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29――遺跡
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「マジックトラップはないみたいです」
魔法による広範囲サーチで、トラップはないとサラが俺に告げる。
「分かった。入ろう」
目の前には古びた遺跡がある。
遺跡は背後の岩壁にめり込む形で建てられており、岩壁内には迷宮が広がっていた。
サラのサーチは、魔法を利用したトラップにしか反応しない。
だがそれで十分だ。
数百年前の建物であるので、通常の罠は劣化してもう殆ど機能していないだろう。
俺達は移籍の内部へと侵入する。
「サラ、明かりを頼む」
遺跡に光源などはなく、光の差し込んでいる範囲を抜ければ真っ暗闇となっていた。
とてもではないが明かり無しで進む事は出来ない。
「はい!」
サラが魔法を一瞬で唱え終え、目の前に光の球が現れた。
その光は遺跡内部を煌々と照らし出す。
広範囲を照らし出すそれは相当な光量の筈なのだが、不思議と眩しくはなかった。
只の光を生み出す魔法ではなく、召喚された光の精霊が発する物だからかもしれない。
「後ろは頼んだぞ」
通路は広いが、横ではなく前後に並ぶ。
普通に考えて前の方が危険だからな、サラが後ろだ。
まあサラは体術も心得ているのだが、魔法に集中して貰った方が効率は良いだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「えっ?俺に付いて来る!?」
エルフの村。
カイルの部屋で村を出る準備をしていると、サラがやってきて唐突に付いて来ると俺に告げる。
「はい」
「いや、いきなりついて来るとか言われても……俺に付いてきたら危険だし」
つうか村の問題は一応――本当に一応だが――解決しているのだから、もう彼女が俺と共に行動する必要性はない。
それなのに何故?
「幻獣様に言われました。私の力が必要になるから共に行けと」
あの鳥か。
しかしサラの力が必要になるってのはどういう事だ?
この先、魔法が必要になるって事か?
「どういう風に必要になるかは……まあ、聞けてないんだよな?」
「はい……そこまではおっしゃられていませんでした」
だと思った。
幻獣共は説明を一切しやがらないからな。
状況が予見できるのなら、ちゃんと教えてくれればいいのに……
「サラ、やっぱり俺に付いて来るのは危険だ。村に残った方が良い」
俺は少し考えてから、口を開いた。
確かに強力な魔法を扱えるサラが同行すれば、何かと便利ではある。
だがまだ子供だ。
幻獣は必要と言ったらしいが、子供を危険に晒す様な真似はしたくない。
「いえ!私は付いていきます!絶対に!」
だが俺の言葉を拒否し、サラは俺に付いて来ると宣言する
しかも、普段は控えめな彼女が力強くハッキリと。
「私は眷属様に受けた恩をお返ししたいんです!それに、闇の使徒達は今もどこかで呪いを振りまいているに違いありません。この村に起こったみたいな事……それを止める力があるんなら、私も手伝いたいんです!」
サラは真剣な表情で俺を見つめる。
そう言えば、エルフってのは優しい種族だった事を思い出す。
彼女からすれば、非道を行なう連中を放ってはおけないのだろう。
「私からもお願いします」
それまで黙っていたカイルが口を開いた。
サラが危険な事に首を突っ込むのを止めない事に少々驚きもしたが、よく考えればエルフは幻獣を崇めている種族だ。
サラが俺に付いていくよう幻獣に命じられているのなら、彼がそれに賛同するのは当然の事か。
「まいったなぁ……冗談抜きで、命の保証は出来ないんだぞ?」
「わかっています。それでも私は……エルフとして自分の使命に準じたいと思っています」
正直、幻獣から貰った転移能力を使えばサラを此処に置いていく事は可能だ。
それで諦めてくれればいいのだが、俺を追いかけて来るのは目に見えた。
場合によっては其方の方が遥かに危険だろう。
「分かったよ。その代わり俺の指示には従う事。いいな?」
「はい!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
遺跡を一通り見て周るが、迷宮へと伸びる階段以外は特に目立った物は見当たらなかった。
まあ迷宮に降りてからが本番だ。
遺跡内部は、一応調べただけに過ぎない。
「んじゃあ、迷宮に入るか……」
最奥の部屋にあった階段を下る。
そこから先は、迷宮と呼ばれる部分だ。
迷宮は埃っぽい遺跡に比べ、その奥から湿った空気の匂いが漂って来る。
「さて、あっさり見つかってくれると良いんだが……」
