35 / 48
34――召喚の玉
しおりを挟む
サラが丁寧に調べた所、トラップは祭壇に隠されていた魔法陣による物だと判明した。
どうやら生命体の接近を感知すると、光る玉のエネルギーを使って発動する仕組みになっていた様だ。
「これで大丈夫だと思います」
サラが魔法で魔法陣を無効化してくれる。
俺は恐る恐る祭壇に近づくが、彼女の宣言通り、もうトラップが発動する事はなかった。
頼りになる相棒だ。
「結局、これは何なんだ?」
子供の握りこぶし程度の光るその玉。
触ると仄かに温かいそれを手に取り、俺は繁々と眺めた。
「多分、召喚用のマジックアイテムじゃないかと」
「召喚用?」
「私が無力化した魔法陣は、その玉の力を発動させる構成になっていました。それ以外の効果は無さそうだったので、出て来たアンデッドはその玉が召喚したんだと思います」
「成程」
一見ただの光る玉だが、これには魔物を召喚する力が込められているという訳だ。
しかし、さっき召喚されたのがアンデッドというのが気にかかる。
死霊系を召喚するアイテムってのは、映画とかだと大抵呪われた物だったりするからな。
「呪われたりとかは……してないよな?」
サラに確認する。
何でもかんでも知っている訳では無いだろうが、それでも魔法の知識に関しては彼女の方が上だからな。
「魔法で確認してみます」
サラが素早く魔法を唱え、そして俺の手にしている玉に指先で触れる。
その瞬間、彼女が眉根を顰めた。
「……っ!?」
「どうかしたのか?」
「すいません。魔法が掻き消されてしまいました」
サラの魔力は桁違いだ。
ハイエルフというのは魔法の天賦に恵まれた血筋であり、更に俺の作った宝玉によってその魔力は4倍にまで跳ね上がっている。
その彼女の魔法が弾かれたのだ。
この玉に込められた力は、相当な物と思って間違いない。
「ただ……嫌な感じは無かったので、呪われてはいないと思います」
「ふむ」
俺は少し考えこむ。
触っている感じ、何か嫌な気分に襲われると言った不快感はない。
サラの言う通り、呪いなんかは籠められいてい様に俺も感じる。
「ま、大丈夫か」
呪われていないという絶対の保証はないが、せっかくのお宝を放置するのは勿体ない。
俺は持ち帰る事を選び、腰のポーチに玉を詰め込んだ。
欲深く軽率な判断の様に思うかもしれないが、一応感覚以外の根拠もある。
この玉は、サラの魔法を弾くほどの力を秘めているアイテムだ。
もし呪いの効果があるんなら、相当強力なはず。
にも拘らず、俺は平気でこれを持てている。
それこそが、呪いなどかかっていない何よりの証拠といえるだろう……多分。
「取り敢えず、いっぺん戻るか」
まだ数時間しか探索していなかったが、この玉について少し思い当たる事があったので、俺は一旦街に帰る事にした。
「はい」
少し前に、アイレンという帝国の研究者の女性と知り合っている。
彼女はこの迷宮で、ある物を探していると言っていた。
それが何かまでは聞けていないが、ひょっとしたら今手に入れた玉がそうなんじゃないかと考えたのだ。
もし当たりなら、きっと彼女はさぞ高値で買い取ってくれるに違いない。
サラの手を取り、俺はスキルで街へと帰還する。
瞬間移動をあまり人には見られたくないので、転移先は人目の無い宿の自室だ。
「んじゃ。アイレンさんの所に行くか」
彼女は再び迷宮探索を行うとは言っていたが、あれからまだ一週間しか経っていない。
恐らくまだ出発してはしていないだろう。
「ん?誰だ」
外に出ようとした所で、ちょうど扉がノックされる。
そのあまりのタイミングの良さに俺は少し身構えるが、サラが何か気付いたのか「あ……」と小さく呟いて扉を開けてしまった。
そこにいたのは――
「お待たせしました」
エマとドマ。
エルフの双子だった。
どうやらやっと帝国に来る事が出来た様だ。
2人は俺の護衛としてカイルさんに付けられたのだが、身分証が無かったので、国境を超える事が出来なかったのだ。
そのため、色々な手続きに足止めを喰らっていたという訳だ。
「手間をかけさせてしまって悪かった」
実は転移を使えば、ズルして二人をこの国に連れて来る事も出来た。
だがそれだと、何かトラブルがあった時に困る事になってしまう――密入国がバレるとかなり面倒な事になるので。
だから彼らには、手間でも正式な手続きで入って来て貰ったのだ。
「いえ、お気になさらずに」
「まあ立ち話もなんだし、食堂へ行こうか」
アイレンへの訪問は後回しでいいだろう。
別に急ぐ理由も無いし。
二人の荷物を部屋に置き、俺達は宿備え付けの食堂へと向かう。
どうやら生命体の接近を感知すると、光る玉のエネルギーを使って発動する仕組みになっていた様だ。
「これで大丈夫だと思います」
サラが魔法で魔法陣を無効化してくれる。
俺は恐る恐る祭壇に近づくが、彼女の宣言通り、もうトラップが発動する事はなかった。
頼りになる相棒だ。
「結局、これは何なんだ?」
子供の握りこぶし程度の光るその玉。
触ると仄かに温かいそれを手に取り、俺は繁々と眺めた。
「多分、召喚用のマジックアイテムじゃないかと」
「召喚用?」
「私が無力化した魔法陣は、その玉の力を発動させる構成になっていました。それ以外の効果は無さそうだったので、出て来たアンデッドはその玉が召喚したんだと思います」
「成程」
一見ただの光る玉だが、これには魔物を召喚する力が込められているという訳だ。
