12 / 48
11――幻想種
しおりを挟む
「その話が本当なら、それは幻想種だろうな」
街に帰って来た俺は、その足で冒険者ギルドへと向かう。
そこで湖にいたドラゴンの報告をした所、ギルドマスターであるガイガー・カウンターの執務室へと通された。
カウンター横の扉を抜けた試験場。
その奥にあったギルド長が出て来た扉の先が、彼の執務室だ。
中には大きな机があり、周囲には本のぎっしり詰まった本棚が並んでいる。
厳つい見た目ではあるが、腐ってもギルドマスターだ。
どうやら本を読むぐらいの教養は備えているらしい。
「幻想種?ですか?」
「ああ、ドラゴンは2種類存在している。魔物と呼ばれる種と、幻想種と呼ばれる精霊に近しい種族だ」
精霊……ドラゴンの体が淡く光っていたのを思い出す。
それにあの羽根の様な耳。
確かに言われてみれば、精霊っぽく思えなくもない。
「魔物の方は強力な力で暴れるだけだが。幻想種の方は高い知能を持ち、不思議な力を持ち合わせていると言われている」
不思議な力。
それはきっとこの左手に宿ったドラゴンスロットの事だろう。
これについてはガイガーには話していない。
無いとは思うが、研究目的などで切り落とされないとも限らなからだ。
言わなくていい情報は黙っておくに限る。
「王都の近くの森に、そんな生き物がいたなんて……」
「スライムの森では無いだろうな。恐らく」
「へ?」
俺が出向いたのは間違いなくスライムの森だ。
道を間違って他の森へと向かった可能性は流石にない。
「スライムの森には、湖なんてないからな」
「え?でもドラゴンは確かに……」
「恐らく幻想種の特殊な力だろう。今までも数例の発見例があるが、全て本来とは異なる場所が報告されているからな」
「本来と異なる場所……ですか?」
言っている意味がよく分からなかった俺は、ギルドマスターの口にした言葉を疑問系で訪ねた。
「山の中の海だったり。砂漠の中の薔薇園だったりと、本来そこにはない場所に迷い込んで遭遇してるって事だ。後でその付近を調べても何の痕跡も見つかっていない事から、恐らくは幻想種の力で空間が捻じ曲げられているのではと考えられている」
「つまり俺が見た……いや、迷い込んだあの湖畔は別のどこかだったって事ですか?」
「ああ。幻想種とは言え、ドラゴンなんかがあんな場所に居たらとっくに大騒ぎになってるだろうからな」
言われて納得する。
王都から程近くにある森だ。
しかもスライム刈りで有名な場所で、相当な数の冒険者達が訪れている。
そんな所にあんな巨大生物がいたなら、とっくに報告されている事だろう。
あれが別の空間だったと言うなら、スライムやその他の生物がいなかったのも納得できる。
「それで?そのドラゴンとは何か喋ったりしたのか?」
「え?いや、別に?」
俺は咄嗟に嘘を吐く。
下手に話すと、ドラゴンスロットに追及が及びかねないからだ。
「ふーん、嘘くせぇな」
ガイガーは厳つい顔で口の端を歪めた。
何故か楽しそうだ。
「ま、別にいいさ。やばい隠し事をしてるのなら、そもそもここにドラゴンの報告自体しなかっただろうしな。野暮な追及は止めておいてやるよ」
「はぁ……どうも」
確信に近い疑惑を持っていそうな言い回しだが、どうやら見逃してくれる様だ。
長居しても仕方がないので、俺は曖昧に返事を返して執務室を後にした。
取り敢えずスロットも増えた事だし、宝玉店へ向かうとしよう。
街に帰って来た俺は、その足で冒険者ギルドへと向かう。
そこで湖にいたドラゴンの報告をした所、ギルドマスターであるガイガー・カウンターの執務室へと通された。
カウンター横の扉を抜けた試験場。
その奥にあったギルド長が出て来た扉の先が、彼の執務室だ。
中には大きな机があり、周囲には本のぎっしり詰まった本棚が並んでいる。
厳つい見た目ではあるが、腐ってもギルドマスターだ。
どうやら本を読むぐらいの教養は備えているらしい。
「幻想種?ですか?」
「ああ、ドラゴンは2種類存在している。魔物と呼ばれる種と、幻想種と呼ばれる精霊に近しい種族だ」
精霊……ドラゴンの体が淡く光っていたのを思い出す。
それにあの羽根の様な耳。
確かに言われてみれば、精霊っぽく思えなくもない。
「魔物の方は強力な力で暴れるだけだが。幻想種の方は高い知能を持ち、不思議な力を持ち合わせていると言われている」
不思議な力。
それはきっとこの左手に宿ったドラゴンスロットの事だろう。
これについてはガイガーには話していない。
無いとは思うが、研究目的などで切り落とされないとも限らなからだ。
言わなくていい情報は黙っておくに限る。
「王都の近くの森に、そんな生き物がいたなんて……」
「スライムの森では無いだろうな。恐らく」
「へ?」
俺が出向いたのは間違いなくスライムの森だ。
道を間違って他の森へと向かった可能性は流石にない。
「スライムの森には、湖なんてないからな」
「え?でもドラゴンは確かに……」
「恐らく幻想種の特殊な力だろう。今までも数例の発見例があるが、全て本来とは異なる場所が報告されているからな」
「本来と異なる場所……ですか?」
言っている意味がよく分からなかった俺は、ギルドマスターの口にした言葉を疑問系で訪ねた。
「山の中の海だったり。砂漠の中の薔薇園だったりと、本来そこにはない場所に迷い込んで遭遇してるって事だ。後でその付近を調べても何の痕跡も見つかっていない事から、恐らくは幻想種の力で空間が捻じ曲げられているのではと考えられている」
「つまり俺が見た……いや、迷い込んだあの湖畔は別のどこかだったって事ですか?」
「ああ。幻想種とは言え、ドラゴンなんかがあんな場所に居たらとっくに大騒ぎになってるだろうからな」
