な封印ダンジョンも俺にかかればちょろいもんさ~

喰寝丸太
ファンタジー
異世界に転移した山田(やまだ) 無二(むに)はポーターの仕事をして早6年。 おっさんになってからも、冒険者になれずくすぶっていた。 ある日、モンスター無限増殖装置を誤って作動させたパーティは無二を囮にして逃げ出す。 落とし穴にも落とされ絶体絶命の無二。 機転を利かせ助かるも、そこはダンジョンボスの扉の前。 覚悟を決めてボスに挑む無二。 通販能力でからくも勝利する。 そして、ダンジョンコアの魔力を吸出し大幅レベルアップ。 アンデッドには聖水代わりに殺菌剤、光魔法代わりに紫外線ライト。 霧のモンスターには掃除機が大活躍。 異世界モンスターを現代製品の通販で殴る快進撃が始まった。 カクヨム、小説家になろう、アルファポリスに掲載しております。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

クラス転移から逃げ出したイジメられっ子、女神に頼まれ渋々異世界転移するが職業[逃亡者]が無能だと処刑される

こたろう文庫
ファンタジー
日頃からいじめにあっていた影宮 灰人は授業中に突如現れた転移陣によってクラスごと転移されそうになるが、咄嗟の機転により転移を一人だけ回避することに成功する。しかし女神の説得?により結局異世界転移するが、転移先の国王から職業[逃亡者]が無能という理由にて処刑されることになる 初執筆作品になりますので日本語などおかしい部分があるかと思いますが、温かい目で読んで頂き、少しでも面白いと思って頂ければ幸いです。 なろう・カクヨム・アルファポリスにて公開しています こちらの作品も宜しければお願いします [イラついた俺は強奪スキルで神からスキルを奪うことにしました。神の力で学園最強に・・・]

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

集団転移した商社マン ネットスキルでスローライフしたいです!

七転び早起き
ファンタジー
「望む3つのスキルを付与してあげる」 その天使の言葉は善意からなのか? 異世界に転移する人達は何を選び、何を求めるのか? そして主人公が○○○が欲しくて望んだスキルの1つがネットスキル。 ただし、その扱いが難しいものだった。 転移者の仲間達、そして新たに出会った仲間達と異世界を駆け巡る物語です。 基本は面白くですが、シリアスも顔を覗かせます。猫ミミ、孤児院、幼女など定番物が登場します。 ○○○「これは私とのラブストーリーなの!」 主人公「いや、それは違うな」

転生チートの時間停止など不要!~非力で敵にダメージが与えられないので頑張って筋トレ→あれ、強くなりすぎてこれもう時止める必要なくね?←今ここ

榊与一
ファンタジー
細田陽炎(ほそだかげろう)。 生まれつきの病で虚弱だった彼は、18という若さで命を落としてしまう。 病死の間際、彼の望んだ事はただ一つ―― 『もし生まれ変われたなら、こんどは誰よりも強い体を手に入れたい』 ――だ。 そしてそんな切な願いを、神が叶えてくれる。 彼は転生し、更にチート能力として時間を止める能力まで手に入れた。 「最強の体じゃないけど、時を止められるとかもう完全に無敵じゃないか!」 そう喜んだのもつかの間、最初に出会った魔物に真面にダメージが通らない始末。 「よっわ!俺超よわ!」 それもそのはず。 転生して病気は無くなったが、基本のスペックは転生前と一緒だったのだ。 「くそっ!こうなったら体を鍛えるしかない!」 仕方なく最初に用意された安全ポイントで筋トレ等の訓練をする事十年、細田陽炎は遂にそこから出る事となる。 最強の肉体を手に入れて。 「お。ワンパンだ!俺つえぇ!!」 この物語は、時止めチートを使わせてくれる強敵を求めて化け物と化した主人公が異世界を徘徊するお話。

処理中です...