しかし、さっき召喚されたのがアンデッドというのが気にかかる。
死霊系を召喚するアイテムってのは、映画とかだと大抵呪われた物だったりするからな。
「呪われたりとかは……してないよな?」
サラに確認する。
何でもかんでも知っている訳では無いだろうが、それでも魔法の知識に関しては彼女の方が上だからな。
「魔法で確認してみます」
サラが素早く魔法を唱え、そして俺の手にしている玉に指先で触れる。
その瞬間、彼女が眉根を顰めた。
「……っ!?」
「どうかしたのか?」
「すいません。魔法が掻き消されてしまいました」
サラの魔力は桁違いだ。
ハイエルフというのは魔法の天賦に恵まれた血筋であり、更に俺の作った宝玉によってその魔力は4倍にまで跳ね上がっている。
その彼女の魔法が弾かれたのだ。
この玉に込められた力は、相当な物と思って間違いない。
「ただ……嫌な感じは無かったので、呪われてはいないと思います」
「ふむ」
俺は少し考えこむ。
触っている感じ、何か嫌な気分に襲われると言った不快感はない。
サラの言う通り、呪いなんかは籠められいてい様に俺も感じる。
「ま、大丈夫か」
呪われていないという絶対の保証はないが、せっかくのお宝を放置するのは勿体ない。
俺は持ち帰る事を選び、腰のポーチに玉を詰め込んだ。
欲深く軽率な判断の様に思うかもしれないが、一応感覚以外の根拠もある。
この玉は、サラの魔法を弾くほどの力を秘めているアイテムだ。
もし呪いの効果があるんなら、相当強力なはず。
にも拘らず、俺は平気でこれを持てている。
それこそが、呪いなどかかっていない何よりの証拠といえるだろう……多分。
「取り敢えず、いっぺん戻るか」
まだ数時間しか探索していなかったが、この玉について少し思い当たる事があったので、俺は一旦街に帰る事にした。
「はい」
少し前に、アイレンという帝国の研究者の女性と知り合っている。
彼女はこの迷宮で、ある物を探していると言っていた。
それが何かまでは聞けていないが、ひょっとしたら今手に入れた玉がそうなんじゃないかと考えたのだ。
もし当たりなら、きっと彼女はさぞ高値で買い取ってくれるに違いない。
サラの手を取り、俺はスキルで街へと帰還する。
瞬間移動をあまり人には見られたくないので、転移先は人目の無い宿の自室だ。
「んじゃ。アイレンさんの所に行くか」
彼女は再び迷宮探索を行うとは言っていたが、あれからまだ一週間しか経っていない。
恐らくまだ出発してはしていないだろう。
「ん?誰だ」
外に出ようとした所で、ちょうど扉がノックされる。
そのあまりのタイミングの良さに俺は少し身構えるが、サラが何か気付いたのか「あ……」と小さく呟いて扉を開けてしまった。
そこにいたのは――
「お待たせしました」
エマとドマ。
エルフの双子だった。
どうやらやっと帝国に来る事が出来た様だ。
2人は俺の護衛としてカイルさんに付けられたのだが、身分証が無かったので、国境を超える事が出来なかったのだ。
そのため、色々な手続きに足止めを喰らっていたという訳だ。
「手間をかけさせてしまって悪かった」
実は転移を使えば、ズルして二人をこの国に連れて来る事も出来た。
だがそれだと、何かトラブルがあった時に困る事になってしまう――密入国がバレるとかなり面倒な事になるので。
だから彼らには、手間でも正式な手続きで入って来て貰ったのだ。
「いえ、お気になさらずに」
「まあ立ち話もなんだし、食堂へ行こうか」
アイレンへの訪問は後回しでいいだろう。
別に急ぐ理由も無いし。
二人の荷物を部屋に置き、俺達は宿備え付けの食堂へと向かう。
0
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

無能なオタクの異世界対策生活〜才能はなかったが傾向と対策を徹底し余裕で生き抜く〜
辻谷戒斗
ファンタジー
高校三年生で受験生の才無佐徹也は難関国立大学の合格を目指し猛勉強中だったが、クラスメートと共に突然異世界に召喚されてしまう。
その世界には人の才能を見抜く水晶玉があり、他のクラスメートたちにはそれぞれ多種多様な才能が表れたが、徹也は何も表れず才能がない『無能』であると判定された。
だが、徹也はこの事実に驚きはしたものの、激しく動揺したり絶望したりすることはなかった。
なぜなら徹也はオタクであり、異世界クラス召喚の傾向はすでに掴んでいたからだ。
そして徹也はその傾向を元にして、これから起こり得るであろうことへの対策を考える。
これは、『無能』の徹也が傾向と対策で異世界を生き抜いていく物語である――。
*小説家になろう・カクヨム・ノベルアップ+でも連載しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

巻き込まれて気づけば異世界 ~その配達員器用貧乏にて~
細波
ファンタジー
(3月27日変更)
仕事中に異世界転移へ巻き込まれたオッサン。神様からチートもらってやりたいように生きる…
と思ってたけど、人から頼まれる。神から頼まれる。自分から首をつっこむ!
「前の世界より黒くないし、社畜感無いから余裕っすね」
周りの人も神も黒い!
「人なんてそんなもんでしょ? 俺だって黒い方だと思うし」
そんな元オッサンは今日も行く!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる