マスタースロット1の無能第333王子、王家から放逐される~だが王子は転生チート持ち。スキル合成による超絶強化&幻想種の加護で最強無敵に~

榊与一

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20――完成

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「これで!60個!」

宝玉を作り終えた俺は汗びっしょりになり、ベッドに寝っ転がる。
初日の汚いベッドと違い、今泊っている宿はそこそこ高いので――それでも6千円位――寝心地は悪くない。
最初のは本当に酷かった。

「やっと終わった……」

森から戻り、既に3週間たっている。
俺が新たに手に入れた――ドラゴンから貰った――力は、呪封の宝玉精製の能力だ。
やり方は基本変異合成と同じである。

但し、二つばかり違う所があった。

一つは出来上がる宝玉は呪封だけであり、100%成功する事。
もう一つは通常の合成と違って、体力をごっそり持っていかれてしまう事だ。
普通の合成は使ってもほとんど消耗しないのに対し、こっちはかなり疲労する。

因みにどれぐらいかと言うと、1時間本気でランニングしたレベルの疲れだ。
しかもスタミナの宝玉でブーストしても意味が無いと来てる。
その為、1日4-5個が限界で、里のエルフ分を全部用意するのに2週間もかかってしまった。

「しかしこの能力。やっぱり呪封しか出来ないな」

この能力を頑張って拡張出来れば、他の特殊石を作れるんじゃないかと期待して色々試してみたりもしたが、駄目っぽい。
どれだけ頑張って意識しても、干渉出来そうには無かった。
もし他のスキルを選んで作り出す事が出来ていれば、それだけで左団扇が約束されていただけに残念だ。

「しっかし」

俺はベッドの脇にある革袋から、黄金色の宝玉を取り出した。
ドラゴンから渡された例の宝玉である。

その際「邪悪を滅せよ」と言付けられていた。
まあ闇の使徒を倒せって事なのだろうが。

「そんな事言われてもなぁ……」

謎の組織相手に一人で戦えとか……しかも報酬無しで。
いや、今回貰った力が先払いの報酬と言えなくもないが。

「まあでも……知らんぷりって訳にもいかないか」

放置するのが不味い相手だと言う事は、流石に俺でも分かる。
態々幻獣が倒せと言うぐらいだ。
放っておくと、きっと碌でもない事が起こるのだろう。

それにエルフ達の呪いを宝玉で押さえるだけでは、根幹的な解決とは到底言えなかった。
本格的に呪いを解くのなら、避けては通れない相手だ。

なにより――

「どう考えても、ひどい目に合わされるよな」

もし指示を無視した場合、下手をすればあのドラゴンに殺されかねない。
出入り口がスライムの森だけだったなら、そこに近寄らなければ良いだけの話だ。
だがきっと、他にも出入り口はある筈。

そうなると、遭遇が怖くて迂闊にどこにも行けなくなってしまう。
冒険者として上に上がって行くには、それは致命傷である。

「はぁ……俺の安穏ライフが吹っ飛んでいくな……」

まあ嘆いていても仕方がない。
俺はベッドから起き上がり、呪封の宝玉を全て皮袋に放り込んで部屋を出た。
階段を下りて受付に一声かけて宿を後にし、サラの居る宿へと向かう。

サラが泊っているのは、俺の宿から北側にある高級ホテルだ。
俺が一泊6千円なのに対し、彼女は一泊3万円の宿に泊まっていた。
ブルジョア極まりなしである。

サラがそんなにお金を持っているのは、エルフの里を出る時に渡された宝石類のお陰らしい。
一個数百万円レベルの高価な物を、彼女は里を出る際に数十個手渡されていたそうで、そのお陰で資金が潤沢になっているという訳だ。

一見贅沢に思えるこの行動だが、実は合理的な理由がちゃんとあった。

彼女は大金を持っている訳だが、亜人であるため銀行の使用が大きく制限されている。
その為、高価な宝石や現金を直接持ち歩かなければならなかった。

魔法の天才とは言え、子供が大金を持ち歩くのは正直リスクが高い。

だが高級なホテルには貸金庫が存在しており、宿泊客はそれを利用する事が出来た。
それら高額品を持ち歩いて安宿に泊まるよりは安全と言う観点から、サラは高いホテルで寝泊まりしているのだ。

サラの泊っているホテルに辿り着いた俺は、受付に言付けを頼む。
高級なホテルだけあって、宿泊客でない者が勝手に客室に進む事は出来ない様になっているからだ。

「カオスさん!」

ロビーのソファーに座って待っていると、サラがパタパタと駆け寄って来る。
その瞳は期待に膨らんでいた。

「はいこれ」

そう言って宝玉の入った革袋をサラに渡す。
彼女は中身を確認し、俺に大きく頭を下げた。

「ありがとうございます!」

「いいさ、気にするな。それより出発はどうする?」

「今すぐにでも!」

「そ、そうか」

個人的に今日はゆっくり休みたかったんだが、まあ仕方がない。
エルフ達は呪いで苦しんでいるのだから、サラとしては一刻も早く宝玉を届けたいのだろう。

「じゃあ俺は一端宿に帰って準備するから、ギルドで待ち合わせしよう」

「はい!」

勿論エルフの里には俺も付いていく。
此処から里までは結構な距離があるので、小さなサラを一人で返すのはあれだからな。

まあ行きは一人でここまで来たらしいが、帰りも安全とは限らない。
それに報酬を貰いたいという――子供のサラ相手には口にし辛い――下心もある。
サラに渡していた宝石類の事を考えると、その辺りは結構期待できるはず。

「んじゃ、後で」

俺は手を振り、ホテルを後にして用意の為に宿へと向かうのだった。
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