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第22話 vs勇者⑤
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俺は区分で言うなら一般人だ。まあ異世界から召喚されている異世界人なので、厳密には一般人ではないのだろうが。とにかく、騎士の様に名誉と俸禄を受けて戦う存在じゃない。
――要は、命をかけて国や市民のために戦う義理はないという事だ。
騎士は自らの本分を全うし。一般人である俺は自身の身の安全のために逃げる。その事で責められるいわれはない。なので非道かもしれないが、俺は自分の命を優先して彼らを囮にさせて貰う。
つもりだったのだが――
「逃げられそうにありませんね」
「ああ、そうみてぇだな」
勇者が第二騎士団に突っ込む。その強さは圧倒的で、奴が動く度に人が人だった物へと変わっていく。実力が違い過ぎて戦いにすらなっていない。しかしその視線は当然だが、今は殲滅している騎士団に向けられていた。
なら逃げる隙があるのでは?
そう思うかもしれないが、視線を向けていないだけだ。間違いなく奴の意識――知覚は俺に向けられている事がハッキリと分かる。もし俺が少しでも動けば、他を無視して此方に襲い掛かって来る事だろう。
「わ、私は第二騎士団のお――」
言葉の途中で、クンジャーの上半身が消し飛ぶ。
「ば、ばけもの……」
「ひぃぃぃ……助けてくれぇ……」
その一方的な蹂躙に、騎士達は戦意を失い武器を捨てその場から逃げ出そうとする。だがそれを許さず、勇者は凄まじいスピードで彼らを肉塊へと変えて行く。
「はぁ……こりゃ死ぬまで戦うしかないか」
勝ち目はないし、命乞いも絶対効かないだろう。なら、最後まで戦うしかない。どうせ死ぬ身だ。助ける義理も義務もないが、今動けば騎士達を少しは助けてやれるだろう。
「師匠は逃げてください。俺がアイツの相手をしますんで」
そう言って動こうとしたら、師匠に腕を握って止められてしまう。
「ざっけんなよ。弟子を置いて逃げる師匠がどこにいるってんだ?」
振り返ると、師匠は覚悟の決まった真剣な眼差しをしていた。
「魔竜討伐の時、俺は一人生き延びちまった。あんな無様な事は無い。二度と御免だっての」
仲間を全て失い、一人生き残る。それはきっと、とてつもなく辛い事だっただろう。実際、師匠はその事がきっかけで冒険者を引退し、無気力な生活を長らく送って来たのだ。
「師匠……」
「弟子を守るのが師匠の務めだからな。俺に任せな」
「でも、師匠じゃ足止めは……」
俺があいつの足止めを出来ても、師匠には無理だ。直ぐに倒されてしまうのは目に見えていた。
「おいおいおい、誰が足止めするっつった。あいつを倒すための秘策を使うんだよ」
「秘策……ですか?」
「ああ、とっておきの切り札だ」
そう言うと、師匠は腰に帯びていた短剣を鞘から抜き放つ。やけに持ち手が長く、血の様に真っ赤な刀身をしている短剣。その刀身からは、色合いから少し不吉な物を感じた。
以前から不格好な短剣を身に着けているとは思っていたが……
「師匠、それは?」
「吸血剣。血を吸い、それを力に変える魔剣だ」
与えたダメージ分、生命力を回復させてくれそうな名前をしている。但し、ソードというにはいささか刀身が短すぎる気もするが。
「それが切り札……ですか?」
ゲーム的な効果なら、残念ながら何の役にも立たないだろう。回復はヒールで間に合っているし、何より、剣を使った所で劇的にダメージが増えるとは思えない。
まあこれは思考が地球のゲームに引っ張られての物なので、ひょっとしたらとんでもない破壊力を秘めている可能性もあるが。
「ああ、そうだ。まあ一見短くて不格好な剣だがよ、その真価は人の血を、命を喰らう事で発揮する魔剣だ。こんな風に、な――」
師匠は剣をくるりと回して、刃を下向きに持ち直したかと思うと――
「——なっ!?」
その刃を、自分の胸元へと深く突き立てた。
――要は、命をかけて国や市民のために戦う義理はないという事だ。
騎士は自らの本分を全うし。一般人である俺は自身の身の安全のために逃げる。その事で責められるいわれはない。なので非道かもしれないが、俺は自分の命を優先して彼らを囮にさせて貰う。
つもりだったのだが――
「逃げられそうにありませんね」
「ああ、そうみてぇだな」
勇者が第二騎士団に突っ込む。その強さは圧倒的で、奴が動く度に人が人だった物へと変わっていく。実力が違い過ぎて戦いにすらなっていない。しかしその視線は当然だが、今は殲滅している騎士団に向けられていた。
なら逃げる隙があるのでは?