言われて納得する。
王都から程近くにある森だ。
しかもスライム刈りで有名な場所で、相当な数の冒険者達が訪れている。
そんな所にあんな巨大生物がいたなら、とっくに報告されている事だろう。
あれが別の空間だったと言うなら、スライムやその他の生物がいなかったのも納得できる。
「それで?そのドラゴンとは何か喋ったりしたのか?」
「え?いや、別に?」
俺は咄嗟に嘘を吐く。
下手に話すと、ドラゴンスロットに追及が及びかねないからだ。
「ふーん、嘘くせぇな」
ガイガーは厳つい顔で口の端を歪めた。
何故か楽しそうだ。
「ま、別にいいさ。やばい隠し事をしてるのなら、そもそもここにドラゴンの報告自体しなかっただろうしな。野暮な追及は止めておいてやるよ」
「はぁ……どうも」
確信に近い疑惑を持っていそうな言い回しだが、どうやら見逃してくれる様だ。
長居しても仕方がないので、俺は曖昧に返事を返して執務室を後にした。
取り敢えずスロットも増えた事だし、宝玉店へ向かうとしよう。
0
お気に入りに追加
419
あなたにおすすめの小説
はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~
さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。
キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。
弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。
偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。
二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。
現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。
はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

無能なオタクの異世界対策生活〜才能はなかったが傾向と対策を徹底し余裕で生き抜く〜
辻谷戒斗
ファンタジー
高校三年生で受験生の才無佐徹也は難関国立大学の合格を目指し猛勉強中だったが、クラスメートと共に突然異世界に召喚されてしまう。
その世界には人の才能を見抜く水晶玉があり、他のクラスメートたちにはそれぞれ多種多様な才能が表れたが、徹也は何も表れず才能がない『無能』であると判定された。
だが、徹也はこの事実に驚きはしたものの、激しく動揺したり絶望したりすることはなかった。
なぜなら徹也はオタクであり、異世界クラス召喚の傾向はすでに掴んでいたからだ。
そして徹也はその傾向を元にして、これから起こり得るであろうことへの対策を考える。
これは、『無能』の徹也が傾向と対策で異世界を生き抜いていく物語である――。
*小説家になろう・カクヨム・ノベルアップ+でも連載しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。
千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。
気付いたら、異世界に転生していた。
なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!?
物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です!
※この話は小説家になろう様へも掲載しています
役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !
本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。
主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。
その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。
そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。
主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。
ハーレム要素はしばらくありません。
誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!
ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく
高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。
高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。
しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。
召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。
※カクヨムでも連載しています
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います
町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる