マスタースロット1の無能第333王子、王家から放逐される~だが王子は転生チート持ち。スキル合成による超絶強化&幻想種の加護で最強無敵に~

榊与一

文字の大きさ
上 下
3 / 48

2――卒業

しおりを挟む
女神の祝福マスタリースロットは人が生まれてくる際に、神より与えられる祝福だ。
そこに宝玉を宿らせる事で、人は強力な力を得る事が出来る。
そしてその力が強力であるため、スロットの数がそのまま本人の才覚とこの世界では判断されていた。

現在確認されている最低数は1であり、最大数は10個。
平均数は正確に計測をされてはいないが、大体3~4個と言われている。

――――――

「よおニート。お前、卒業らしいな」

王宮の離れの離れ。
そのまた離れの庭で、花壇を眺めながら黄昏ていると急に楽しげな声を掛けられる。
振り返るとそこには金髪金目の男――第40王子あにであるブジョク・シタイネンが、顔ににやにや笑いを張りつかせて立っていた。

表情を抜きにしても、ブジョクは狐目の見るからに意地悪そうな顔をしている。
その上で更に嫌味ったらしい口調で話しかけて来るから、イラつく事この上なしだ。
とは言え、揉めるのは不味い相手なので、俺は軽く深呼吸して気分を落ち着かせた。

「そうらしいです」

卒業とは、言ってしまえば放逐の隠語である。
名目上は王家を旅立ち独り立ちするという物ではあるが、実際は只の厄介払いでしかない。
その証拠に、放逐された物は王族だったという経歴自体抹消されてしまう。

「ほら、これは俺からの選別だ」

ブジョクが小さな革袋を、俺の座っているベンチに放り投げた。
軽い音を立てて落ちたそれを手に取り、口を開けて中を検める。

「それで美味いもんでも食べな」

中には小銅貨が10枚入っていた。
日本円に換算すれば100円ぐらいだ。

「ありがとう、兄さん」

何が美味い物だ。
こんなんじゃ、安物のパンしか買えねぇじゃねぇか。

完全に嫌がらせ以外の何者でもないが、此方は追放される身。
伯爵家の後ろ盾を持つ第40王子に噛みついても碌な事にはならないので、黙って怒りを飲み込んだ。

「他の奴らにも餞別をくれてやらなきゃならないから、俺はもう行くぜ。ま、精々頑張れよ!はははは」

兄はさも楽しげに笑いながら去って行く。
どうやら他の卒業組の兄弟達にも、嫌がらせをしに行く様だ。
仮にも半分は血が繋がっている弟の窮地だというのに、わざわざ嫌味を言って周るとか本当に良い性格をしてやがる。

しかし……

今日を最後に王宮を出る、か。
もう何日も前から覚悟していた事だが、生まれ育った場所を離れるのはやはり物寂しいものだ。

いっそ自分の能力を公開すべきか?
そんな思いが一瞬頭を過る。

俺は転生者だ。
前世は社畜とまではいかないまでも、余裕のない人生だった。
だから女神様に王族への転生を打診された時、俺は小躍りして喜んだ。
これでだらだら人生イージーモードだと。

だが世の中、甘くはなかった。

母は庶子。
王子としては333番目。
しかもマスタリースロットは前代未聞の1ときている。
流石にこれだけ悪条件が揃うと、王子と言えど王宮の中でかなり肩身の狭い思いをさせられてきた。

まあそれでも、腐っても王子だ。
そこそこレベルの生活は出来ていたので、大きな問題は無かった。
だが数日前、突如王宮を出る様通達されてしまう。

しかも母の葬儀の直後にだ。
血も涙もない通告とはまさに事だろう。

「やめとこ」

転生チートの事に関しては、秘匿しておく事にする。
強力な力であるため、それを見せれば王宮に残れる可能性は十分にあるだろう。
だがその行動は、同時に高いリスクも含む物でもあった。

特殊な力。
それは言ってしまえば異端の力だ。
バレれば中世ヨーロッパで魔女狩りがあった様に、俺がその対象とし火炙りにされかねない。

「ま、大丈夫だろう」

重苦しい気分を振り払う様に、これからの生活に対して俺は気楽な言葉を口にする。
何せチートがあるのだ。
大っぴらに使うのは危険だが、強力な力なので外での生活もきっとどうにでもなる筈だ。

