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第33話 早い
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「開始!」
合図と同時に、ネルガンの全身にオーラが満ちるのが分かった。それを見て俺は少し驚く。単純な量だけなら、半年前の俺や師匠と同レベルだったからだ。足運びなどの立ち振る舞いから完全に雑魚だと思っていたのだが、どうやら過小評価だった様だ。
とか思ったのだが――
「一撃ぐらいは耐えて見せろよ!きえええ!!」
ネルガンが突っ込んで来て、奇声と共に剣を振り下ろす。俺はそれを躱しつつ、即座に上方修正したばかりの評価を下方修正する。
……ひでぇな。
「うりゃりゃりゃりゃりゃっ!」
奇声が、ではなく。とにかく動きが悪い。猪武者を思わせる、技術のぎの字もない稚拙で雑な動き。更に無駄に力んでいるせいか、動き自体もオーラの量に比べて鈍重極まりない。いくら何でもバランス悪すぎ。パワー編重にも程がある。
確かに、戦闘におけるパワーは重要だ。最優先項目と言ってもいいだろう。だがだからと言って、それだけでは話にならない。パワーだけで何とかできるのは、圧倒的格下だけである。
……きっと今まで、パワーで圧倒出来る様な超格下だけを相手してきたんだろうな。でなけりゃ、この動きであんな大口が叩ける筈もない。
もしコイツが魔王と戦っていたら、間違いなく瞬殺されていた事だろう。同等レベルのオーラ量だった師匠が多少なりとも奴と戦えていたのは、その高い戦闘技術があったからこそだ。それが出来ないこの脳筋猪では、下手したら、いや、下手しなくてもワンパンであの世行きである。
「貴様!ちょこまかと逃げまわるな!男なら正々堂々と受け止めろ!!」
雑に振り回される剣を適当に躱していたら、ネルガンが厚かましい事を求めて来る。パワーに自身があるから、当たりさえすれば、とか考えてそうだな。まあこの脳筋の相手を長々と続ける気はないので、さっさと終わらせるとしよう。お望み通り、正面から奴のパワーを受け止める形で。
「なにっ!?」
俺は剣では受けず、左手の親指と人差し指で振り下ろされたネルガンの剣を摘まむ形で受け止めてやる。
「言われた通り、受け止めてやったぞ」
「く、おのれ!ぬぬぬ……な、なんだ!?剣が動かん!?」
俺に摘ままれた剣がびくともせず、ネルガンが驚愕する。技術で圧倒する事も出来たが、負けた後小細工どうこう言ってきそうなので、分かりやすく力でねじ伏せさせて貰う。
「うおっ!?とと……」
剣の刃を摘まんでいた指先を離すと、必死に剣を引こうとしていた奴はバランスを崩して数歩後ずさった。まあ流石に、すっころぶ程間抜けではなかったが。
「さて、それじゃこれから俺が攻撃するから……受け止めて見せろ。受け止められるんならな」
ネルガンが態勢を立て直した所で俺はそう宣言する。崩れた所に攻撃しなかったのは、相手に言い訳の隙を与えない為だ。足が滑った所を、とか言い出されたら、相手するのも面倒くさいからな。
「おのれ生意気な!」
「行くぞ」
間合いを詰め。搦め手なしの、真正面からの素直な一撃を放つ。
「ぐあぁぁっ!?」
奴が俺の剣を受け止めきれず、足裏を地面に滑らせながら大きく後退した。パワーだけはそこそこあるので、流石に一撃で剣を弾くにはいたらない。だがまあ、何発かぶち込めば終わるだろう。
そう思い、追撃を仕掛けるべく間合いを詰めようとして。だがそれよりも早く――
「参った!」
「……え?」
――相手から降参が飛んで来た。
「凄まじい一撃だった。認めるしかあるまい。貴様は――いや、貴殿は私よりも強い!」
