マスタースロット1の無能第333王子、王家から放逐される~だが王子は転生チート持ち。スキル合成による超絶強化&幻想種の加護で最強無敵に~

榊与一

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7――腕試し

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扉の先は、ちょっとした広い空間だった。
中央付近に白線で正方形が描かれており、壁には木製の剣や槍などずらりと縦かけられている。
道場なんかには入った事はないが、きっとこんな感じなのだろう。

キョロキョロしていると向かい側の扉が開き、そこからマタギの様な毛皮を身に纏った大男が姿を現した。
男は険しい顔つきに加え、ソフトモヒカン頭に、揉み上げから顎髭が繋がっているいかついビジュアルの持ち主だ。

前世だったら秒で目を逸らしていた自信がある。

まあ、今も思いっきり目を逸らしてしまったが。

「がっはっはっは。そう警戒するな」

男は大股でのしのしと此方へとやって来て、豪快に笑って俺の肩を叩く。
俺はその衝撃につんのめり、危うく転がりそうになってしまう。

宝玉を取り込んでなかったら、多分耐えられなかったな。
とんでもない馬鹿力だ。

「俺の名はガイガー・カウンター。ここの支部長マスターをしてるもんだ」

自己紹介を聞いて、こんなガラの悪い奴がトップなのかよとげんなりする。
まあだが業務内容を考えたら、それは仕方のない事なのかもしれない。
ヒョロガリじゃ、荒くれ者共の相手は出来ないだろうし。

「じゃあさっそく、お前さんの実力を測らせて貰うぞ。壁にかかってる物から好きな獲物を選ぶといい」

どうやら実力試験は、トップ自らが受け持っている様だ。

「これで」

俺は壁にかかっている、木製の片手剣を手に取った。
王宮では主に剣術を習っていたからだ。

まあ王族の嗜みレベルでしかないので一流には程遠いが……だが俺には合成で作ったレベル10の宝玉の力がある。
今なら並みの冒険者にも負けないだけの実力を発揮できる筈だ。

多分。

「じゃあ白線に入りな」

言われた通り、白線で出来た簡易リングに上がる。

「降参、気絶、白線から出たらそこで試験終了だ。ああ、後、俺が止めた場合もな」

ガイガーも白線の内側に入って来る。
だがその手には何の武器も握られてはいない。
おそらく彼は武闘家なのだろう。

――武闘家とは、武器を持たず素手で魔物と戦う者達を指す。

通常、強力な魔物相手に素手で戦うのは正気の沙汰ではない。
だが彼らは、常軌を逸した修練と宝玉の力によってそれを可能にする。

「いつでもいいぞ。さあ遠慮なく掛かって来な、ヒヨッコ」

ガイガーは構えを取らず、仁王立ちで開始を宣言する。
ギルドのトップだけあって、見た目通りの実力を有しているのだろう。
新人など相手にならんと言わんばかりに、その口の端を歪めて余裕の笑みを見せた。

どうやら完全に見下されている様だ。

その顔を驚愕に変えてやれれば、さぞかし気分は良さそうだが……
まあ流石に難しいだろうなとは思う。
今日の所は、素直に胸を借りるつもりで行くとしよう。

「行きます!」

オーソドックスな正眼の構えから、俺は剣をガイガー目掛けて素早く振り下ろした。
だがその一撃は悠々と躱されてしまう。

まあ勿論、俺もこの攻撃が入るとは思っていない。

本命は――

「はぁっ!」

俺はVの字を描く様に、振り下ろしきった剣を相手の腹部目掛けて跳ね上げる。

が……その攻撃はガイガーの右手の親指と人差し指に摘ままれる形で、木刀は受け止められてしまった。

「く……まじかよ……」

剣を引き抜こうと力を籠めるが、びくともしない。
とんでもない馬鹿力である。

「思ったよりやるじゃねぇか」

ガイガーの表情から見下した様な笑みが消える。
どうやら一連の動きで、そこそこはやると思ってくれた様だ。

「よし、試験は終了だ」

「え?」

「何驚いてやがる?これは勝負じゃねぇぞ。お前の実力を確認する為の試験だ」

試験としてはかなり短いが、ガイガークラスの達人になればほんの僅かな時間でも相手の力量が図れるのだろう。

しかし勝てるとは最初から思っていなかったが、想像以上の実力差を見せつけられてしまったな。
渾身の一撃を指でつまんで止められてしまうとは……ガイガー恐るべしだ。

冒険者としてある程度伸し上がるつもりだったのだが、登録初日にその考えが容易くない事を思い知らされてしまった。
どうやら先は長くなりそうだ。
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