俺達は足を踏み入れた場所。
それはかつて幻想種との遭遇が報告されている、帝国東部にあるガリア迷宮だった。
魔法による広範囲サーチで、トラップはないとサラが俺に告げる。
「分かった。入ろう」
目の前には古びた遺跡がある。
遺跡は背後の岩壁にめり込む形で建てられており、岩壁内には迷宮が広がっていた。
サラのサーチは、魔法を利用したトラップにしか反応しない。
だがそれで十分だ。
数百年前の建物であるので、通常の罠は劣化してもう殆ど機能していないだろう。
俺達は移籍の内部へと侵入する。
「サラ、明かりを頼む」
遺跡に光源などはなく、光の差し込んでいる範囲を抜ければ真っ暗闇となっていた。
とてもではないが明かり無しで進む事は出来ない。
「はい!」
サラが魔法を一瞬で唱え終え、目の前に光の球が現れた。
その光は遺跡内部を煌々と照らし出す。
広範囲を照らし出すそれは相当な光量の筈なのだが、不思議と眩しくはなかった。
只の光を生み出す魔法ではなく、召喚された光の精霊が発する物だからかもしれない。
「後ろは頼んだぞ」
通路は広いが、横ではなく前後に並ぶ。
普通に考えて前の方が危険だからな、サラが後ろだ。
まあサラは体術も心得ているのだが、魔法に集中して貰った方が効率は良いだろう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「えっ?俺に付いて来る!?」
エルフの村。
カイルの部屋で村を出る準備をしていると、サラがやってきて唐突に付いて来ると俺に告げる。
「はい」
「いや、いきなりついて来るとか言われても……俺に付いてきたら危険だし」
つうか村の問題は一応――本当に一応だが――解決しているのだから、もう彼女が俺と共に行動する必要性はない。
それなのに何故?
「幻獣様に言われました。私の力が必要になるから共に行けと」
あの鳥か。
しかしサラの力が必要になるってのはどういう事だ?
この先、魔法が必要になるって事か?
「どういう風に必要になるかは……まあ、聞けてないんだよな?」
「はい……そこまではおっしゃられていませんでした」
だと思った。
幻獣共は説明を一切しやがらないからな。
状況が予見できるのなら、ちゃんと教えてくれればいいのに……
「サラ、やっぱり俺に付いて来るのは危険だ。村に残った方が良い」
俺は少し考えてから、口を開いた。
確かに強力な魔法を扱えるサラが同行すれば、何かと便利ではある。
だがまだ子供だ。
幻獣は必要と言ったらしいが、子供を危険に晒す様な真似はしたくない。
「いえ!私は付いていきます!絶対に!」
だが俺の言葉を拒否し、サラは俺に付いて来ると宣言する
しかも、普段は控えめな彼女が力強くハッキリと。
「私は眷属様に受けた恩をお返ししたいんです!それに、闇の使徒達は今もどこかで呪いを振りまいているに違いありません。この村に起こったみたいな事……それを止める力があるんなら、私も手伝いたいんです!」
サラは真剣な表情で俺を見つめる。
そう言えば、エルフってのは優しい種族だった事を思い出す。
彼女からすれば、非道を行なう連中を放ってはおけないのだろう。
「私からもお願いします」
それまで黙っていたカイルが口を開いた。
サラが危険な事に首を突っ込むのを止めない事に少々驚きもしたが、よく考えればエルフは幻獣を崇めている種族だ。
サラが俺に付いていくよう幻獣に命じられているのなら、彼がそれに賛同するのは当然の事か。
「まいったなぁ……冗談抜きで、命の保証は出来ないんだぞ?」
「わかっています。それでも私は……エルフとして自分の使命に準じたいと思っています」
正直、幻獣から貰った転移能力を使えばサラを此処に置いていく事は可能だ。
それで諦めてくれればいいのだが、俺を追いかけて来るのは目に見えた。
場合によっては其方の方が遥かに危険だろう。
「分かったよ。その代わり俺の指示には従う事。いいな?」
「はい!」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
遺跡を一通り見て周るが、迷宮へと伸びる階段以外は特に目立った物は見当たらなかった。
まあ迷宮に降りてからが本番だ。
遺跡内部は、一応調べただけに過ぎない。
「んじゃあ、迷宮に入るか……」
最奥の部屋にあった階段を下る。
そこから先は、迷宮と呼ばれる部分だ。
迷宮は埃っぽい遺跡に比べ、その奥から湿った空気の匂いが漂って来る。
「さて、あっさり見つかってくれると良いんだが……」
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