マスタースロット1の無能第333王子、王家から放逐される~だが王子は転生チート持ち。スキル合成による超絶強化&幻想種の加護で最強無敵に~

榊与一

文字の大きさ
上 下
41 / 48

40――謁見

しおりを挟む
ガノッサ帝国。

100年前、シタイネン王国内で発生した厄災を倒した勇者が起こした国だ。
その初代皇帝であるゴウマ・ガノッサは、30年程で息子に帝位を譲り、それ以降の消息は不明と言われている。

彼が残した最後の言葉は「皇帝飽きた。卒業するから後は頑張れ」だと伝えられており、隣国であるシタイネン王国が王家の人間を放逐する際に卒業と言う言葉を用いるのは、ゴウマ・ガノッサの最後の言葉を引用した為だと言われている。

「くれぐれも、皇帝陛下に粗相のない様にお願いします。下手したら、冗談抜きで私達全員の首が飛びかますから」

此処は皇帝の住まう居城――ではなく、アイレンさんの勤務する役場だ。
どうやらここと本部の研究室には、転移装置の様な物があるらしく――シタイネンにはない技術だ――それを使って皇帝は移動して来るそうだ。

わざわざ俺に会うためだけに。

「絶対合わないと不味いですか?」

たまたま研究本部に立ち寄っていた皇帝がアイレンさんの報告を耳にし、俺に興味を持ったらしいのだが……正直勘弁して欲しい所だった。

元王族とはいえ、俺は最低限の教育しか施されていないのだ。
粗相せず、完璧にふるまう自信なんてまるでない。

「カオスさんに会いに来られる訳ですから……」

ですよねー。
まあしょうがない。
下手を打っても、まあ転移で逃げればいいさ。

……指名手配されそうではあるけど。

「はい……はい……」

壁にかかった電話の様な物が鳴る。
見た目同様、内線機能のあるマジックアイテム様だ。
その受話器部分をアイレンさんが手に取って、返事を返していた。

此処にいると、本当に現代社会にいる様な気になってしまう。

「皇帝陛下がお越しになられたそうです。向かいましょう」

「はい」

アイレンさんに連れられ、研究施設から出て階段を上がっていく。
因みに剣は置いてきた。
簡易な物とは言え、流石に皇帝との謁見で武器を持って行くわけには行かないからな。

って、あれ?
右手に感触が?

見ると、置いて来た筈の業魔の剣が俺の手に納まっていた。
どうゆう事?

「あの、すいませんアイレンさん」

「はい?なんでしょう?って、ええ!?」

呼び止められ、振り返ったアイレンさんは俺の手にある剣を見て驚く。
彼女も俺が剣を置いて来てたのを見ているのだから、当然だ。

「なんか、気づいたら手の中に納まってました」

「カオスさん以外に触れず、しかも離れると自動で戻って来る機能ですか。凄い機能ですが、帯剣して陛下に会うと言うのは……まあ考えても仕方ありません。剣に関しては着いてから判断を仰ぎましょう」

彼女は小さく溜息を吐くと、また歩き出す。
階段を登りきると、北方向とは反対の通路に進む。

やがて俺達は大きな扉の前に辿り着いた。
その扉の前には、物々しい鎧を着た兵士らしき人物が二名立っている。

扉の上には会議と刻印されていた。
普段は会議室に使われているのだろう。

「陛下に呼ばれ、カオス・マックスを連れて参りました」

緊張しているのか、アイレンさんの声は少し裏返った感じになっている。
だが兵士達はそんな彼女の様子よりも、俺の手にしている剣に視線がくぎ付けだった。
ま、そりゃそうだ。

「その剣は何だ」

兵士はじろりと俺を睨み付ける。
鎧の隙間から見える筋肉はよく発達しており、そのいかつい顔つきは歴戦の戦士を思わせる物があった。

何というか、圧迫感が凄い。

「この剣は業魔の剣です。カオスさんにしか持てず。また、手放すと戻って来る性質があるようですので置いてい来る事が出来ませんでした。どうかその旨を、お取次ぎください」

「……分かった。少し待て」

兵士の1人が扉をノックし、返事を待って中に入った。
好奇心からちょっと覗いてみようかとも思ったが、体を少し動かした瞬間、残った兵士が腰にかけてあった剣に手をやったので辞めておいた。

まあよくよく考えたら、これから会うのに覗く意味はないよな。
我ながら意味不明な行動だ。
俺も少し緊張しているのかもしれない。

「入れ。但し、変な気は起こすな」

兵士は直ぐに戻って来た。
もちろん変な気を起こす気はない。
いくら転移で逃げられるからって、帝国で指名手配されるなどまっぴらごめんだからな。

「失礼します」

アイレンさんが中に入り、それに俺も続いた。
広い会議室の机は中央奥のもの以外全て壁際に寄せられ、中央にぽっかりと空いたスペースが広がっている。
そして奥の机には、一人の女性が座っていた。

黒髪黒目の整った顔立ちの美女。
現皇帝は女性と聞くので、彼女がそうなのだろう。

そのサイドには綺麗なメイドさんが一人と、帯剣した護衛――但し鎧ではなく制服を着ている――が4人立っていた。
護衛は全員、親の仇でも見る様な目つきで俺達を睨み付けてくる。

いや、正確には剣を手にしている俺か。

「カオス様をお連れしました。陛下」

部屋の中に入ると、護衛の1人に手で制される。
これ以上近づくなという事だろう。
まあ剣を持ってるんだから当たり前だが――アイレンさんがその場で跪き、俺を紹介する。

「初めまして陛下。私は――」

「あなた、転生者ね」

「え?」

取り敢えず俺の口からも挨拶を、そう考えて跪いた所で思わぬ言葉が投げかけられた。
その言葉に思わず顔を上げ、声の主――皇帝陛下を凝視する。

「その反応。どうやら間違いない様ね」

そう言うと、皇帝は楽し気に微笑んだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

無能なオタクの異世界対策生活〜才能はなかったが傾向と対策を徹底し余裕で生き抜く〜

辻谷戒斗
ファンタジー
高校三年生で受験生の才無佐徹也は難関国立大学の合格を目指し猛勉強中だったが、クラスメートと共に突然異世界に召喚されてしまう。 その世界には人の才能を見抜く水晶玉があり、他のクラスメートたちにはそれぞれ多種多様な才能が表れたが、徹也は何も表れず才能がない『無能』であると判定された。 だが、徹也はこの事実に驚きはしたものの、激しく動揺したり絶望したりすることはなかった。 なぜなら徹也はオタクであり、異世界クラス召喚の傾向はすでに掴んでいたからだ。 そして徹也はその傾向を元にして、これから起こり得るであろうことへの対策を考える。 これは、『無能』の徹也が傾向と対策で異世界を生き抜いていく物語である――。 *小説家になろう・カクヨム・ノベルアップ+でも連載しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...