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第17話 依頼主
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「ここか……」
ギルドの受付嬢に場所を聞いた俺は、依頼主であるマリーという金級冒険者に会う為早速指定の場所へと向かう。
そこは町はずれにある少し小さめの屋敷だった。
「流石に金級は金を持ってるな」
金級クラスになると、その依頼額の桁が変わって来る。
領都とは言え、辺境に位置するカナン領で屋敷を買う位はお手の物だろう。
俺は門に備え付けられている呼び鈴を鳴らす。
警備はいないが、しっかり魔法の結界は張られてある。
下手に忍びこもうとすれば、結界による攻撃が飛んで来る事だろう。
「どちら様ですか?」
程なくして屋敷から出て来たのは、背の低めの女性だった。
分厚い眼鏡に、厚手の茶色のローブを身に纏っている。
見るからに魔法使い然とした出で立ちだ。
「俺はシビックと言います。掲示板の依頼を見てやってきました」
「ほ、本当ですか!?どうぞ入ってください!」
用件を告げると、女性は嬉しそうに門を開ける。
因みに、彼女は依頼主ではない。
何故なら、受付嬢から聞いたマリーという女性は人間ではなくエルフだからだ。
通常、エルフは人間の生活圏では滅多にお目にかかる事は無い。
亜人であり、見目麗しいエルフなんかは人攫いの格好のターゲットになるためだ。
とは言え、相手が金級の腕の持ち主なら話は変わって来る。
自分の身を守る力は、十分に持ち合わせている訳だからな。
「私、ピティンって言います!さ、どうぞ」
ピティンに案内され、一旦屋敷の中を通って俺は裏庭へと連れていかれる。
そこでは、数名の人物が訓練に励んでいる姿が見えた。
その中に金髪のエルフが混ざっている。
多分彼女が依頼主のマリーだろう。
「マリーちゃん!この人が依頼を受けてくれるんだって!」
ピティンがマリーの元に駆けていく。
俺はその後をゆっくり歩いた。
別に走る理由はないからな。
「初めまして、シビックと言います」
「マリーです。依頼を受けて下さるそうで、本当にありがとうございます」
握手を求められ、俺はそれを握る。
追加人員が来た事が余程嬉しいのか、彼女は満面の笑顔だ。
まあ受付の女性が人集めに難航してるって言ってたからな。
「俺はガドンだ。マリーと同行予定のパーティー、ウルフのリーダを務めている」
ガンドと名乗った男の身長は2メートル近い。
更に筋肉質なその体と、その隙の無い立ち居振る舞いから、かなりの使い手だという事が分かる。
「それと、こいつが俺の女房のマゼンダ。んで、右からピティン、ロック、ダン。全員俺達の子供だ」
マゼンダさんもピティンと同じ魔法使いなのだろう。
その手には杖が握られていた。
ロックは一見優男の様に見えるが、体はかなり鍛えた上で絞られているのが分かる。
スピード重視、もしくはスカウト系だな。
そしてダンはガドンさんと同じ様な体つきをしているので、パワーファイターだと推測できた。
「家族でパーティーを組まれているんですね」
「俺としては冒険者なんて浮き草みたいな仕事より、真っ当な人生を歩んでほしかったんだがな。子は親に似るとはよく言った物だ。はっはっは」
ガドンさんが愉快だと言わんばかりに、豪快に笑い。
俺と兄の関係が良くなかっただけに、家族仲がいいのは、正直羨ましく感じる。
「ま、立って仕事の話もなんだ。中で茶でも飲みながら話そう。マリー、いいか?」
「あ、はい。そうですね。シビックさん、どうぞこちらに」
再び屋敷に戻り、俺は客間へと案内される。
そこで紅茶を頂きながら、仕事の詳しい話を伺った。
マリーの目的はヴァンパイアを討伐し、呪いの契約で縛られている姉を救う事だ。
そのため真祖やその配下の討伐だけだはなく、支配され襲って来る金級冒険者であるローズさんを殺さず押さえ込むという、かなり難易度の高い仕事まで加わる事になる。
正直、仮に募集通りの人数が集まったとしても、それはかなり厳しい仕事になるだろう事が予想された。
未だ人手が全く集まっていないのも、まあそのせいだろ。
「人集めに少し時間がかかるかもしれませんが、どうかよろしくお願いします。私は……私は……どうしても姉を助けたいんです!」
金級であるマリーが、躊躇う事無く格下の銀級である俺に頭を下げた。
それだけ必死と言う事だ。
「私からもお願いします!マリーちゃんに力を貸してあげてください!」
ピティンもそう言って頭を下げる。
ちゃん付けしているぐらいだ、きっと二人は仲がいいのだろう。
「実は、俺にはあまり時間がありません」
「そう……なんですか」
マリーとピティンの顔が、明らかにがっかりした物になる。
人手集めが難航しているのだから、遠回しに断りを入れられたと思ったのだろう。
「断る訳じゃありません。ただ――」
「ただ?」
「出来ればこの依頼。俺一人でやらせて頂けませんか?」
闇の牙との一件もある。
だから俺は、能力を出来るだけ人に見せない方向で行こうと思っていた。
そのため、ヴァンパイア討伐は俺一人で向かうのが理想的だ。
「……へ?」
その場にいた全員が、意味不明だと言わんばかりにポカーンとした顔になる。
「もう一度言います。ヴァンパイア討伐は俺一人で行かせてください」
なので俺はもう一度、はっきりとそう伝えた。
ギルドの受付嬢に場所を聞いた俺は、依頼主であるマリーという金級冒険者に会う為早速指定の場所へと向かう。
そこは町はずれにある少し小さめの屋敷だった。
「流石に金級は金を持ってるな」
金級クラスになると、その依頼額の桁が変わって来る。
領都とは言え、辺境に位置するカナン領で屋敷を買う位はお手の物だろう。
俺は門に備え付けられている呼び鈴を鳴らす。
警備はいないが、しっかり魔法の結界は張られてある。
下手に忍びこもうとすれば、結界による攻撃が飛んで来る事だろう。
「どちら様ですか?」
程なくして屋敷から出て来たのは、背の低めの女性だった。
分厚い眼鏡に、厚手の茶色のローブを身に纏っている。
見るからに魔法使い然とした出で立ちだ。
「俺はシビックと言います。掲示板の依頼を見てやってきました」
「ほ、本当ですか!?どうぞ入ってください!」
用件を告げると、女性は嬉しそうに門を開ける。
因みに、彼女は依頼主ではない。
何故なら、受付嬢から聞いたマリーという女性は人間ではなくエルフだからだ。
通常、エルフは人間の生活圏では滅多にお目にかかる事は無い。
亜人であり、見目麗しいエルフなんかは人攫いの格好のターゲットになるためだ。
とは言え、相手が金級の腕の持ち主なら話は変わって来る。
自分の身を守る力は、十分に持ち合わせている訳だからな。
「私、ピティンって言います!さ、どうぞ」
ピティンに案内され、一旦屋敷の中を通って俺は裏庭へと連れていかれる。
そこでは、数名の人物が訓練に励んでいる姿が見えた。
その中に金髪のエルフが混ざっている。
多分彼女が依頼主のマリーだろう。
「マリーちゃん!この人が依頼を受けてくれるんだって!」
ピティンがマリーの元に駆けていく。
俺はその後をゆっくり歩いた。
別に走る理由はないからな。
「初めまして、シビックと言います」
「マリーです。依頼を受けて下さるそうで、本当にありがとうございます」
握手を求められ、俺はそれを握る。
追加人員が来た事が余程嬉しいのか、彼女は満面の笑顔だ。
まあ受付の女性が人集めに難航してるって言ってたからな。
「俺はガドンだ。マリーと同行予定のパーティー、ウルフのリーダを務めている」
ガンドと名乗った男の身長は2メートル近い。
更に筋肉質なその体と、その隙の無い立ち居振る舞いから、かなりの使い手だという事が分かる。
「それと、こいつが俺の女房のマゼンダ。んで、右からピティン、ロック、ダン。全員俺達の子供だ」
マゼンダさんもピティンと同じ魔法使いなのだろう。
その手には杖が握られていた。
ロックは一見優男の様に見えるが、体はかなり鍛えた上で絞られているのが分かる。
スピード重視、もしくはスカウト系だな。
そしてダンはガドンさんと同じ様な体つきをしているので、パワーファイターだと推測できた。
「家族でパーティーを組まれているんですね」
「俺としては冒険者なんて浮き草みたいな仕事より、真っ当な人生を歩んでほしかったんだがな。子は親に似るとはよく言った物だ。はっはっは」
ガドンさんが愉快だと言わんばかりに、豪快に笑い。
俺と兄の関係が良くなかっただけに、家族仲がいいのは、正直羨ましく感じる。
「ま、立って仕事の話もなんだ。中で茶でも飲みながら話そう。マリー、いいか?」
「あ、はい。そうですね。シビックさん、どうぞこちらに」
再び屋敷に戻り、俺は客間へと案内される。
そこで紅茶を頂きながら、仕事の詳しい話を伺った。
マリーの目的はヴァンパイアを討伐し、呪いの契約で縛られている姉を救う事だ。
そのため真祖やその配下の討伐だけだはなく、支配され襲って来る金級冒険者であるローズさんを殺さず押さえ込むという、かなり難易度の高い仕事まで加わる事になる。
正直、仮に募集通りの人数が集まったとしても、それはかなり厳しい仕事になるだろう事が予想された。
未だ人手が全く集まっていないのも、まあそのせいだろ。
「人集めに少し時間がかかるかもしれませんが、どうかよろしくお願いします。私は……私は……どうしても姉を助けたいんです!」
金級であるマリーが、躊躇う事無く格下の銀級である俺に頭を下げた。
それだけ必死と言う事だ。
「私からもお願いします!マリーちゃんに力を貸してあげてください!」
ピティンもそう言って頭を下げる。
ちゃん付けしているぐらいだ、きっと二人は仲がいいのだろう。
「実は、俺にはあまり時間がありません」
「そう……なんですか」
マリーとピティンの顔が、明らかにがっかりした物になる。
人手集めが難航しているのだから、遠回しに断りを入れられたと思ったのだろう。
「断る訳じゃありません。ただ――」
「ただ?」
「出来ればこの依頼。俺一人でやらせて頂けませんか?」
闇の牙との一件もある。
だから俺は、能力を出来るだけ人に見せない方向で行こうと思っていた。
そのため、ヴァンパイア討伐は俺一人で向かうのが理想的だ。
「……へ?」
その場にいた全員が、意味不明だと言わんばかりにポカーンとした顔になる。
「もう一度言います。ヴァンパイア討伐は俺一人で行かせてください」
なので俺はもう一度、はっきりとそう伝えた。
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