マスタースロット1の無能第333王子、王家から放逐される~だが王子は転生チート持ち。スキル合成による超絶強化&幻想種の加護で最強無敵に~

榊与一

文字の大きさ
上 下
20 / 48

19――襲撃

しおりを挟む
「ここは……」

目覚めるとそこは森の中だった。
更に付け加えるなら、サラの膝の上だ。

俺の頭の下に温かく柔らかい感触が広がり、彼女は俺の顔を覗き込んでいた。

「あ……お目覚めに……」

さっき迄の事を思い出す。

あの糞ドラゴンめ……
心の中で悪態を吐きながら右手を見た。

「跡は無い……か」

失神レベルの強烈な痛みだったが、齧りつかれた跡は残っていない。
ドラゴンスロットの時の様な痣も。
という事は、スロットは増えていないと言う事だ。

まあくれるとは言ってないんだから。当たり前の事ではあるが。

「俺、どれぐらい寝てた」

サラの膝から頭を起こし、訪ねた。
周囲の明るさからそれほど時間は立っていなさそうだったが、一応聞いておく。

「10分ぐらい……です……」

「そっか。膝枕サンキューな」

ダークマターを使った疲れが完全に取れていたので、1時間位は気絶していたと思っていたんだが、思った以上に短い時間だった様だ。
ひょっとしたら、あのドラゴンが回復してくれたのかもしれない。

「あの……」

「ん?」

立ち上がって軽くストレッチしていると、サラがおずおずと懐から何かを取り出す。
それは黄金に輝く宝玉だった。

「え?それって?」

確か闇の使徒が狙っている宝玉は、金色だったはず。
何故サラがそれを持っているのだろうか?
エルフの里にあった物は、奪われたという話だったはずだが。

「幻獣様が持っていろと」

「あのドラゴンが?」

「はい、邪悪なる者を滅せよと」

「え?」

それってあれか?
俺に闇の使徒と戦えって事か?

最初はサラの為に戦う必要性もあるとは思っていたが、呪いを封じる宝玉が手に入るのなら、もう無理に戦う必要は無かった。

貴族に手を出しているせいか奴らは軍にも追われているしな。
国に任せるのが一番だ。

「カオスさん!」

考え事をしていると、サラが急に大声を出した。
驚いて俺はその場で軽く跳ね上がってしまう。
唐突に大声出すのはマジ止めて、俺こう見えて結構ビビりなんだから。

「囲まれてます……6人に……」

その言葉を聞いて、俺は腰の剣に手をかける。
ただ人が近づいてきているだけなら、囲まれる事などありえない。
悪意、もしくは敵意があるから此方を囲むのだ。

じっと目を凝らすと、人影が木々の隙間を縫って少しづつ此方に向かって来るのが見えた。

恐るべき事に、その影は一切音を立てていない。
少なくとも、俺の強化されている聴覚では聞き取れないほど静音で動いている。
もしサラに教えて貰えなければ、間違いなく気づかずに奇襲を喰らっていた事だろう。

「何者だ……」

さっき渡されたばかりの金の宝玉を狙って、闇の使徒が現れた?
流石にそれでは早すぎる。
情報網云々で、どうにか出来るレベルではない。

じゃあ他に誰かと言われると、全く思いつかな訳だが……

相手の正体も目的も分からないので、先制攻撃は躊躇われる。
只の勘違いで此方を包囲している可能性だってあるからな。

どうした物かと迷っている内に、一人の男が高所から目の前に着地した。
恐らく、木の枝を使ってジャンプでもしたのだろう。

「闇の使徒……」

「ほう……我らを知っているか……」

目の前に現れた男は、全身黒尽くめだった。
想像から思わず呟いてしまったが、どうやら当たりだった様だ。

「くくく……幻獣の住処への入り口を張っていたが。まさか態々外に持ち出してくれる者がいるとはな。感謝するぞ」

成程。
張っていた訳か。
それならこのスピード対応にも、納得できるという物だ。

「そちらの小娘はあの里のエルフだな。貴様、呪いはどうした?」

「……」

サラは応えない。
どうやって対処したかなんて、態々教えてやる義務などないのだから当然の話だ。
まあ彼女がそれを意図したかは別問題だが。

「まあいい。素直に宝玉を渡すのなら、ひと思いに殺してやろう。逆らうのなら、呪いで藻掻き苦しんで貰う。エルフ達の様にな」

「――っ!?」

サラが男を強く睨む。
分かってはいたが、こいつらは間違いなく屑だ。

「ざっけんなよ。それよりお前らには聞きたい事が色々とある。素直に喋って貰うぜ」

「ふ、愚かな」

男が手を上げると木々の隙間から黒尽くめの男が5人、此方を囲むように姿を現した。

俺は剣を引き抜き、身構える。
見る限り、男達の手に武器はない。
恐らく、サラから聞いている呪いが武器なのだろう。

「死ぬがいい!!」

男達が一斉に俺達に向かって手を向ける。
その掌には黒い魔法陣が刻み込まれており、それが赤黒く光った瞬間、そこから黒い靄の様な物が噴き出した。
サラの話で聞く限り、この靄に触れると呪われる様だ。

「サラ!」

「ひゃっ!」

四方からくる靄を躱すには上しかない。
素早く片手で彼女を抱えると、ブーストを発動させジャンプする。
俺は優に10メートル以上は飛び上がり、木を蹴った反動で奴らの頭上を飛び越えた。

「――んなっ!?」

自分達の上空を飛びこされ、男が絶句する。
ブーストは3分間と効果時間は短いが、その効果中は人の限界を遥かに超えた力を発揮する。

これがあれば6対1でも問題ない。
それだけの力がブーストにはあった。
だからこそ、俺は囲まれているにも拘らず慌てる事無く落ち着いていられたのだ。

「サラ!じっとしててくれ!」

そう告げると着地と同時にサラを地面に下ろし、その周囲をダークマターで囲う。
これで簡易シェルターの完成だ。

ダークマターは鋼より硬く、魔法に対しても高い耐性がある事が色々試した結果分かっている。
呪いを防げるかまではあれだが、そもそもサラには宝玉の力があるからな。
だから俺がやられない限り、サラは安全だ。

追いついた使徒達が俺に向かって、一斉に黒い靄を放つ。
俺は再びそれを飛んで躱し、上空からダークマターを細い針の様にして飛ばす。

「ダークニードル!」

黒い無数の針が、頭上から男達を襲う。
針はかなり細く短めだ。
余程変な所に当たらない限り、相手が死ぬ事はまず無いだろう。

「ぐぁあ!」

「ぎゃあ!」

放った無数の針がその体に突き立ち、呻き声を上げて使徒達が蹲る。
結果は上々だった。
直地した俺は剣の腹で素早く蹲る敵の足を叩き折って周り、奴らを無力化する。

「さあ、色々と話して貰うぜ」

呪いの解き方。
それに黄金の宝玉の使い方を。

「ぐぅ……我らを……舐めて貰っては困るな」

「んなっ!?」

突然使徒達は自らに向かって手を向け――

そして黒い靄を放った。

「ぐぇあぁぁぁぁぁ!!」

「ひぎゃあぁぁぁぁ!」

「ヴエェエ!」

靄に飲まれた使徒達は奇声を上げて藻掻き苦しみ、地面を転がりまわる。
やがて全身から血が噴き出し、奴らは息絶えてしまう。

「くそっ!」

殺す気はなかったのだ。
あくまでも情報を引き出して国に引き渡すつもりだったのだが、奴らは情報を渡す事を良しとせず自ら命を絶ってしまった。

後味が猛烈に悪い。
全く……勘弁してくれ。

彼らの推参な死体を見せるのもあれなので、俺は死体が見えない様にしつつ、サラを連れてその場を離れた。

使徒たちの苦痛に歪んだ最後の表情を思い出す。
酷い死に様だった。

あんな最期を迎えるなんてぞっとしない。
出来れば人生の最後は、布団の上で安らかに迎えたいものだ。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

無能なオタクの異世界対策生活〜才能はなかったが傾向と対策を徹底し余裕で生き抜く〜

辻谷戒斗
ファンタジー
高校三年生で受験生の才無佐徹也は難関国立大学の合格を目指し猛勉強中だったが、クラスメートと共に突然異世界に召喚されてしまう。 その世界には人の才能を見抜く水晶玉があり、他のクラスメートたちにはそれぞれ多種多様な才能が表れたが、徹也は何も表れず才能がない『無能』であると判定された。 だが、徹也はこの事実に驚きはしたものの、激しく動揺したり絶望したりすることはなかった。 なぜなら徹也はオタクであり、異世界クラス召喚の傾向はすでに掴んでいたからだ。 そして徹也はその傾向を元にして、これから起こり得るであろうことへの対策を考える。 これは、『無能』の徹也が傾向と対策で異世界を生き抜いていく物語である――。 *小説家になろう・カクヨム・ノベルアップ+でも連載しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

巻き込まれて気づけば異世界 ~その配達員器用貧乏にて~

細波
ファンタジー
(3月27日変更) 仕事中に異世界転移へ巻き込まれたオッサン。神様からチートもらってやりたいように生きる… と思ってたけど、人から頼まれる。神から頼まれる。自分から首をつっこむ! 「前の世界より黒くないし、社畜感無いから余裕っすね」 周りの人も神も黒い! 「人なんてそんなもんでしょ? 俺だって黒い方だと思うし」 そんな元オッサンは今日も行く!

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

処理中です...