そう思うかもしれないが、視線を向けていないだけだ。間違いなく奴の意識――知覚は俺に向けられている事がハッキリと分かる。もし俺が少しでも動けば、他を無視して此方に襲い掛かって来る事だろう。
「わ、私は第二騎士団のお――」
言葉の途中で、クンジャーの上半身が消し飛ぶ。
「ば、ばけもの……」
「ひぃぃぃ……助けてくれぇ……」
その一方的な蹂躙に、騎士達は戦意を失い武器を捨てその場から逃げ出そうとする。だがそれを許さず、勇者は凄まじいスピードで彼らを肉塊へと変えて行く。
「はぁ……こりゃ死ぬまで戦うしかないか」
勝ち目はないし、命乞いも絶対効かないだろう。なら、最後まで戦うしかない。どうせ死ぬ身だ。助ける義理も義務もないが、今動けば騎士達を少しは助けてやれるだろう。
「師匠は逃げてください。俺がアイツの相手をしますんで」
そう言って動こうとしたら、師匠に腕を握って止められてしまう。
「ざっけんなよ。弟子を置いて逃げる師匠がどこにいるってんだ?」
振り返ると、師匠は覚悟の決まった真剣な眼差しをしていた。
「魔竜討伐の時、俺は一人生き延びちまった。あんな無様な事は無い。二度と御免だっての」
仲間を全て失い、一人生き残る。それはきっと、とてつもなく辛い事だっただろう。実際、師匠はその事がきっかけで冒険者を引退し、無気力な生活を長らく送って来たのだ。
「師匠……」
「弟子を守るのが師匠の務めだからな。俺に任せな」
「でも、師匠じゃ足止めは……」
俺があいつの足止めを出来ても、師匠には無理だ。直ぐに倒されてしまうのは目に見えていた。
「おいおいおい、誰が足止めするっつった。あいつを倒すための秘策を使うんだよ」
「秘策……ですか?」
「ああ、とっておきの切り札だ」
そう言うと、師匠は腰に帯びていた短剣を鞘から抜き放つ。やけに持ち手が長く、血の様に真っ赤な刀身をしている短剣。その刀身からは、色合いから少し不吉な物を感じた。
以前から不格好な短剣を身に着けているとは思っていたが……
「師匠、それは?」
「吸血剣。血を吸い、それを力に変える魔剣だ」
与えたダメージ分、生命力を回復させてくれそうな名前をしている。但し、ソードというにはいささか刀身が短すぎる気もするが。
「それが切り札……ですか?」
ゲーム的な効果なら、残念ながら何の役にも立たないだろう。回復はヒールで間に合っているし、何より、剣を使った所で劇的にダメージが増えるとは思えない。
まあこれは思考が地球のゲームに引っ張られての物なので、ひょっとしたらとんでもない破壊力を秘めている可能性もあるが。
「ああ、そうだ。まあ一見短くて不格好な剣だがよ、その真価は人の血を、命を喰らう事で発揮する魔剣だ。こんな風に、な――」
師匠は剣をくるりと回して、刃を下向きに持ち直したかと思うと――
「——なっ!?」
その刃を、自分の胸元へと深く突き立てた。
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