勿論せこせこと前世の様に働く必要は出て来るが、それでも火炙りになる様なイチかバチかの賭け出るよりかは遥かにましだろう。

「さて、出発するか……」

転生してもまた、労働の日々に戻るのかと思うと正直憂鬱だった。
しかし嘆いていても、時間は待ってはくれない。
覚悟を決めて進むしかないのだ。

この日、俺は荷物を纏めて王宮を出て行った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

無能なオタクの異世界対策生活〜才能はなかったが傾向と対策を徹底し余裕で生き抜く〜

辻谷戒斗
ファンタジー
高校三年生で受験生の才無佐徹也は難関国立大学の合格を目指し猛勉強中だったが、クラスメートと共に突然異世界に召喚されてしまう。 その世界には人の才能を見抜く水晶玉があり、他のクラスメートたちにはそれぞれ多種多様な才能が表れたが、徹也は何も表れず才能がない『無能』であると判定された。 だが、徹也はこの事実に驚きはしたものの、激しく動揺したり絶望したりすることはなかった。 なぜなら徹也はオタクであり、異世界クラス召喚の傾向はすでに掴んでいたからだ。 そして徹也はその傾向を元にして、これから起こり得るであろうことへの対策を考える。 これは、『無能』の徹也が傾向と対策で異世界を生き抜いていく物語である――。 *小説家になろう・カクヨム・ノベルアップ+でも連載しています。

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~

青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。 彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。 ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。 彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。 これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。 ※カクヨムにも投稿しています

ペットたちと一緒に異世界へ転生!?魔法を覚えて、皆とのんびり過ごしたい。

千晶もーこ
ファンタジー
疲労で亡くなってしまった和菓。 気付いたら、異世界に転生していた。 なんと、そこには前世で飼っていた犬、猫、インコもいた!? 物語のような魔法も覚えたいけど、一番は皆で楽しくのんびり過ごすのが目標です! ※この話は小説家になろう様へも掲載しています

役立たずと言われダンジョンで殺されかけたが、実は最強で万能スキルでした !

本条蒼依
ファンタジー
地球とは違う異世界シンアースでの物語。  主人公マルクは神聖の儀で何にも反応しないスキルを貰い、絶望の淵へと叩き込まれる。 その役に立たないスキルで冒険者になるが、役立たずと言われダンジョンで殺されかけるが、そのスキルは唯一無二の万能スキルだった。  そのスキルで成り上がり、ダンジョンで裏切った人間は落ちぶれざまあ展開。 主人公マルクは、そのスキルで色んなことを解決し幸せになる。  ハーレム要素はしばらくありません。

誰一人帰らない『奈落』に落とされたおっさん、うっかり暗号を解読したら、未知の遺物の使い手になりました!

ミポリオン
ファンタジー
旧題:巻き込まれ召喚されたおっさん、無能で誰一人帰らない場所に追放されるも、超古代文明の暗号を解いて力を手にいれ、楽しく生きていく  高校生達が勇者として召喚される中、1人のただのサラリーマンのおっさんである福菅健吾が巻き込まれて異世界に召喚された。  高校生達は強力なステータスとスキルを獲得したが、おっさんは一般人未満のステータスしかない上に、異世界人の誰もが持っている言語理解しかなかったため、転移装置で誰一人帰ってこない『奈落』に追放されてしまう。  しかし、そこに刻まれた見たこともない文字を、健吾には全て理解する事ができ、強大な超古代文明のアイテムを手に入れる。  召喚者達は気づかなかった。健吾以外の高校生達の通常スキル欄に言語スキルがあり、健吾だけは固有スキルの欄に言語スキルがあった事を。そしてそのスキルが恐るべき力を秘めていることを。 ※カクヨムでも連載しています

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

大学生活を謳歌しようとしたら、女神の勝手で異世界に転送させられたので、復讐したいと思います

町島航太
ファンタジー
2022年2月20日。日本に住む善良な青年である泉幸助は大学合格と同時期に末期癌だという事が判明し、短い人生に幕を下ろした。死後、愛の女神アモーラに見初められた幸助は魔族と人間が争っている魔法の世界へと転生させられる事になる。命令が嫌いな幸助は使命そっちのけで魔法の世界を生きていたが、ひょんな事から自分の死因である末期癌はアモーラによるものであり、魔族討伐はアモーラの私情だという事が判明。自ら手を下すのは面倒だからという理由で夢のキャンパスライフを失った幸助はアモーラへの復讐を誓うのだった。

処理中です...