諦めるのはっや。いやまあ、無駄に粘られるよりはいいっちゃいいんだが。
合図と同時に、ネルガンの全身にオーラが満ちるのが分かった。それを見て俺は少し驚く。単純な量だけなら、半年前の俺や師匠と同レベルだったからだ。足運びなどの立ち振る舞いから完全に雑魚だと思っていたのだが、どうやら過小評価だった様だ。
とか思ったのだが――
「一撃ぐらいは耐えて見せろよ!きえええ!!」
ネルガンが突っ込んで来て、奇声と共に剣を振り下ろす。俺はそれを躱しつつ、即座に上方修正したばかりの評価を下方修正する。
……ひでぇな。
「うりゃりゃりゃりゃりゃっ!」
奇声が、ではなく。とにかく動きが悪い。猪武者を思わせる、技術のぎの字もない稚拙で雑な動き。更に無駄に力んでいるせいか、動き自体もオーラの量に比べて鈍重極まりない。いくら何でもバランス悪すぎ。パワー編重にも程がある。
確かに、戦闘におけるパワーは重要だ。最優先項目と言ってもいいだろう。だがだからと言って、それだけでは話にならない。パワーだけで何とかできるのは、圧倒的格下だけである。
……きっと今まで、パワーで圧倒出来る様な超格下だけを相手してきたんだろうな。でなけりゃ、この動きであんな大口が叩ける筈もない。
もしコイツが魔王と戦っていたら、間違いなく瞬殺されていた事だろう。同等レベルのオーラ量だった師匠が多少なりとも奴と戦えていたのは、その高い戦闘技術があったからこそだ。それが出来ないこの脳筋猪では、下手したら、いや、下手しなくてもワンパンであの世行きである。
「貴様!ちょこまかと逃げまわるな!男なら正々堂々と受け止めろ!!」
雑に振り回される剣を適当に躱していたら、ネルガンが厚かましい事を求めて来る。パワーに自身があるから、当たりさえすれば、とか考えてそうだな。まあこの脳筋の相手を長々と続ける気はないので、さっさと終わらせるとしよう。お望み通り、正面から奴のパワーを受け止める形で。
「なにっ!?」
俺は剣では受けず、左手の親指と人差し指で振り下ろされたネルガンの剣を摘まむ形で受け止めてやる。
「言われた通り、受け止めてやったぞ」
「く、おのれ!ぬぬぬ……な、なんだ!?剣が動かん!?」
俺に摘ままれた剣がびくともせず、ネルガンが驚愕する。技術で圧倒する事も出来たが、負けた後小細工どうこう言ってきそうなので、分かりやすく力でねじ伏せさせて貰う。
「うおっ!?とと……」
剣の刃を摘まんでいた指先を離すと、必死に剣を引こうとしていた奴はバランスを崩して数歩後ずさった。まあ流石に、すっころぶ程間抜けではなかったが。
「さて、それじゃこれから俺が攻撃するから……受け止めて見せろ。受け止められるんならな」
ネルガンが態勢を立て直した所で俺はそう宣言する。崩れた所に攻撃しなかったのは、相手に言い訳の隙を与えない為だ。足が滑った所を、とか言い出されたら、相手するのも面倒くさいからな。
「おのれ生意気な!」
「行くぞ」
間合いを詰め。搦め手なしの、真正面からの素直な一撃を放つ。
「ぐあぁぁっ!?」
奴が俺の剣を受け止めきれず、足裏を地面に滑らせながら大きく後退した。パワーだけはそこそこあるので、流石に一撃で剣を弾くにはいたらない。だがまあ、何発かぶち込めば終わるだろう。
そう思い、追撃を仕掛けるべく間合いを詰めようとして。だがそれよりも早く――
「参った!」
「……え?」
――相手から降参が飛んで来た。
「凄まじい一撃だった。認めるしかあるまい。貴様は――いや、貴殿は私よりも強い!」
諦めるのはっや。いやまあ、無駄に粘られるよりはいいっちゃいいんだが。
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