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第10話 漫画かよ
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「いや……いきなりそんな事を言われても……」
いきなり弟子になれとか言われても、正直戸惑う。ひょっとして、凄い天才だから俺を育てたくなったって事か?そう考えると、全く意味不明って事は無いが……
「ワシが何で引退したかは、昨日お前さんには話したよな?」
「あー、えっと……魔竜に挑んで、爺さん以外のパーティーメンバーが全滅したからだったっけ?」
魔竜というのは、この世界の生態系の頂点に立つ、化け物の様な強さを持つ竜達の事を指す。そして赤鬼ベゼル事、爺さん率いる鬼道隊は魔竜の一体に挑んでパーティーが壊滅した。と、俺は聞いている。
昨日は嘘臭い話としか思わなかった訳だが……
「魔竜は自分のテリトリーから滅多に出て来る事はねぇ。それでも俺達が魔竜に挑んだのは、一言で言うなら……そう、嫉妬だ」
「嫉妬?」
何に対する嫉妬だろうか?まさか最強生物である魔竜とやらの強さに、嫉妬したとか?
「まあまず、その前にワシの力を見せておこうか。お前さん、まだ話半分っぽいからな。ここだとあれだし――」
「——へっ?」
気づいたら空中にいた。とんでもない上空。そしてすごい勢いで、遠くにある街が小さくなっていく。
それが爺さんに捕まれて空を飛んでいる事であると気付くのに、天才であるにもかかわらず俺は数秒かかってしまう。余りにも規格外すぎて。
やばいなこの爺さん。しかし……オーラにはこんな使い方もあるのか。
飛行方法は至って単純。オーラを後方に吹き出し、ジェットエンジンの様に推力を得て飛んでいるのだ。その速度は正確には分からないが、少なくとも時速300キロは出ているんじゃないかと思う。新幹線並である。
しかも爺さんの体から噴き出るオーラが俺を包み込み、体には一切負荷がかかっていない。本当に便利な力である。
「この辺でいいか」
速度が緩む。緩やかなカーブを描いて、そのまま着地するのかと思ったが――
「よく見てな。これが俺の力だ」
爺さんが前方に迫る渓谷の様な場所に右手を向ける。その瞬間、俺の背筋が寒くなる。いや、寒くなるなんてレベルではない。それはまるで一瞬で凍り付く程の、根源的な恐怖。俺はそれに息を飲む。
「鬼功砲!」
突き出された爺さんの右手が輝く。それが爺さんの叫び声と共に吹き出す。圧倒的な力となって。
「——っ!?」
そしてそれは前方の渓谷に突き刺さり。目もくらまんばかりの閃光となった。音はない。恐らく爺さんのオーラが遮断しているのだろう。出なければ、凄まじい轟音が俺の鼓膜に叩きつけられた事だろう。
「……」
爺さんは、そのまま着地する。元渓谷だった、崩壊し瓦礫の山の様になった場所に。
その爺さんの余りのパワーに、俺は唖然と呟く。
「漫画かよ……」
と。
いきなり弟子になれとか言われても、正直戸惑う。ひょっとして、凄い天才だから俺を育てたくなったって事か?そう考えると、全く意味不明って事は無いが……
「ワシが何で引退したかは、昨日お前さんには話したよな?」
「あー、えっと……魔竜に挑んで、爺さん以外のパーティーメンバーが全滅したからだったっけ?」
魔竜というのは、この世界の生態系の頂点に立つ、化け物の様な強さを持つ竜達の事を指す。そして赤鬼ベゼル事、爺さん率いる鬼道隊は魔竜の一体に挑んでパーティーが壊滅した。と、俺は聞いている。
昨日は嘘臭い話としか思わなかった訳だが……
「魔竜は自分のテリトリーから滅多に出て来る事はねぇ。それでも俺達が魔竜に挑んだのは、一言で言うなら……そう、嫉妬だ」
「嫉妬?」
何に対する嫉妬だろうか?まさか最強生物である魔竜とやらの強さに、嫉妬したとか?
「まあまず、その前にワシの力を見せておこうか。お前さん、まだ話半分っぽいからな。ここだとあれだし――」
「——へっ?」
気づいたら空中にいた。とんでもない上空。そしてすごい勢いで、遠くにある街が小さくなっていく。
それが爺さんに捕まれて空を飛んでいる事であると気付くのに、天才であるにもかかわらず俺は数秒かかってしまう。余りにも規格外すぎて。
やばいなこの爺さん。しかし……オーラにはこんな使い方もあるのか。
飛行方法は至って単純。オーラを後方に吹き出し、ジェットエンジンの様に推力を得て飛んでいるのだ。その速度は正確には分からないが、少なくとも時速300キロは出ているんじゃないかと思う。新幹線並である。
しかも爺さんの体から噴き出るオーラが俺を包み込み、体には一切負荷がかかっていない。本当に便利な力である。
「この辺でいいか」
速度が緩む。緩やかなカーブを描いて、そのまま着地するのかと思ったが――
「よく見てな。これが俺の力だ」
爺さんが前方に迫る渓谷の様な場所に右手を向ける。その瞬間、俺の背筋が寒くなる。いや、寒くなるなんてレベルではない。それはまるで一瞬で凍り付く程の、根源的な恐怖。俺はそれに息を飲む。
「鬼功砲!」
突き出された爺さんの右手が輝く。それが爺さんの叫び声と共に吹き出す。圧倒的な力となって。
「——っ!?」
そしてそれは前方の渓谷に突き刺さり。目もくらまんばかりの閃光となった。音はない。恐らく爺さんのオーラが遮断しているのだろう。出なければ、凄まじい轟音が俺の鼓膜に叩きつけられた事だろう。
「……」
爺さんは、そのまま着地する。元渓谷だった、崩壊し瓦礫の山の様になった場所に。
その爺さんの余りのパワーに、俺は唖然と呟く。
「漫画かよ……」
と。
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